一足先にポーラータング号に戻ってきたローとベポは、ペンギンとシャチが戻って来る時間まで情報を整理し、一緒に連れてきた男から話を聞いて、ベポに島の地図を書くようにと指示を出した。

「(血を抜くことが目的ならすぐに殺されることはないはず

あいつの話を全て信じるならだが…)」

自室に戻って必要な薬を手に取り、それを懐に入れる。

「(だが、恋歌は魔女…

その希少性に気づいた時…すぐに殺される可能性がないとも限らない…)」

美容として若い女の血を使っている狂った女王が、魔女の存在を知らないとも限らない。

そして恋歌が魔女であると気づいた時、何をされるのかも、わからない。

「(くそ…考えたって答えは出ねぇ…

恋歌は…そんな簡単にやられるほど柔なやつじゃねぇ

おれたちが助けに行くまで、死ぬんじゃねぇぞ)」

本当なら今すぐにでも飛び出して、女王を脅してでも問い質し、助けに行ってやりたい。

それをしないのは何があるかわからないから。

自分の行動が他の仲間たちを危険に晒し、更に危険な状況になってしまっては意味がない。

恋歌の事は信じているし、いざとなれば魔法以外でも生き残る術は叩きこんでいる。

今自分たちが出来る事は一刻でも早く恋歌を見つけ出して救い出す事。

「キャプテン！ペンギンとシャチが帰ってきたよ！」

ベポが2人の帰艦を知らせに来てくれたので、それに返事を返して自室の扉を開けた。






戻ってきたペンギンとシャチに男が再び同じ話をすると、顔を真っ青にして固まった。

「え！？それ…恋歌は大丈夫なのか！？」

「あんな可愛い子の血なんか、普通の子より効きそうじゃんか！！」

「ええ！？じゃあ早く助けに行かないと！！」

「…お前らうるせぇな」

頭を抱えてばたばたと暴れているクルーたちを見ていると、逆に冷静になることができ、ベポが描いた地図に視線を落とす。

「おい、攫われた女たちが集められている場所の目星はついてんのか」

「え、あ、ああ

奥に城があっただろ

あそこの地下は男子禁制とされていて、女中しか入れないらしい

おれはそこが怪しいと睨んでる」

たしかに島に上陸したときに城下町を見下すような場所に城があるのが視界には入った。

用事はないため何も気にしていなかったが、こうなってくるともっとしっかり見ておけばよかったと後悔する。

「敵陣に乗り込むってわけか…」

ベポの描いた地図はここから城の中に入るまでの最短距離が記されている。

男が侵入経路も確保しており、城に入るまでは何とかなりそうだが問題はその後。

「おれの能力で地下に行くことは簡単だが、他の攫われた女たちがどこにいるのかわからねぇ

それに敵の数も戦力もわからねぇとなれば…」

相手は一国の王女。

敵の数はこちらより確実に多い上に、女たちを人質にされるリスクもある。

恋歌だけではなく、男の娘も助けると約束したからにはその約束は必ず守る。

「ペンギン、シャチ」

「「アイアイ」」

ローがにやりと笑いながら2人に声をかけると、騒いでいた時とは打って変わり、ローと同じようににやりと口元に笑みを浮かべた。

「おれたちの仲間を攫ったこと、後悔させてやる」