こんこん、とローの部屋をノックするが、いつものように勉強に集中しているのか、中から返事はない。

扉を開けて中に入ると、机に向かっているローの背中が見えた。

『ロー』

「！！」

近づいても反応されないのでぽん、と肩に手を置けば、ぴくっと反応していつの間にか横に立っている恋歌を見上げた。

『ご飯、できたよ』

「ああ」

ずっと勉強をしていたのか、指で目をおさえたローは疲れたようで大きく息をはいた。

「島では何もなかったか」

『うん』

「そうか」

一緒に出かけたペンギンを信じていないわけでは決してないが、無事に帰ってくるまで心配なものは心配。

『今日のご飯も、美味しそうだよ』

「だろうな」

横に立つ恋歌の手を取り、手の匂いを嗅ぐように顔を近づけた。

「美味そうな匂いがする」

『…うん』

その仕草になぜか自分が食べられてしまいそうな錯覚がしたが、夕飯の事だと自分に言い聞かせ、ローから視線を逸らした。

『ご飯、冷めるよ…』

「そうだな」

離される様子のない手を握り、精一杯平静を装って思いついた言葉を言えば、あっさりと手を離して立ち上がった。






夕飯後、ベポとのお風呂を終え、部屋に戻った恋歌は今日買ったものを机の上に広げた。

『（よし、1日にひとつずつ頑張れば４日でできる）』

加工する為に必要な道具を並べていると、こんこんとノックの音が聞こえた。

扉を開けるとローが立っていたので、ピアスを作っていると伝えて失敗したときが恥ずかしいので、慌てたようにローの目を手で覆った。

「……なんだ」

『あ、あの…しばらく、部屋を、見ないでほしくて…』

どう伝えればいいのかと言葉を濁していると、目を覆っている手を退けることはせず、ぐいっと腰を掴んで引き寄せられた。

「なんでだ」

『か、完成したら、ちゃんと言う…』

怪我や体調不良を隠しているわけではなさそうで、この言い方であればそのうち打ち明けてくれるだろうと、小さくため息をついた。

「わかった

何かあればすぐに言えよ」

『うん…ごめんね』

部屋の中を見ないように恋歌を部屋の外に引き、扉が閉まった音を確認して目を覆っている手を退かせた。

『なにか、用事だった？』

「ああ、また一緒に勉強でもと思っただけだ」

『せっかく、誘いに来て、くれたのに、ごめんね』

「気にするな

また用事が終わったら教えてくれ」

『…うん』

恋歌と一緒にいたいが、恋歌がやりたいことをやらせてやるのも大事だと、今回は引き下がる事にした。

「まぁでも…あまり長く放置するなよ」

『う、うん…』

抱き寄せられたまま耳元に口を寄せて囁くように言われた言葉に顔を赤くした恋歌は、赤くなった顔を隠すように俯いてから頷いた恋歌の頭を撫でてやれば、ぎゅっと背中に手を回して抱き着いてきた。

『5日、ください』

「…ああ、わかった」

心の中で5日は長いとは思ったが、同じ船の中にいるのであれば、全く会えない事もないだろうと、少しだけ我慢する事にした。