昨日と同じく昼食は４人でとり、今日も誰一人として客は来ないまま喫茶店での１日は終わった。

『どうだった？』

ローと２人で船に戻り、夕食を食べた後片づけをしながら横にいるペンギンに話かけると、手を止めないまま口を開いた。

「街にあった喫茶店は恋歌がいるところを除けば２つ

おれとシャチが手分けして１日見張ってたけど、おれの見張ってた方に客は多かった

聞き込みしたら観光客や島の人たちも基本的にその喫茶店に行くらしい」

『理由は、何か言ってた？』

ペンギンとシャチは恋歌に依頼されて１日他の喫茶店を見張り、客足を調査してくれていた。

ランは客足が遠のいた理由がわかっていると言っていたが、教えてくれそうになかったため仲間たちに頼んだ。

その結果を聞いていたのだが、ペンギンが言いにくそうに苦笑いをした。

「…まぁ、なんだ、接客…の違いだな」

『接客？』

ランの喫茶店に全く人が来ないような接客など、どんな接客なのだろうかと気になり、首を傾げて聞くとちょうど片付けが終わり、手の水気をタオルで拭い、座って話をしようと恋歌にも座るように促す。

２人しかいない食堂で向かい合って座り、ペンギンがどこから話そうかと腕を組む。

「シャチが見張ってた方は普通の喫茶店

だけどおれが見張ってた方は、若い女の子と男が接客してた」

『それは、何が違うの？』

若い従業員が接客しただけでそんなにも変わるとも思えない恋歌に見つめられたペンギンは、じっと恋歌の目を見返した。

「恋歌には到底及ばないけど、そこの店の女の子が可愛いわけよ

男も綺麗な顔した奴らばっかりだったし」

『…そういうこと』

つまり、顔の綺麗な若い男女に接客をしてもらえるというのが一番の理由。

ランの喫茶店はラン１人しかいない上に、夫であるウィリアムの目つきは悪い。

『けど、それだけ？』

「……いや、その喫茶店で働いてる女の子の中に、この辺一帯を取り仕切っている家の子がいるんだ

それも理由の一つさ」

『…ふーん』

権力と接客の違いでランの店に誰も来なくなったとなれば、ランが諦めたような顔をしていたのも納得できる。

権力に勝てるとも思っていないし、接客の内容が違うという事で客足が遠のいたとわかれば、ウィリアムが怒りそうではある。

『ペンギンは…』

「ん？」

恋歌への報告を終えたペンギンは、ローにも内容を伝えようと書類を作成する為に紙とペンを取り出した。

だが、内容を書きはじめる前に恋歌の声がペンギンの動きを止めた。

そして、恋歌の言葉を聞いてペンギンはにやりと笑った。





「「「お邪魔しまーす」」」

「あらあら、今日はたくさん来てくれたのね」

「……」

次の日、朝から喫茶店にやってきたのはローと恋歌だけではなく、ハートの海賊団全員。

ローは不機嫌そうな顔をしているが、ランは何も気にしていないようで歓迎ムード。

「ローくんはあの人が待ってるから上にいってらっしゃい

また後で飲み物持っていくから」

「……ああ」

不服そうな顔をしながら２階への階段を上っていったローを見送り、恋歌はいつも通り更衣室へ。

「おー！可愛い！！」

「いい制服じゃん！！」

≪ありがとう

この制服わたしも好きなんだ≫

更衣室から出れば、ペンギンとシャチが可愛いと褒めてくれ、今度似たような服を作ってくれると約束してくれた。

「で、おれたちはあんたに話があって来たんだけど」

「…そう

なにかしら」

わいわいとしていた雰囲気を一気に消し、ペンギンがランに視線を向ける。

ランは何を言われるかわかっているようだが、笑顔を崩す事はしない。