しばらくして一区切りついたところで恋歌が息をはけば、つん、と横から頬を突かれた。

「もう全員寝た

お前も寝ていいぞ」

頬を突いたのは横で寝ているローで、言われた言葉を理解して少し身体を起こして３人を見れば、規則正しい寝息を立てて眠っていた。

『気づかなかった…』

「恋歌の声聞いてたら眠くなったんだろ

贅沢な奴らだ」

呆れたようにため息をついたローだが、恋歌はふっと笑ってぼすん、と枕に頭を落した。

『ローは、寝なかったの？』

「恋歌の声が聞ける機会をおれが逃すわけねぇだろ」

ぽん、と頭に手を置かれてそのままさらりと髪を撫でられる。

「もう寝ろ」

『うん…そっち、行っていい？』

「ああ」

いつもより距離がある事が寂しくなり、近づいてもいいかと聞けば布団を捲って迎え入れてくれた。

差し出してくれた腕の上に頭を置き、ぎゅっとローに抱き着けば背中をぽんぽんと撫でられ、その温もりと匂いに目を閉じればすぐに眠りにつくことができた。






「恋歌、そろそろ起きるぞ」

『…ん』

頬を大きな手が優しく撫でる感触がし、徐々に意識がはっきりとして目を開ければ、目の前にはローの服。

だが、少し離れがたい気がしてもう一度目を閉じて抱き着けば、ローの声とは違う笑い声が聞こえた。

「ははっ、キャプテン甘えられてんな」

「いいなー、恋歌に甘えられて」

「…うるせぇ」

ペンギンとシャチのからかうような声が聞こえた後、ローの不機嫌そうな声も聞こえる。

「恋歌はキャプテンの事大好きだからね」

「はっ、このクソガキのどこがいいんだか」

ベポの楽しそうな声と、シリウスの嫌そうな声も聞こえる。

仲間たちの声に目を開けて視線を上げると、目の前にはロー、他の３人がまだ寝転んでいる２人を見下ろしていた。

「よく眠れたか？」

むくりと身体を起こせばペンギンがぽん、と頭を撫でてやると、恋歌が嬉しそうに笑って頷いた。

「おれたちも恋歌のおかげでぐっすり眠れたよ

ありがとな」

「でもいつの間にか寝ちゃってて、最後まで聞けなかったから、また聞かせてくれよな！」

『もちろん

わたしも…ありがとう

みんなが傍にいてくれて、嬉しかった』

「…もう、寂しくない？」

恋歌が離れてローも身体を起こし、仲間に囲まれて嬉しそうに笑いすっきりとした顔をしている恋歌を見て、口元に笑みを浮かべる。

『うん

わたしは…みんなと一緒なら、寂しくない』

最高の家族のような仲間たちと、大好きな恋人が傍にいてくれるのならもう寂しくない。

『みんな、ありがとう

ハートの海賊団の、魔法使いとして、もっと強くなる』

「１人で背負うな

おれたちも強くなる

お前に”寂しい”なんて思わせたおれたちもまだまだだ」

「そうだよ！

おれたちだって強くなる！」

「キャプテンに甘えてもだめならおれたちだっているからな」

「そうそう、お兄ちゃんにも頼れよな」

「おれが役不足なわけねぇだろ」

「すごい自信！！」

「おれたちだって恋歌に頼られたいんですぅー！」

恋歌をそっちのけにして３人が言い合いをしていると、すすっ、とベポが近寄ってきた。

「おれも頼ってね

おれは兄ちゃんじゃないけど、恋歌の事大好きだからできることはするからね」

『ありがとう

わたしも、ベポの事大好き』

「「抜け駆けすんな！！」」

「す、すいません…」

「「打たれ弱っ！！」」

”大好き”という言葉を一番最初に言ってもらえたベポにシャチとペンギンが抗議すれば、すぐにベポは落ち込んで謝る。

そのいつもの姿に恋歌の笑顔が元に戻り、ローももう一度口元を緩ませた。