出会いから出航まで
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そのあとはいつも通り全員で朝食をとり、恋歌がローの自転車の荷台に乗り、全員で町へ出勤。
「じゃあな」
《うん、送ってくれてありがとう》
今朝のことは恋歌に顔を近づけようとしたところでヴォルフに止められたため、本人はキスされそうになったことは気づいていない。
ローの様子がおかしかったことには気付いているが、その後がいつも通りだったので、一先ず気にしないことにした。
いつも通り本屋まで恋歌を送り、ローは診療所へ。
「おはようございます」
「おはよう」
診療所の先生に挨拶をし、白衣に着替える。
「今日も予約入ってるよ」
「またか…」
苦笑いしながら先生に渡されたのは、今日のローの予約表。
1人で患者を任せてもらえるのは嬉しいし、患者たちが完治していくのを見るのはやりがいがあるが、最近1人の患者に頭を悩ませている。
その患者の名前はクロエ。
昨日恋歌の胸を鷲掴みにした女だ。
クロエは初め、道に倒れているのを町人が発見し、この診療所へ運ばれてきた。
苦しそうにしていたので何か重い病気かと思えば、コルセットの締めすぎで息がしにくかったとのこと。
コルセットを緩めれば呼吸が安定し、すぐに元気になった。
だが、なぜかその時に処置をしたローに付き纏うようになり、運ばれてきた日から何かと理由をつけてローの診察を受けに来る。
「患者さんに好かれることはいいことなんだけどねぇ…」
「こいつには悪いところはなにもねぇ
診察ったってよくわからねぇことを1人で喋って帰っていくだけだ」
「けど、そういう話を聞いてあげたりするのも仕事のうちだからね
もしかしたら心の病を抱えているかもしれない」
「(心の病ねぇ…)」
たしかに誰しも悩みがあり、それが原因で心の病にかかったりすることは十分承知している。
しかし、直感でクロエは現状そうではないと感じているため、クロエの話を聞くなら、他の患者を診たいというのが本音だ。
「(つーか…それなら恋歌の話を聞きてぇな)」
最近恋歌と昔のように星の話や、本の話をしなくなった。
あの時間もローにとっては大事で、かけがえのないもの。
「どうかしたかい?」
「いや…」
恋歌がどういう存在か、恋歌とどうなりたいか、その答えはまだ出そうになかった。
「……」
「……」
『(き、気まずい…)』
その日の昼食。
いつものようにアミに誘われ、ベンチでアミが持ってきてくれたパン屋のパンを食べていると、恋歌の横にどかっとクロエが座ってきた。
それまでアミが明るく話してくれていたのに、クロエが現れた瞬間不機嫌になり、クロエも喋らないので3人の間にはすでに数分間の沈黙が流れている。
もぐもぐとパンを食べることだけに集中し、いつもより早く食べ終わってしまったので、もう解散なのかなと思っていると、アミが食べ終わったパンの包みを大きな音を立てて潰した。
「で?そこの女は何か用?」
やっとアミが口を開いたが、いつもより声が低く明らかに不機嫌。
「やだ、あんたいたの」
「最初っからいたわよ!
相変わらず腹立つわね!!」
《知り合いなの?》
「こいつ毎年あのコンテストに出てるのよ
で、優勝したくて毎年…毎年毎年!!わたしに嫌がらせしてくるんだから!!」
「ふん、年増はさっさと引退しろっての」
「年増!?
あんたよりひとつ年上なだけじゃない!!」
大きな声で喧嘩を始めてしまった2人に、通行人たちから興味の視線が向けられる。
「行きましょ
こいつと話す時間がもったいないわ」
恋歌の手を引いて立ち去ろうとしたが、反対の手をクロエに握られ、両側から引っ張られるような体制になった。
「おばさんは戻っていいわよ
あたしはこいつに用があるの」
「はぁ!?」
『(わたしに用か…)』
クロエの用事に見当がついた恋歌は、小さくため息をついた。
「あんたがロー先生の側にいると目障りなの
だからさっさとあの家から出ていってくれない?」
『(やっぱりその話…)』
予想はしていたことだがやはり直接言われると、心が軋むように痛い。
ヴォルフとの約束、ローへの想い、あの家に住んでいる理由。
それを全て考えた時、恋歌にあの家を出ていくという選択肢はない。
クロエの言葉に首を振ると、掴まれている手にクロエの爪が食い込んだ。
「そうやって話せないことを理由にロー先生の同情をひいてるんでしょ!!
毎朝本屋まで送ってもらって!帰りも一緒!
あたしへの当て付け!?」
その言葉にも誤解だと首を振るが、クロエの勢いは止まらない。
「あたしとロー先生だって毎日会ってるんだからね!
あたしたちの関係を邪魔しないで!」
「ちょっ…!」
止まらなくなったクロエが、恋歌を叩こうと手を振り上げた。
それに気づいたアミが庇おうと前に出る。
「じゃあな」
《うん、送ってくれてありがとう》
今朝のことは恋歌に顔を近づけようとしたところでヴォルフに止められたため、本人はキスされそうになったことは気づいていない。
ローの様子がおかしかったことには気付いているが、その後がいつも通りだったので、一先ず気にしないことにした。
いつも通り本屋まで恋歌を送り、ローは診療所へ。
「おはようございます」
「おはよう」
診療所の先生に挨拶をし、白衣に着替える。
「今日も予約入ってるよ」
「またか…」
苦笑いしながら先生に渡されたのは、今日のローの予約表。
1人で患者を任せてもらえるのは嬉しいし、患者たちが完治していくのを見るのはやりがいがあるが、最近1人の患者に頭を悩ませている。
その患者の名前はクロエ。
昨日恋歌の胸を鷲掴みにした女だ。
クロエは初め、道に倒れているのを町人が発見し、この診療所へ運ばれてきた。
苦しそうにしていたので何か重い病気かと思えば、コルセットの締めすぎで息がしにくかったとのこと。
コルセットを緩めれば呼吸が安定し、すぐに元気になった。
だが、なぜかその時に処置をしたローに付き纏うようになり、運ばれてきた日から何かと理由をつけてローの診察を受けに来る。
「患者さんに好かれることはいいことなんだけどねぇ…」
「こいつには悪いところはなにもねぇ
診察ったってよくわからねぇことを1人で喋って帰っていくだけだ」
「けど、そういう話を聞いてあげたりするのも仕事のうちだからね
もしかしたら心の病を抱えているかもしれない」
「(心の病ねぇ…)」
たしかに誰しも悩みがあり、それが原因で心の病にかかったりすることは十分承知している。
しかし、直感でクロエは現状そうではないと感じているため、クロエの話を聞くなら、他の患者を診たいというのが本音だ。
「(つーか…それなら恋歌の話を聞きてぇな)」
最近恋歌と昔のように星の話や、本の話をしなくなった。
あの時間もローにとっては大事で、かけがえのないもの。
「どうかしたかい?」
「いや…」
恋歌がどういう存在か、恋歌とどうなりたいか、その答えはまだ出そうになかった。
「……」
「……」
『(き、気まずい…)』
その日の昼食。
いつものようにアミに誘われ、ベンチでアミが持ってきてくれたパン屋のパンを食べていると、恋歌の横にどかっとクロエが座ってきた。
それまでアミが明るく話してくれていたのに、クロエが現れた瞬間不機嫌になり、クロエも喋らないので3人の間にはすでに数分間の沈黙が流れている。
もぐもぐとパンを食べることだけに集中し、いつもより早く食べ終わってしまったので、もう解散なのかなと思っていると、アミが食べ終わったパンの包みを大きな音を立てて潰した。
「で?そこの女は何か用?」
やっとアミが口を開いたが、いつもより声が低く明らかに不機嫌。
「やだ、あんたいたの」
「最初っからいたわよ!
相変わらず腹立つわね!!」
《知り合いなの?》
「こいつ毎年あのコンテストに出てるのよ
で、優勝したくて毎年…毎年毎年!!わたしに嫌がらせしてくるんだから!!」
「ふん、年増はさっさと引退しろっての」
「年増!?
あんたよりひとつ年上なだけじゃない!!」
大きな声で喧嘩を始めてしまった2人に、通行人たちから興味の視線が向けられる。
「行きましょ
こいつと話す時間がもったいないわ」
恋歌の手を引いて立ち去ろうとしたが、反対の手をクロエに握られ、両側から引っ張られるような体制になった。
「おばさんは戻っていいわよ
あたしはこいつに用があるの」
「はぁ!?」
『(わたしに用か…)』
クロエの用事に見当がついた恋歌は、小さくため息をついた。
「あんたがロー先生の側にいると目障りなの
だからさっさとあの家から出ていってくれない?」
『(やっぱりその話…)』
予想はしていたことだがやはり直接言われると、心が軋むように痛い。
ヴォルフとの約束、ローへの想い、あの家に住んでいる理由。
それを全て考えた時、恋歌にあの家を出ていくという選択肢はない。
クロエの言葉に首を振ると、掴まれている手にクロエの爪が食い込んだ。
「そうやって話せないことを理由にロー先生の同情をひいてるんでしょ!!
毎朝本屋まで送ってもらって!帰りも一緒!
あたしへの当て付け!?」
その言葉にも誤解だと首を振るが、クロエの勢いは止まらない。
「あたしとロー先生だって毎日会ってるんだからね!
あたしたちの関係を邪魔しないで!」
「ちょっ…!」
止まらなくなったクロエが、恋歌を叩こうと手を振り上げた。
それに気づいたアミが庇おうと前に出る。