しばらくして3人が戻ってきた事に気づいたローが、ランに入口の木を退けるように言い、避難所の中に3人が入ってくると、やっと泣き止んだメアリがまた泣き始めてしまい、今度は3人が慰める事になった。

『ラン、大丈夫？』

「…ええ、久しぶりに大きな魔法を使ったからちょっと疲れただけ」

明らかに顔色の悪いランに恋歌が声をかけると、無理に作った笑顔で大丈夫だと手を振った。

『シリウス、緑の魔女の、魔力の回復方法は？』

「…恋歌が星空を見ると魔力を回復するのと一緒の原理でいいなら、花畑にでも寝転ぶのがいいかもな

植物から魔力が供給されるはずだ」

『……』

シリウスが言うのであればその方法は正しいのだろうが、海賊の襲撃にあったばかりのこの町にそんな花畑が残っている場所があるのかどうかわからない。

「魔力の回復方法はそれであっているわ

でもね、あなたもそうだろうと思うけど空気中にも魔力はある

それで何とかなるわ」

「魔女ってのはほんとに頑固な種族だ…」

にこにこと笑っているランの頑固さにシリウスがため息をつくが、恋歌も納得はいっていないらしく何かできないかと腕を組んで考えるように目を閉じている。

『シリウス、わたしの魔力を、ランに渡せる？』

「可能だ」

「え！？そんなことしたら恋歌ちゃんが…」

『やり方を、教えて』

ただでさえ海賊との戦いで魔力は消耗しているはずだと、ランは拒否をしようとするが、それより前に恋歌に手を握られた。

「魔女同士なら願うだけでいい」

『(願う…)』

「あんたは観念して受け入れろ」

ランの手を大事に両手で握り込んだ恋歌は、自分の魔力をランに流すイメージを頭の中で描く。

「(これが恋歌ちゃんの魔力…)」

心地よく温かい魔力が身体に流れてくるのでそれを受け入れる為にランも目を閉じる。

「わぁ…きれい…」

お互いの足元に魔方陣が浮かび上がり、大気の魔力が反応して避難所内すべてを覆うようにきらきらと反射し、その光景はまるで星が降っているようにも見える。

「ランさんも恋歌ちゃんも一体何者なんだ…」

足元に浮かび上がっている魔方陣も、この避難所を守ってくれたランが植物を操っていた事も、恋歌が聞いた事もないような美しい声で言葉を離していた事も、何もかも理解が追い付かない。

ウィリアムの手当てを受けている男が呟くように言った言葉はここにいる全員の疑問だった。

「…あの2人は、この世界で最も愛されるべき種族だ」

そのウィリアムの言葉の意味がわかったのはハートの海賊団だけ。