「(白黒の帽子をかぶった長刀を持った長身の男か、ジョリーロジャーの入ったつなぎを着た白クマか男２人…)」

早目に伝えて欲しいという涙目で訴えてきた恋歌の頼みに、次の日の早朝から動き始める為に休みをとり、恋歌の監視は別の女騎士に任せて出てきた。

恋歌に仲間の特徴とジョリーロジャーの形を教えてもらい、時間帯的に人通りの少ない街をゆっくりと歩いて船を停泊しているであろう港に向かって足を進める。

「…で、…が…」

「(？

こんな早朝に人の声…？)」

わずかに聞こえた人の声にそちらに足を向けると、それがだんだんと男の声である事がわかったが、小声で話をしているようで何を話しているのかまでは聞こえない。

「…誰だ」

近くの壁に隠れながら話を聞こうとしていたが、すぐにばれたようで殺気が向けられる。

「わたしはこの国の騎士だ

盗み聞きを…する、つもりは…」

両手を挙げて姿を見せたリンは、目の前にいる男たちを見て言葉を区切った。

恋歌に聞いたより１人多いが、他の４人が恋歌の情報と一致する。

「白黒の帽子をかぶった長刀を持った長身の男に、揃いのつなぎを着た白クマと男２人…

ジョリーロジャー…」

「この国の、騎士…？

そいつがおれたちに何の用だ」

ぼそっと呟かれた言葉につなぎを着た男２人、ペンギンとシャチがぎろっと睨みをきかせると、リンは慌てたように首を横に振った。

「ち、違う！わたしは伝言を預かってきただけで…！」

ごそごそとポケットから小さな紙を取り出してシャチに手渡すと、その中身を確認すると眉間に皺を寄せた。

「…これ、恋歌の字だな」

「ああ…」

全員に見えるように紙を見せると、全員の眉間に皺が寄った。

内容は別れの言葉とリンを攻撃しないでくれという言葉のみ。

「これ以外は…？」

「魔女の別れのサインらしく、それを最後にお前たちに伝えて欲しいと言われた」

「…ふーん、どんなの？」

魔女、という言葉にローがぴくりと反応したが、それより先にペンギンが言葉を発した。

「えっと…」

恋歌から教えてもらったという魔女の別れのサインを伝えた。

「…そうか、ならおれたちの言葉も恋歌に届けてくれ」

「この手紙を届けただけでも見方によっては立派な反逆だ

これ以上は…「”了解した”、それだけでいい」

…いいだろう」

ローがかぶせるようにそう言えば、その程度ならと渋々頷いた。

「伝言、ありがとな

これでおれたちも動けるよ」

「そ、そうか

ではわたしはこれで」

にこっと笑ったペンギンに手を振られ、そそくさと立ち去ったリンは、4人が海賊らしい笑みを浮かべている事に気づくことなく、恋歌が魔方陣を書いているであろう城に急ぎ足で戻っていった。







「さて、おれたちは行くか」

「「「アイアイ、キャプテン！」」」

「え！？

あんなに必死に探してたのに、別れの言葉一つで諦めるのか！？

海賊ってのは…そんな薄情なのか！？」

す、っと立ち上がったローに元気な声で返事をした３人に、男が慌てたように声を荒げるが、ぽかんとした顔をした後、シャチとペンギンがにかっと笑った。

「そんなわけねぇだろ

恋歌は絶対に助け出す」

「恋歌は…おれたちの大事な仲間だよ」

「？」

「安心しろ

お前との約束も、守ってやる」

言っている意味が全く分からない男だったが、置いて行かれないように海賊たちの背中を追いかけた。