「見かけによらずタフだな」

『(ほんとに頑丈な人ばっかり…！)』

刀をあっさりと避け、ぐるんと地面に叩きつけようとしてくるが、風の魔法を使って男と自分を抑え込む。

『【サジタ】！！』

「！！」

自分たちの周りに隙間が無いほどの魔方陣を出現させ、魔法の矢を全て男に向けて攻撃の準備をする。

「この程度避けきれるっての！！」

恋歌を抑えていては避けられない男が、恋歌から距離をとるために後ろに飛びのいた。

『(絶対に当てる…！)

ラン！！』

「任せて！！」

「「…は？」」

男が後ろに飛びのいて恋歌から離れた瞬間、地面がぼこぼこと音を立てて、太い植物の根が現れ、男に纏わりついて身体の自由を奪っていく。

「なんだ…ってんだ、よ！！」

「怪力ね…」

ぶちぶちと普通の力では千切れないような太さの根を簡単に引き千切るが、それよりも早く次の根が男の動きを封じ、ぼきん、と骨が折れる音が響いた。

「お、おい、ラン…無茶するな」

「わたしだって…この島に来るまで1人で生きてきたのよ！

最低限身を守る魔法は使えるわ」

「……そうだったな」

少し震えながら魔法を使っているランの背中を、ウィリアムは優しい瞳で見つめ、ちらりと恋歌の方にも視線を向けると、息を大きく吸い込んでいるところだった。

『【サジタリウス】！！』

縛り付けられた男に向かって恋歌が出現させた矢を男に撃ち込んでいく。

『【我は星々の支配者

我が声を聞いたならば願いを叶えよ】』

確実に倒すために次は当てるともう一度魔法を発動させる。

「させるか…！」

「邪魔させるわけないでしょ」

「ぎゃああああああああ！！」

海賊を倒されるわけにいかないとレヴルがもう一度銃口を恋歌に向けたが、ランの魔法で男と同じように植物の根に絡め取られ、銃も落として身動きすら取れなくされた。

『【黄道十二宮　全星解放】』

「それに星の魔女の戦い方なんて…もう見る事はできないわよ…」

『【星天魔法　ソディアック】』

今度は直撃した恋歌の攻撃を見てさすがに倒せただろうと、恋歌への手助けと同時に、喫茶店の中に飛ばされたベポを救い出しており、ウィリアムに診てもらうためにそっと地面に降ろした。





『ベポ…大丈夫…？』

「うん、もう平気」

男が完全に気を失っているのを確認した後、まだ戦闘音が聞こえている場所に恋歌が行こうとしたが、先に治療をしていけとウィリアムとランに止められ、ウィリアムが恋歌とベポに応急処置を施してくれた。

衝撃で気を失っていただけらしく、ウィリアムに簡単に手当てをされたベポは、平気だと笑顔を見せてくれたので、恋歌もほっと息をはいた。

『ラン、ありがとう

助かった』

「…ううん、遅かったわよね

ごめんなさい」

戦闘中に頭の中に響いてきた声はランのものだった。

魔法で援護するからタイミングを教えて欲しいと。

元々魔女同士であれば言葉を交わす必要がなく、恋歌もヴォルフとローに会うまで声を発する必要がなかった。

そのことを忘れていた恋歌は、ランに急に声をかけられて驚いたが、手助けをしてくれるのであれば百人力だとすぐに助けを求めた。

『そんなことない

ありがとう』

「おれも助けてくれてありがとう」

「…ええ、こちらこそ」