しばらく街の散策をした後、お昼時には屋台の食べ物をつまみながら歩き、恋歌が本屋に行きたいと言ったため、途中で一番品揃えのいい本屋に案内した。

「おれたちは医学書を見てくる」

「ええ」

ローとウィリアムは医学書のある本棚に向かい、ペンギンとシャチとベポは店内を見てくるとばらばらに行動し、恋歌とランは天体の本が並んでいる本棚の前に立っていた。

「へぇ…星ってこんなにたくさんあるのね

知らなかったわ」

恋歌の横で適当な本を手に取ってぱらぱらとページをめくりながら、ランは驚いたようにぽつりとつぶやいた。

「…ふふ、趣味と適性が合うっていいわよね」

恋歌の趣味は天体観測など星関連の事で、ランの趣味は自分が育てた食材で料理を作ったり紅茶を淹れたりする事。

お互いに趣味と魔法の適性が合っていると笑うランに、恋歌も頷き欲しい本はないかと視線を動かす。

「何か欲しいもんはあったか？」

『(びっくりした…)』

じーっと本棚を見つめていると後ろから急にローの声が聞こえ、びくっと身体を揺らした。

「お前は？

欲しいものがあれば言え」

「わたしはいいわ

ありがとう」

「これとか持ってないだろ」

≪でも内容がこの間買った本と似てるんだよね≫

恋歌が持っていない本を手に取ったローの手元を覗き込み、内容を見て首を横に振る。

「まぁ図鑑関係は内容が似てくるのは当然か…」

仲良さそうに一冊の本を覗き込んでいる２人の姿に、ランとウィリアムはそっとその場を離れ、店内をぶらぶらと歩く事にした。






「さて、次はどこにいきましょうか」

「あ、おれさっき見かけた生地屋に行きたいんだよ」

「おれもちょっと気になってた」

今まで歩いていた道で服の生地が売っている店があったらしく、今度は生地屋に向かう事になった。

「ランの店の制服可愛いからさ、今度恋歌に作ってやりたいんだけど…」

「あの制服の生地ならこっちにあるわ」

ランの案内を受けながらペンギンとシャチは店内を物珍しそうに見渡している。

「ねぇねぇ恋歌これ見て

こういうのも服につけられるのかな？」

ベポが爪で引き裂いてしまわないようにおそるおそる触っているのはレースのリボン。

そのリボン以外にもまわりに色とりどりでいろんな柄のレースが束になっておかれている。

「すごくきれいだね」

細かい細工をされている事がすごいとベポは興味深そうにまじまじと見つめている。

「あ、これとか恋歌に似合うんじゃないか？」

≪これはベポに似合いそう≫

目の前に並んでいるリボンを取って、お互いに似合いそうな色を見つけあって楽しそうに笑っている。

「これキャプテンの帽子の柄と一緒だね」

『(ほんとだ)』

いくつかリボンを見ているとふとあまり売れていない柄のリボンが目に入った。

それはローの帽子やズボンに入っている柄に近いもので、赤地に黒の柄で生地はサテンと書いてある。

「それ欲しいのか？」

ぬっ、と後ろから現れたシャチの手元にはいくつかの生地があり、後ろに立っているペンギンも両手に抱えきれないぐらいの生地を持っている。

「リボンかー

おれさ、やってみたい髪型があるんだよ

気に入ったなら買おうぜ」

≪いいの？≫

「ははっ、なんでダメだと思うんだよ

じゃあこれもお買い上げー」

ひょい、と手元のリボンを取られ、引き留める間もなくお会計されてしまった。