そしてウィリアムがランに告げた時間通りに一度店を閉め、全員で休憩をかねて恋歌とランが昼食を作ってくれた。

「今日は遅い昼食になっちゃったわね

ごめんなさい」

「…別にいい」

『お腹、空いてる？』

「…ああ」

机の上に広げていた医学書を片付け、目の前に並べられていく昼食をじっと見つめている。

「…あの２人、似た者同士だよな」

「…そうだな」

仏頂面をしているが恋歌とランには優しい視線を向けており、お客が溢れかえっていた時より雰囲気が和らいでいる。

「…疲れてないか」

「ええ、とても楽しいわ」

「…そうか」

「変な奴はいなかったか」

『うん、みんないてくれたから、大丈夫だよ』

「それならいい」

「「「……」」」

この４人の会話に対してはもう何も言うまいと、自分たちの昼食を準備し始める。

「「「いただきまーす」」」

開店からずっと動き回っていた３人は、ほわほわした雰囲気を出している４人を無視して手を合わせて食事を始めた。

「…昼からは人数制にしろ」

「ふふ、はい

じゃあ恋歌ちゃん、食べ終わったらまたお手伝いお願いね」

『うん』

ランの店が繁盛する事がウィリアムの望みではあったが、ここまで忙しくなるとランの体調が心配になる。

一度店を閉めさせたのも、休憩をとらせたのも、人数制にさせたのも、すべてはランのため。

それを理解しているランはウィリアムの言葉に逆らわず、素直に頷きその言葉に従う。

「あんたも、無理はするな

適度に休憩をとれ」

『…ありがとう』

まさか自分にまで心配の言葉をかけてくれるとは思わず、一瞬驚いた顔をした恋歌だったが、すぐに笑顔で礼を伝える。

「…昼からはここを使わせてもらう」

「ええ、わかったわ

何か必要なときは言ってちょうだい」

大量の医学書を持ってきている時点で、昼からはここで勉強をするのだろうなとわかっていた。

ソファ席が一つ埋まってしまうが、それはランにとって大した問題ではないようで、これについてもすぐに頷いた。

『ねぇ、ロー』

「ん？」

『ローも、ここにいてくれるの？』

「ああ」

ウィリアムがここにいるという事は、ローもここにいてくれるのかと恋歌が期待を込めて聞けば、すぐに頷き返してくれた。

「…まぁそれはいいんだけどさ、あんたら２人とも客を睨むなよ？」

この２人が勉強場所を変えた理由は容易に想像できるが、目つきの悪い２人がここにいるだけで逃げてしまうお客もいるかもしれない。

そうなるとせっかく来てくれた人も何も買わずに帰ってしまう可能性がある。

「その程度で帰るやつにこいつの作った物を買う資格はねぇ」

「…あんた、おれたちにどんな依頼したか忘れてないよな？」

この店を繁盛させたいのか、させたくないのか全く分からないウィリアムの言葉に、ペンギンとシャチが呆れたようにため息をつくが、いつもローに振り回されている２人は慣れたようにそれ以上何も言う事はなかった。