美しい女
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渡されたビンを持って、筆にそのインクをつけると、白かった筆の先が赤く染まる。
『(魔方陣の事はまだ習ってないから、本で学んだことだけしか知識がないけど…)』
ここにシリウスがいてくれれば心強かったが、今シリウスを召喚する事はできない。
ふぅ、と息をはいた恋歌は、書き換える場所の文字をごしごしと布で拭っていると、横にフィーリが膝をついて恋歌の手から布を取った。
「指示してくれればわたしが消すよ
これぐらいしかお手伝いできそうにないし…」
まだ少しびくついているフィーリは、ちゃんと言われたことをやらなければひどい扱いをされるのではと思っているのだろう。
恋歌はそんなことを気にしなくてもいいと思っており、リンも告げ口をするようなタイプには見えない。
だがフィーリはここに来て長いのか、注射痕も多く、元は恋歌と同じ真っ白いワンピースだったのだろうが、薄汚れてところどころ破れている。
こんないつ殺されるかもわからない状況で、恋歌自身も震える身体を無理やり動かしている。
一般人のフィーリが怖くないはずがないだろうと、笑顔で頷いて消してほしい場所を指で指示し、魔方陣を完成させていく。
『(わたしだけの知識じゃこれを一日で完成させることはできない…
もう少し時間がいる…)』
「…それはどの程度で完成するんだ」
しばらく黙って作業を続けていると、リンが顎に手を当てながら興味深そうに覗きこんできた。
≪すぐには無理かな
最低でも…3日ほしい≫
「……そうか」
書かれた日数に眉間に皺を寄せて何かを言いたそうに口を開いたリンだったが、それを飲み込んでなぜか恋歌の頭に手を置いた。
≪もうひとつ聞きたいんだけど、わたしの声はいつ出るようになるの?≫
「そうだな…
ここに連れてくる時に打ち込んだ薬は明日の朝には消えている
だがおそらく女王は声を出せるようにする事は許可しないぞ」
≪魔法の発動に必要だと言っても?≫
「………女王に相談してみよう」
恋歌にとって声が出ない事は致命的。
リンは悪い人物ではないと認識した恋歌はダメ元で魔法の発動に必要だと言えば、渋々頷いて相談すると言ってくれた。
「本当に…こんな文字で、魔法が…」
まだ魔法という現象が本当にあるのか信じられていないフィーリだが、がちゃりと扉が開いた音に肩を震わせた。
「女王様のご入浴の時間だ
お前たちは牢へ戻れ」
入ってきたのはフィーリを連れてきた女騎士で、それに頷いたリンはごそごそと縄を取り出して、恋歌とフィーリの腕を拘束した。
「牢に戻る
作業はまた明日だ」
優しくふわりと立たされた恋歌は、両手が後手で縛られていてもふらつくことなく歩き始める事が出来た。
フィーリも呼びに来た女騎士が連れて行き、薄暗い廊下を歩いて恋歌が入っていた牢に戻ってきた。
「…この本、まだ読むか?」
恋歌に渡していた本を目の前に出すと、ぴくっと一瞬動きを止めた恋歌が、しっかりとリンの目を見て頷いた。
「…ではこの部屋は暗すぎるな」
ぎゅっと眉間に皺を寄せたリンが、牢の中にある蝋燭に火を灯し、真っ暗だった牢に明るくなった。
そして結び直したばかりの縄を解いた。
『(もしかして…)』
解放された手首を擦りながら、ある一つの仮説に辿り着いた。
「わたしは扉の前にいる
何かあれば扉を叩け」
リンの言葉に頷いて本を受け取った恋歌は、紙とペンを貸してほしいと頼むと、リンはあっさりと貸してくれた。
≪頼みがあるの
リンにしか頼めない事なの≫
「…その頼みを聞くかは内容による」
紙に書いた字を見せながら上目遣いで視線を合わせると、またリンの眉間に皺が寄った。
≪わたし仲間にお別れを言いたくて…≫
「そういえば、お前は海賊だったな」
≪優しい人たちだから、きっとわたしが見つかるまで出航しないと思うの≫
「…ここから生きて出られるとは思っていないのか」
恋歌の言い方では生きて仲間の元に戻れるとは思っていない。
女王は魔法を完成させれば仲間の元に返す、と言っていたのに。
≪わかってるんだよ
あの人はわたしを解放する気、ないでしょ?≫
「……」
悲しそうに笑う恋歌を見て、リンはかける言葉を無くしたようでぎゅっと唇を噛んだ。
それが恋歌の言葉が正しいという事の証明。
貴重な魔女を、血に一番効果があった恋歌を、美容に対して狂気的な感覚を持っているあの女王が簡単に手放すとは思えない。
「なんと…伝えればいい」
≪ありがとう
じゃあ…≫
恋歌の嬉しそうな笑顔に視線を逸らしたリンは、恋歌の笑顔に別の意味の笑みが含まれている事に気づくことはできなかった。
『(魔方陣の事はまだ習ってないから、本で学んだことだけしか知識がないけど…)』
ここにシリウスがいてくれれば心強かったが、今シリウスを召喚する事はできない。
ふぅ、と息をはいた恋歌は、書き換える場所の文字をごしごしと布で拭っていると、横にフィーリが膝をついて恋歌の手から布を取った。
「指示してくれればわたしが消すよ
これぐらいしかお手伝いできそうにないし…」
まだ少しびくついているフィーリは、ちゃんと言われたことをやらなければひどい扱いをされるのではと思っているのだろう。
恋歌はそんなことを気にしなくてもいいと思っており、リンも告げ口をするようなタイプには見えない。
だがフィーリはここに来て長いのか、注射痕も多く、元は恋歌と同じ真っ白いワンピースだったのだろうが、薄汚れてところどころ破れている。
こんないつ殺されるかもわからない状況で、恋歌自身も震える身体を無理やり動かしている。
一般人のフィーリが怖くないはずがないだろうと、笑顔で頷いて消してほしい場所を指で指示し、魔方陣を完成させていく。
『(わたしだけの知識じゃこれを一日で完成させることはできない…
もう少し時間がいる…)』
「…それはどの程度で完成するんだ」
しばらく黙って作業を続けていると、リンが顎に手を当てながら興味深そうに覗きこんできた。
≪すぐには無理かな
最低でも…3日ほしい≫
「……そうか」
書かれた日数に眉間に皺を寄せて何かを言いたそうに口を開いたリンだったが、それを飲み込んでなぜか恋歌の頭に手を置いた。
≪もうひとつ聞きたいんだけど、わたしの声はいつ出るようになるの?≫
「そうだな…
ここに連れてくる時に打ち込んだ薬は明日の朝には消えている
だがおそらく女王は声を出せるようにする事は許可しないぞ」
≪魔法の発動に必要だと言っても?≫
「………女王に相談してみよう」
恋歌にとって声が出ない事は致命的。
リンは悪い人物ではないと認識した恋歌はダメ元で魔法の発動に必要だと言えば、渋々頷いて相談すると言ってくれた。
「本当に…こんな文字で、魔法が…」
まだ魔法という現象が本当にあるのか信じられていないフィーリだが、がちゃりと扉が開いた音に肩を震わせた。
「女王様のご入浴の時間だ
お前たちは牢へ戻れ」
入ってきたのはフィーリを連れてきた女騎士で、それに頷いたリンはごそごそと縄を取り出して、恋歌とフィーリの腕を拘束した。
「牢に戻る
作業はまた明日だ」
優しくふわりと立たされた恋歌は、両手が後手で縛られていてもふらつくことなく歩き始める事が出来た。
フィーリも呼びに来た女騎士が連れて行き、薄暗い廊下を歩いて恋歌が入っていた牢に戻ってきた。
「…この本、まだ読むか?」
恋歌に渡していた本を目の前に出すと、ぴくっと一瞬動きを止めた恋歌が、しっかりとリンの目を見て頷いた。
「…ではこの部屋は暗すぎるな」
ぎゅっと眉間に皺を寄せたリンが、牢の中にある蝋燭に火を灯し、真っ暗だった牢に明るくなった。
そして結び直したばかりの縄を解いた。
『(もしかして…)』
解放された手首を擦りながら、ある一つの仮説に辿り着いた。
「わたしは扉の前にいる
何かあれば扉を叩け」
リンの言葉に頷いて本を受け取った恋歌は、紙とペンを貸してほしいと頼むと、リンはあっさりと貸してくれた。
≪頼みがあるの
リンにしか頼めない事なの≫
「…その頼みを聞くかは内容による」
紙に書いた字を見せながら上目遣いで視線を合わせると、またリンの眉間に皺が寄った。
≪わたし仲間にお別れを言いたくて…≫
「そういえば、お前は海賊だったな」
≪優しい人たちだから、きっとわたしが見つかるまで出航しないと思うの≫
「…ここから生きて出られるとは思っていないのか」
恋歌の言い方では生きて仲間の元に戻れるとは思っていない。
女王は魔法を完成させれば仲間の元に返す、と言っていたのに。
≪わかってるんだよ
あの人はわたしを解放する気、ないでしょ?≫
「……」
悲しそうに笑う恋歌を見て、リンはかける言葉を無くしたようでぎゅっと唇を噛んだ。
それが恋歌の言葉が正しいという事の証明。
貴重な魔女を、血に一番効果があった恋歌を、美容に対して狂気的な感覚を持っているあの女王が簡単に手放すとは思えない。
「なんと…伝えればいい」
≪ありがとう
じゃあ…≫
恋歌の嬉しそうな笑顔に視線を逸らしたリンは、恋歌の笑顔に別の意味の笑みが含まれている事に気づくことはできなかった。