マリーを守り援護する為に近くにいた海賊たちがやっと現れ、マリーに傷をつけないように遠距離の武器は使わず刀やサーベル、槍を構えており、地面がどこかわからない不思議な現象に戸惑いながらも、目の前にいる星と同じ輝きを持つ髪と美しさを持つ恋歌にごくりと喉を鳴らした。

「依頼は１人の女の誘拐だったが、そいつは確か依頼主に渡すんだよな？」

「ああ…この女はおれたちが好きにしていいってわけだ」

ぺろりと舌なめずりをした海賊たちは、一斉に恋歌に飛びかかってきた。

『【ジェミニ・メテオ】』

星空から隕石のような光が降ってきて、それが海賊たちの身体に直撃し、その威力にどんどん海賊たちはその場に倒れていく。

『(もう魔力がなくなりかけてる…)』

日々の特訓で魔力は日に日に増えているとはいえ、今回の戦闘でかなりの魔力を消費してしまっており、既に心臓のあたりが熱を持ち始めている。

「不思議な力を使いやがる…」

「お前も悪魔の実の能力者か！！」

『【スコーピオン】』

もう大技の連発はできないと、刀に蠍座の毒を纏わせ、数の減った海賊たちに一太刀ずつ傷を負わせて海賊たちを気絶させていく。

「こ、この…！」

海賊たちがほとんど倒された後、何を思ったかマリーは持っていた爆弾を恋歌に投げつけた。

自分が巻き込まれる距離だというのに。

『！！

【ホロロギウ…】』

爆弾の時間を止め遠くに飛ばそうとした直後、見慣れた低い音が聞こえ自分の周りが薄い膜につつまれたことで魔法を使うのをやめた。

「【シャンブルズ】」

「え…」

とくとくと規則正しい静かな音が耳元で聞こえ、心地よい魔力と体温にローに抱きしめられていると理解して身体の力を抜いた。

頭上から派手な爆発音が聞こえ、ぱらぱらと何かが降ってきたが、ローのおかげで恋歌の頭の上には何も降ってくることはなかった。

「助かった」

『…うん、もう倒したの？』

「ああ、お前がこいつらを引き受けてくれたおかげでな」

傷だらけではあるが致命傷はないようで、ぽん、と頭を優しく撫でてくる。

「…もう少し我慢できるか？」

『…うん』

目にすく魔方陣が出ている事に気づいたが、今ここでは自分に触れさせてやることでしか魔力を回復させてやれない。

「さぁ…後はお前だけだ」

だがそれも最後に残っているマリーの意識がなくなれば話は別。

誰も助けてくれる者たちがいなくなり、がたがたと震えているマリーはにやりと笑ったローが刀を振り下ろしたところで記憶は途切れた。