朝、いつもの時間に目を覚ませば、まだ首筋に規則正しくローの息がかかっていた。

『(まだ、寝てるのかな)』

昨日上陸する前は寝不足気味で目の下の隈が濃くなっていた事を思い出し、このまま寝かせておいた方がいいかもしれないと、そっとローの腕を離して布団から抜け出そうとすると、ぐいっと腕を引っ張られてベッドに逆戻りした。

「……まだ、いいだろ」

『寝てて、いいよ

また後で、起こしにくる』

至近距離にあるローの頬を撫でると、不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。

「……」

無言のままぐりぐりと胸に顔を埋められ、甘えているらしいローの頭を撫でてやる。

『どうしたの？』

「……」

何も話さないローはぎゅっと恋歌を抱き締める力を強め、そのまま動かなくなった。

ふぅ、と息をはいた恋歌は布団から抜け出す事を諦め、恋歌もローの背中に手を回す。

『後でペンギンに、謝ろうね』

「…ふん」

何も声をかけずに朝食に行かない事に対して、用意してくれているペンギンに謝ろうと言えば、返ってきたのは不機嫌そうな返事。

しばらくローの頭を撫で続けていると、ふっと腕の力が緩み、規則正しく胸に熱い息がかかり始めた。

『(わたしに毎日魔力をくれてたから寝不足だったみたいだし、仕方ないよね)』

すり、と目の前にある深い藍色の髪に頬を寄せ、ローの匂いと温もりが傍にあることに安心してゆっくりと目を閉じた。






「キャプテーン、恋歌ー」

「…あ？」

『ん…』

どんどん、と扉が叩かれる音で目を覚ましたローはまだ目を覚ましていない恋歌を離して、ベッドから抜け出してぺたぺたと歩いて扉を開けた。

「…ベポか、どうした」

「あ、寝てたんだ

そろそろ上陸しないのかなって恋歌を呼びに来たんだけど」

寝癖がついたまま不機嫌そうな顔をしているローを見て、今起きたんだとわかったが、恋歌の姿が見えない。

「……ああ」

ちらりとベッドの方に視線を向けたローの視線を追うと、珍しくまだ恋歌が眠っており、布団が規則正しく上下に動いているのが見えた。

「…先に準備しとけ

起こして準備させる」

「あ、アイアイ」

不機嫌そうな顔のままベポに指示を出して扉を閉めると、またぺたぺたと足音を鳴らしてベッドに近づき縁に腰掛ける。

「恋歌」

そっと顔にかかる髪を退かし、頬を撫でてやれば瞼が震えてゆっくりと目が開いた。

『…ロー？』

「ああ、ベポが呼びに来た」

『？』

不思議そうな顔をしながらむくりと身体を起こした恋歌は、時間を見てさっと顔を青くした。

『え！？

じ、時間！こんな、時間！？』

とっくに朝食の時間は過ぎており、どちらかといえばお昼時に近い時間。

『！！』

「…ったく」

それに驚いてベッドから飛び出した恋歌だったが、足が布団に引っ掛かり顔から床に落ちそうになったのを、ローがお腹に腕を回して助けてくれた。

「何やってんだ」

『ご、ごめん…』

なぜかそのまま膝の上に乗せられ、掌で頬を撫でられた。

「気を付けて行けよ

何かあったらすぐに戻ってこい」

『うん』

ちゅ、と頬にキスをされたので、恋歌もローの頬にキスを返せば、一瞬驚いたような顔をした後、ふっと優しく笑ってこつん、と額を合わせてくる。

「ベポの奴が待ってる

準備して2人で島を回ってこい」

『うん』