「え…戻ってない…？」

船に戻ったローとベポは、一番に恋歌は戻っているかとシャチとペンギンに聞いたが、望んでいる返答はもらえなかった。

「ああ、恋歌は戻ってきてない…けど…」

「え、なにかあったのか？」

「……ちっ

探してくる」

話しについていけていないシャチとペンギンは、何があったのかとローとベポに交互に視線を向けるが、2人とも答えてくれず、ローに至ってはもう一度外に行こうとしている。

「待ってよキャプテン！

おれも…！」

「お前たちはここで待ってろ

一晩経っても恋歌が戻ってこないなら…船を隠して全員で探しに出る」

それだけを淡々と告げてまた島に入って行ったローを唖然と見送り、ベポに説明を求めるように視線を向ける。

「恋歌…どこ行ったんだ？」

「…えっとね、さっきまで一緒にいたんだけど…」

ローの様子からなにか異常事態なのだと感じ取ったシャチとペンギンは、ベポから話を聞いて船を隠せる場所を予め探しておき、いつ2人が帰ってきてもいいように甲板で恋歌とローの帰りを待ち、何事もなく恋歌が戻ってきてくれる事を祈った。






しかし次の日の早朝、船に帰ってきたのはロー1人だった。

「キャプテン…恋歌は…？」

「…見つからなかった」

いらいらとした雰囲気も表情も隠す事はせず、ベポの言葉に返事をすると、船を隠して上陸するぞと指示を出した。

ローの指示に従って予め目星をつけていた場所に船を隠し、全員で島に上陸するが、まだ早朝ということもあり町にはほとんど人がいない。

「…二手に分かれてこの島を虱潰しに探す

恋歌が見つかっても見つからなくても夜にここに集合だ、いいな」

「「「アイアイ、キャプテン！！」」」

「(絶対に見つけるから死ぬんじゃねぇぞ…)」

びしっと返事をした部下たちを引き連れて、島に足を踏み入れた。






ローとベポ、シャチとペンギンの二手に分かれて島中を歩き回っているが、恋歌の痕跡はなく、つなぎを着ているにもかかわらず、なぜか昨日の様に自警団が追いかけてくることはない。

それを不思議に思いながらベポが恋歌と別れた場所に辿り着き、一息つくように人気のない路地裏に腰を下ろす。

「…恋歌、大丈夫かな」

「…大丈夫だ、恋歌はそんな簡単にやられる女じゃねぇ」

「うん…」

落ち込んでいるベポを慰めるように声をかけるが、その言葉は自分にも言い聞かせている。

恋歌は無事であると。

恋歌は生きていると。

僅かに震える手をベポに見られないようにぎゅっと握り締め、そろそろ行こうかと声をかけようとした瞬間、ざり、と足音が聞こえ咄嗟に鬼哭の柄に手をかけ、ベポも戦闘態勢をとるように立ち上がる。

「ま、待ってくれ！

白クマさん！おれだよ！」

「あれ？昨日の…」

「…知ってる奴か？」

「う、うん

昨日少し喋っただけだけど…」

陰から現れたのは昨日恋歌に頼みごとをしてきた男。

一応ベポが警戒を解いたので、ローも鬼哭の柄から手を離そうとしたが、男が持っているモノに気づいてぎろっと男を睨みつけた。

「あんた…それの持ち主、どこへやった」

「あ！それ恋歌の帽子と眼鏡！」

男が持っているのは恋歌が変装に使っている帽子と眼鏡。

ここにきて初めて見つかった恋歌の手掛かりを逃がさないようにいつでも能力を発動できるようにしておく。

「おれが見つけたのはこれだけさ

見たとこ昨日のお嬢さんもいなくなったってとこか…」

「…何か知ってそうな口ぶりだな」

男がベポに恋歌の帽子と眼鏡を渡し、座れと指示するように先に男が手ごろな場所に腰掛けた。

「……ちっ」

小さく舌打ちをしたローは、仕方なく話を聞く体制を取り、どかっと腰を下ろした。