「あら、みんな一緒だったのね

おかえりなさい」

「お疲れー」

店に戻ればペンギンとランが笑顔で迎えてくれ、ウィリアムはローが座っている正面に腰を下ろした。

「ローゼもメアリちゃんもいらっしゃい

夕飯食べていく？」

「…ありがとう、いただくわ」

もう閉店にするのか閉店作業を進め、扉にはCLOSEの札をかけた。

「あら、全部売ってきてくれたのね

嬉しいわ」

「へへっ、まぁな

あんたの旦那のおかげだよ」

後半の方はウィリアムに聞こえないようにランに耳打ちをすれば、何かを理解したようで嬉しそうに笑った。

「そういや店にもちらほらと客が来てくれたんだよ」

「お、そりゃよかった

この調子なら客足も心配ないんじゃないか？」

「まぁでも売り上げ的にはもうちょい欲しいとこなんだよ…」

「あー…ほんとだな」

ランよりも真剣に売上の事を考えてくれているペンギンとシャチは明日はどうしようかと机に座って何かいい案がないかと唸っている。

「今日はどうだった」

≪いろんな人が買いに来てくれたよ

ウィリアムがいろんな人に声をかけてくれて、わざわざ足を運んでくれたんだ≫

「へぇ…」

「…なんだ」

ローに今日の事を話すと、意外そうな顔をしてウィリアムの方に視線を向けると、不機嫌そうな顔をしている。

「別に」

いくらウィリアムが医者とはいえ、恋歌の手話は何を話しているのかわからず、ローがにやついている理由もわからない。

「あ、そうだ

昨日の女の子…え、っと…マリーだったか

あの子も今日店に来たんだよ」

「え、何しに来たんだ？」

一体マリーは何をしに来たのだと聞けば、ローに会いに来たらしい。

「多分街で恋歌が売り子やってるの見て、今なら邪魔されないと思ったんだろ」

「あー、そういうことか

途中からマリーの気配がなくなったから気にはなってたんだよな」

≪え、あの人近くにいたの？≫

「いたよ、最初から

でも途中からいなくなったんだよ」

≪気づかなかった…≫

シャチがマリーが近くにいる事に気づいていたらしいが、恋歌は全く気付かなかった。

「ちなみにレヴルも近くにいたぜ

最後まで声かけてこなかったのはなんでかなって思ってたけど…客がいなくなるのを待ってたのかなって…」

言いにくそうにちらっとローの方に視線を向けると、何かを察したローがぴくりと反応した。

「なにかされたのか」

ローが説明を求めるように恋歌を見ると、言葉につまったような顔をして視線を逸らした。

「…おい、シャチ、ベポ」

「あー…恋歌を第２夫人にしてやるって言いに来たんだよ」

「…あ？」

ぶちっ、と何かが切れた音が聞こえたが、話さないともっと空気が悪くなるとわかっているシャチはレヴルが恋歌に言った事をすべてローに話した。