自分の事のように他の2人も喜んでくれ、ちゃんと準備してからお祝いをしてくれるらしく、夕飯に期待してくれと言われたため朝食はいつも通り。

普段であれば朝食後は各々割り振られた仕事に取り掛かるが、”お祝い”の準備をしたいと言われ、ペンギンがするはずだった仕事を恋歌が代わりにその仕事を頼まれた。

申し訳なさそうな顔をしていたが、祝いたいという気持ちの方が優先されたらしく、今日やるはずだった仕事を恋歌に任せる事にしたようだった。

恋歌はその理由には恥ずかしそうにしていたが、ペンギンの仕事は普段から手伝っていたので快諾し、今は部屋で書類仕事をしている。

『(お祝い…か…)』

書類にペンを走らせながらローとの関係が嘘でも夢でもないと信じられる事が出来るがどこか気恥ずかしいと、たまにいろんなことを思い出しては頭を振って仕事に集中する。

「…恋歌」

机の上で座って恋歌の仕事を見ていたシリウスは、書類仕事をしているだけなのに百面相をしている恋歌に声をかける。

「あのクソガキのどこがいいのかおれにはわからんが、おれの相棒が選んだ相手なら祝福してやる

よかったな」

『うん、ありがとう』

ローの事は相変わらず気にくわないらしいが、大事な恋歌の想いが通じた事は素直に喜んでくれているらしい。

「嫌な事をされたらすぐに言えよ

本来の姿で噛み千切ってやる」

『…ありがと』

息巻いているシリウスの頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細めている。

『ねぇシリウス』

「ん？」

『…ううん、なんでもない』

「…そうか」

一瞬不安そうな顔をした恋歌だったが、何でもないと首を振ってシリウスの頭から手を離して仕事に戻った。






昼食は食堂ではお祝いの準備をしているので、主役である恋歌とローにはペンギンからおにぎりを差し入れされ、仕事をこなしているうちに夕飯の時間になった。

「恋歌！！」

そろそろ夕飯の時間だなと思っていると、勢いよく扉が開きシャチが入ってきた。

さぁさぁと楽しそうに手を引いてくるシャチに着いて食堂の扉の前に連れてこられると、同じタイミングでベポに連れられたローが現れた。

「開けるぞ」

扉の取っ手を掴んだシャチは、また勢いよく食堂の扉を開けた。

「……」

『わぁ…』

扉を開ければ装飾された室内、机の上に乗りきらないほどの豪華な食事、なぜか真ん中にはホールケーキ、にこにこと笑顔で立っているペンギンの手にはクラッカー。

変わり果てた食堂に驚いて固まっていると、ぱぁーん、とペンギンがクラッカーを鳴らした。

「じゃあ、改めて…」

「「「おめでとー！！」」」

ペンギンの声の後に全員で改めて祝福の言葉をかけてくれ、また手を引かれていつもの席へ。

置かれたジョッキに注がれている飲み物はほんのりアルコールの匂いがする。

それを持てとジェスチャーで促され、全員がジョッキを持つ。

「えー…ごほん、では我らがキャプテン、トラファルガー・ローと、おれたちの可愛い妹分恋歌の恋愛成就を祝して…」

「「「乾杯！！」」」

ペンギンの口上の後に3人が声を上げ、ローと恋歌のジョッキに自分のものを順番に当てていく。

主役たちよりも盛り上がっている3人を機嫌の良さそうなローの口元も緩み、恋歌も楽しそうに笑っている。