しかし、すべてを理解しているのは恋歌とランだけの様で、男性陣は全員困惑した表情を浮かべている。

「あんたが魔女ってのは聞いてたが…まさか星の魔女とは…」

「知ってた…？」

ウィリアムがじろじろと恋歌を見ながら言った言葉に反応したロー。

こちらは恋歌が魔女であるという情報など一切与えていないはず。

「？

ああ、そうか

お嬢さん、あんた言ってなかったんだな」

『…はい』

「優しい子ね」

「え？え？

全然話が見えないんだけど…」

困惑したようにシャチがソファ席から顔を覗かせ、説明を求めるように視線を事情を知っていそうな３人に向ける。

「恋歌、ちゃんと説明しろ」

『…ランさん、いいんですか？』

「ええ、星の魔女であるあなたが信頼している人たちなら問題ないわ」

食後の紅茶を飲んでいるランは隠すことなど何もないと、恋歌に話してもいいと頷いた。

『ランさんは…

わたしと同じ、魔女…なんだ』

「「「魔女！？」」」

恋歌の言葉に驚き、慌てたようにランを見るが、本人は落ち着いたように紅茶を飲んでいるだけ。

「おいこら、おれの嫁をじろじろ見るんじゃねぇ」

だが、ウィリアムに怒られ、渋々ランへ向けていた視線を逸らした。

「いつから気づいてた」

『最初から

でも、念のために、シリウスにも、確認してもらったの…』

「ああ、だから駄犬を連れてきたのか」

『うん』

昨日シリウスを連れてきたのは、ランが本当に魔女なのかを確認するため。

船に戻った時にシリウスに確認すれば、恋歌とシリウスの意見は一致し、ランは確実に魔女であると確証した。

『でもね、魔女は、人数が少ない

だから、隠して生きてるなら、わたしが言う訳に、いかないって思って

黙ってて、ごめんね』

「…そうか」

魔女であるという事を隠して生きなければいけないという事は、恋歌の事で痛いほどわかっている。

恋歌がいくら仲間とはいえ、ランの事をハートの海賊団に言えなかったことに関しては責められるはずもない。

『ランさんは、植物を、操る事に長けた、緑の魔女』

「あー！だからこの店の紅茶、恋歌が淹れてくれる紅茶に似てんのか！！

どーりでめちゃくちゃ美味いと思った！！」

緑の魔女、という言葉に反応したペンギンが納得したように大きな声を出すと、ランは嬉しそうに笑った。

「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいわ」

「で、でも、こんなに美味しい紅茶なのに、もったいないよ…」

食事も飲み物も何もかもが今まで食べたものとは何かが違う。

どこか心がほっとするような感覚がする。

「ランが魔女ってのはもうわかったんだからいいだろ

おれはこいつの料理も、飲み物もこの島の奴らに自慢したい

だから何とかしろ」

「「「……」」」

この横暴さは見た事があるなと、ちらりと似た自分たちの船長を見れば、腕を組んで何かを考えている。