「「……」」

「…いてっ！！」

結局ランは最終的にローの言葉に頷き、ペンギンの考えた作戦を実行する事に同意した。

そして、その作戦の第一段階である準備を終えた瞬間、満足そうにしているシャチの頭をローとウィリアムが同時に殴った。

「…なんだか照れるわね」

『う、うん』

「２人とも可愛い！！

ね、シリウスもそう思うよね？」

「ああ、そうだな」

照れたように頬を染めている恋歌とランの姿に、ベポとシリウスは純粋に可愛いと褒めているが、ローとウィリアムがシャチを殴ってしまうのも仕方ないなとペンギンは苦笑いしながらため息をついた。

「に、似合わない、わよね…？」

「い、いや…」

照れているランに問われているウィリアムは直視できないのか、視線をうろうろさせている。

『…どう、かな』

「……はぁ」

恋歌の方もローに不安そうに聞けば、ぐっと言葉に詰まった後大きなため息をついた。

「…おい、シャチ」

「え？」

2人に殴られた頭を擦っているシャチは、名前を呼ばれ頭を上げると今度はぎろりと睨まれた。

「やり過ぎだ」

「ええー！！だってやるなら徹底的にと思って…」

「それでも限度ってもんがあるだろうが！！」

「理不尽…！」

怒られているシャチを横目にローは気に入らなかったのかと恋歌がしゅん、と落ち込んでいるが、ローがシャチに怒鳴っているのも理由がある。

変装用の眼鏡を外し、シャチが化粧を施し、髪をセットし直した。

元からメガネを取るだけで美少女である恋歌が、化粧でさらに綺麗になり、ローが息を飲むほどの美少女になってしまった。

そして、ランもシャチに化粧を施してもらい、髪型をセットしてもらったことで、美女になってしまいウィリアムが狼狽えている。

ランも純粋な緑の魔女で綺麗な緑の髪に茶色の瞳をしており、元々柔らかい雰囲気の美女ではあるが、こちらも普段見慣れない雰囲気にぎくしゃくした空気が流れている。

「こ、これで…何させる気なんだ…」

２人の美女を作ってどうするのかと、ウィリアムが聞けばよくぞ聞いてくれたと言わんばかりにシャチとペンギンが同時に咳ばらいをした。

「可愛い子には可愛い子で対応！！」

「こっちにはマスコットもつくんだ！

な？ベポ、シリウス」

「うん！

おれ頑張るよ！」

ペンギンが考え出した作戦は簡単に言えば相手以上の接客をすること。

紅茶の味、食事の味に関してはさすが緑の魔女であるだけあって、負けているとは到底思わない。

後できることがあるとすれば、向こうがどれだけ可愛い子を揃えていようと、眼鏡を外すだけで誰もが振り向くような美少女である恋歌と、柔らかい雰囲気を持つ美女のランに接客をしてもらう事。

そこに白クマであるベポと子犬のシリウスを加え、マスコットキャラで別の角度の可愛さも揃えることで客を取り戻そうという作戦である。

「てか思ったんだけど、魔女って美人しかいねぇの？」

「たしかに」

まだ恋歌とランしか魔女には出会っていないが、２人とも美女という事に純粋に疑問をもった。

「…恋歌ちゃんのご両親は？」

『お父さんは、殺されて…お母さんと、お姉ちゃんは、連れてかれ、ました…』

「そう…

嫌な事を聞いたわね、ごめんなさい」

なぜシャチの質問に対して恋歌に家族の事を聞くのかと思ったが、恋歌は気にしていないようで大丈夫だと首を横に振っている。

「わたしたち魔女は自然に愛してもらう必要があるの

緑の魔女であるわたしなら植物に、星の魔女である恋歌ちゃんなら星に

だからわたしたちは…その、容姿としては、普通の人より優れている事が多いの」

初めて聞いた魔女の情報になるほど、と納得し、それが狙われる原因の一つでもあり、”自由”に生きられない理由の一つ。