ぱたん、と食堂の扉が閉まった後、紅茶を飲み終えたペンギンが自分とローの分のティーカップを持って立ち上がった。

「ほんとに2人で行かせるのか？」

「…なにか心配事でもあるのか」

あっさりとローが許可したことに疑問を感じたが、ローに眉間にはしわが寄っている。

「シャチから聞いた

変な視線を感じたって」

「…ああ、一瞬だったけどな」

「着いていかなくていいのか？」

元々過保護と言っても過言ではないほど恋歌に対しては心配性で、付き合ってからもそれは変わらない。

そんな視線を感じた島に恋歌の傍に自分がいなくていいのか。

「……ついてくるなって言われたんだよ」

「「は？」」

はぁ、とため息をついたローはがたん、と席から立ち上がった。

「ベポに着いてきてもらうから、おれは着いてくるなって言われたんだよ

明日はおれも本屋に行くつもりだったから島には行く

だから許可した」

それだけを言って食堂からローが出ていくと、また沈黙が流れた。

「キャプテン、恋歌に弱すぎるだろ…」

「惚れた弱みだろ

てか、おれたちも恋歌には弱いじゃん」

「たしかに」

つい先日シリウスが恋歌の身体に入った時に、おねだりをされて逆らえなかった事を思い出した。

「まぁキャプテンも島にいて、ベポが傍にいるなら大丈夫か」

「恋歌自身も強いしな」

あまり心配し過ぎても何が起こるかわからない状態では仕方ないかと、この話はここで終わりにし、今日の不寝番であるシャチに飲み物を持たせてやるために、ペンギンはまたお湯を沸かし始めた。







「ありがとな」

『うん…』

「だ、大丈夫？」

シャチが不寝番に向かい、恋歌とベポが食堂に戻ってきた後、ペンギンも風呂に向かい最近恒例になった恋歌の魔法で髪を乾かしてもらう。

だが、魔力がなくなっても強制的に使い続けている恋歌の表情は、何度見ても辛そうで最初のうちは止めようとしたが、シリウスに恋歌の為だと言われて、恋歌の練習に口を出さずに付き合う事に決めた。

目に魔方陣が出ており、苦しそうに胸を押さえている恋歌は、昼にローと手を繋いでしまったためシリウスから練習として別の魔法も使わされ、いつもより短時間で魔力が尽きているはず。

もう髪は完全に乾いており、後は恋歌が魔力をローに回復させてもらえば今日の鍛錬は終了となる。

「もうキャプテンのところに行きな

いつもありがと

おやすみ」

「また明日ね」

『うん…おやすみ』

まだ足元を浮かせて魔力を使い続けている恋歌の背中を押してやる。

ふらふらとしながら食堂から出ていく恋歌を見送り、ペンギンとベポも自分の部屋に戻った。