恋歌たちが外出してから数時間後、持っていった商品が完売になったと嬉しそうに戻ってきた。

「ありがとう

久しぶりにお客さんに紅茶を飲んで貰えて嬉しいわ」

手を合わせて嬉しそうに笑っているランに、恋歌も嬉しそうに笑っている。

その姿は微笑ましいが、シャチがちらっと視線をローに向けると、何かを察したローは小さく頷いてペンギンに視線を向けた。

「じゃあ今日の作戦は大成功って事だ

お疲れさん」

「へへへ」

ペンギンが労わるように恋歌とベポの頭を撫でてやれば、照れくさそうに笑っている。

「で、ものは相談なんだけど」

「なにかしら」

「今日の宣伝効果で明日は大忙しになる予定なんだ

だから明日は朝から準備をしたいんだよな」

「あら、じゃあここに泊まればいいじゃない」

「は？」

名案だといわんばかりに手を叩いて提案したランの言葉に、ウィリアムが驚いたような顔をして固まった。

「いいじゃない

部屋は余ってるし、ね？」

「……わかった」

渋々納得したウィリアムは、早々に閉店準備をして嬉々として夕飯を準備し始めたランにそれ以上何も言う事はなかった。







「「「ごちそうさま！！」」」

「はい、お粗末様」

緑の魔女が作る絶品と言っても過言ではない夕飯を食べ終え、ペンギン、シャチ、ベポの３人は満足そうにお腹を擦っている。

『わたしも、これの作り方、教えて欲しい』

「ええ、もちろん」

食事の合間に恋歌とランはいろいろな話をし、恋歌は緑の魔女の血も入っているという事を話すと、ランが魔法を教えてくれると約束していた。

恋歌の話し方も仲間たちと同じようになり、随分と打ち解けたように見える。

「そうだわ

恋歌ちゃん、わたしの畑が裏手にあるんだけど見に行く？」

『うん、見たい』

「ベポ、ついていけ」

「アイアイ」

ランが恋歌の手を引いてキッチンの裏口から出ていき、ベポとシリウスもそれに続いて外に出た。

「どうしてあの白クマを一緒に行かせたんだ？」

「もう遅い時間だ

念には念を、だ

それに気になる事がある」

「気になる事？」

食後の紅茶を飲んだローはシャチとペンギンに視線を向けると、それに気づいた２人は姿勢を正した。

「報告しろ」

「街に出て売り子してた時に気になる視線があった

おそらく街にある喫茶店の売り子だと思う」

「それはなんとなく予想できた事だけど、恋歌とランを１人で外を歩かせるのはしばらく控えた方がいいな」

「そうだな

お前らの見込み通りなら明日からここには客が来るはずだ

その客に紛れて不審な奴がいないか見張れ」

「「アイアイ、キャプテン」」

「あとでベポにも伝えておけ

あの２人のどちらかがこの店を開けるときはお前らのうち誰か１人はついていけ、いいな」

ウィリアムはもう一度最後にびしっと返事をした２人と、もうこの話は終わりだと言わんばかりに自分で紅茶のおかわりを淹れているローを交互に見つめる。

「お前ら…いつも、こうやって守ってるのか？」

「あの子は決して弱いわけじゃない

むしろ魔法を使いながら戦えばおれたちより強い

けど、恋歌は…優しいから

おれたちじゃないと気づかない事がある」

「そうそう、それぐらいからはおれたちが守ってやりたいんだ」

「あんたも、同じだろ？」

「……」

”魔女”という種族が優しいのか、恋歌とランが特別優しいのかはわからないが、仲間として恋歌を、夫としてランを、守りたいという気持ちは同じなはず。

「ああ、頼りにしてる」