恋歌が目を閉じてから数時間後、頭が撫でられている感覚がし、目を開けると視界には白クマのぬいぐるみの顔。

薄くしか開かない目を後ろに向けると、ベッドの縁に座ったローが頭を撫でていた。

「悪い、ノックはしたんだが返事がなかったから勝手に入った」

『…ううん』

撫でられている感覚が気持ちよく、その手に擦り寄るように目を閉じればそのまま撫で続けてくれる。

「一応昼飯だって呼びに来た

どうする」

『…食べる』

まだ微睡の中にいるような感覚がするが、ぬいぐるみを離して眠い目を擦りながら起き上がると、ちゅ、と頬に柔らかい感触がして一気に目が覚めた。

『…ローって、キス、いっぱいして…くれる、よね』

「まぁ…そうだな」

顔を赤くしている恋歌の肩を引き寄せてやれば、頭を胸に預けてくる。

「(してぇと思った時にしてるからあんま考えた事なかったな)」

柔らかい頬に触れたいと、恋歌が愛しいと思った時に身体が自然に動いているため、回数が多いかもしれないなど考えた事もなかった。

『着替えて、すぐ行くね』

「ああ」

すり、と手の甲で頬を撫でられ、部屋から出ていくローを見送った。

『(愛、してる、って言われてから回数が増えた気がするんだよね)』

ベッドから出て着替える為にクローゼットを開けて、ペンギンとシャチお手製のいつもの服を取り出す。

『(これが…”愛してる”って事なのかな…)』

昔よりさらに優しくされ、触れてもらう事も増えた。

愛してる、というのは好きの延長のようなものなのかと思っていたが、まだよく”愛”というものがどういうものかはわからない。

『(”愛”はまだわたしにはわからないけど…わたしは、ローが好き)』

嘘をつきたくないから気持ちが曖昧なまま自分も”愛してる”とは返せないが、男の人として”好き”だと伝えるだけでもしたいと思った。

『よし』

ローに伝えられた言葉に戸惑って、自分の事を”女”として意識してもらう事も、”好き”と伝える事もできていなかったと、軽く頬をぺちん、と叩いて部屋から出た。





「恋歌、昼から上陸できそうか？」

『うん、大丈夫だよ』

昼食を食べながらペンギンが昼からの事を聞いてきたので、それに頷けば今度はペンギンがわかったと頷いた。

「さっきちょっと甲板から島を見てみたけど、結構賑やかそうだったぜ」

「なら換金もできそうだな」

大きめの島ではないのであまり期待はできなかったが、小さいながらも賑わっていそうで、換金もちゃんとできそうな雰囲気。

「ゆっくりでいいから準備頼む」

『わかった』

一足先に食事を終えたペンギンは、自分の食器を持って立ち上がり、先に自分の準備をしてくると食堂から出て行った。

「おれも買ってきてほしいものがあるんだけど、いい？」

『うん』

ベポが欲しいものがあると、買ってきてほしいものを書いたリストを恋歌に渡す。

シリウスも着いてくるようで、ベポの横から恋歌の肩に移動する。

各自食事を終えると部屋に戻り、恋歌は宝物庫に向かい今日換金する宝を全て空間に収納し、一度部屋に戻っていつもの帽子と眼鏡を持って甲板に出れば、ペンギンがぼーっと空を見上げながら手すりにもたれかかっていた。

『ごめんね、お待たせ』

ぱたぱたと駆け寄ってくる足音に視線を向けると、帽子と眼鏡を握りしめて恋歌が申し訳なさそうな顔をしていた。

「いや、待ってねぇよ

不寝番明けの日に悪いな」

『ううん』

トレードマークの帽子はそのままだが、いつものつなぎではなく私服を着ている。

急いで帽子の中に髪を入れ眼鏡をかけると、行こうかと手を出してくれたのでそれを握って2人で船から降りた。