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愛した人の愛し方

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部屋に戻ってピアスの入った箱を持ち、ひとつ深呼吸をしてからローの部屋の扉をノックすれば、今日は中から返事があった。

『ご、ごめん

今、時間いい?』

恋歌

どうした」

先ほどまで食堂で顔を合わせていたのにとは思ったが、この5日間夜に部屋に来れないと言っていた事と何か関係があるのかと、じっと恋歌を見ると両手を後ろに回して何かを隠しているのがわかった。

『あ、のね…この間、ロー、ピアス開けるって、言ってた、よね…』

「ああ…」

おずおずと自分の横に立つ恋歌が何を持っているのかは大体想像が出来たが、頑張って伝えようとする恋歌の声を遮らないように返事は最低限に抑える。

『で…その後、ピアス、作るって、約束した…の、覚えてる?』

「ああ」

視線を彷徨わせながらぎゅっと目を閉じ、勢いよくローの顔の前に持っていたものを突き出した。

『ピ、アス…作ったの…』

「…ああ」

勢いよく目の前に箱を差し出され、もう少しで顔に当たる距離だったので、一瞬驚いたが差し出された箱を受け取った。

綺麗目な小さい箱を開けると、中には金のフープピアスが4つ入っていた。

ひとつ手に取って指で撫でればつるりとした感触がし、きらっと金が光に反射して眩しそうに目を細めた。

「綺麗だな…」

ひとつひとつ順番に手に取ってじっくりと見ていると、内側にざらりとした感触があることに気づいた。

「なんだこれ」

小さなピアスの内側にはダイヤで作られた十字架。

十字架の左側だけにダイヤが埋め込まれている。

「十字架、か?」

『うん…

≪ローの誕生星はベクルックスっていう南十字座の一角を担う星

そして…星言葉は高い理想と秘めた情熱…あとは、経験の蓄積とかっていう意味があるの

ローはお医者さんで…これから勉強もいっぱいして…いろんな人を救ってくれる

だから、その…≫』

そこで手話を止めた恋歌は、自分がこの星をピアスに入れようと思った理由を正直にすべて伝えようか迷った。

「ありがとな

たしかに父様みたいな立派な医者になるってのは高い理想で、それを成し遂げる為には経験の蓄積が必要だ

星の魔女に作ってもらったものなら、力がありそうだな」

『うん…』

頭を撫でて礼を言ってくれるローに、本当に込めたかった意味は伝えないでおこうと決めた。

「穴開けねぇと」

本当は高い理想を”ドフラミンゴへの復讐”と考えていた。

そしてもう一つローに伝えなかった星言葉がある。

ベクルックスの他の星言葉は”晩成”。

”晩成”の意味は年をとってから成功する事。

今すぐに復讐を成し遂げる事はできないが、いつかは…復讐を成功してほしいという願いを込めた。

恋歌、穴も開けてくれ」

『え…』

ぐいっと腰を掴まれて膝の上に乗せられ、手にはニードルを握らされた。

「消毒液はこれな」

『あ、で、でも…人の身体に、こんな…』

人の、しかもローの身体に穴を開けるなんてできるはずがないと、ニードルをローに返そうとするが受け取ってくれない。

「大丈夫だ

場所だけは自分で印をつける

そこに刺すだけだ」

そう言ったローは鏡を見ながら適当とも思える速さで自分の耳たぶに印を4つつけ、やってくれと耳を差し出すように軽く横を向いた。

『こんなの…絶対痛い、よ…?』

「ニードルは一気に刺せばそこまで痛くねぇよ

だから躊躇せずにやってくれ」

絶対に引き下がってくれない事を悟った恋歌は、震える手でローの耳たぶに触れた。

『い、痛かったら、ごめんね』

「大丈夫だって」

とんとん、と背中を叩かれ、息をはいてゆっくりとニードルの先を耳たぶに添えた。
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