ペンギンとシャチを起こした後、操縦室に戻れば恋歌が読んでいた本に目を通しているローが、足を組んでソファにどっかりと座っていた。

『ごめんね』

「いや、あいつらすぐ起きたか」

『うん、シャチまで、起こしちゃった』

「別にいいだろ」

ローには読めない魔女の文字で書かれた本を閉じ、ぽん、と自分の横を叩く。

そこにすとん、と腰を下ろした恋歌の膝の上に頭を置き、丸まるようにしてもう一度恋歌のお腹に顔を埋めた。

意外と柔らかい夜空のような濃い藍色の髪を撫でていると、甘えているように見えるローの姿にきゅう、っと心臓が音を立てた。

『(可愛い…)』

じっとしたまま動かないローは眠っているのか起きているのかはわからないが、何も言わないので朝食の時間になるまで片手で本を持ち、ローの髪を撫で続けた。





「恋歌ー、ご飯だよ」

朝食のいい匂いが漂ってきてからしばらくするとがちゃりと操縦室の扉が開かれ、ベポがひょっこりと顔を出した。

「あれ、キャプテンもここにいたんだ」

『うん

ロー、ご飯だって』

「…ああ」

髪を撫でていた手で肩をとん、と叩けば、また眉間に皺を寄せた不機嫌そうな顔がこちらを向いた。

「じゃあおれ先に戻ってるね」

『うん、ありがとう』

ぱたぱたと走り去る音が遠くなり、ローも身体を起こすのかと思ったが、もう一度ぎゅっと抱き着いてきた。

『眠い？』

「…いや」

離れがたいとは言えず言葉を濁していると、ふわりとまた頭に優しく手が置かれた。

『眠いなら、後でご飯、一緒に食べよう

ペンギンには、謝るし』

寝不足で隈を育てているローの事を心配しているペンギンであれば、ちゃんと理由を説明して謝れば、最初は怒られても最後はきっと許してくれるはず。

「………いや、いい」

恋歌の言葉に甘えてしまいそうになったが、腕の力を緩めて起き上がった。

「(誰かにこんな優しく頭を撫でられたのは…何年ぶりだ…)」

『？

行こう』

「ああ」

撫でられていた場所に手を当てて動かないローに手を差し出せば、少し、ほんの少しだけ泣きそうな顔をしているのが気になったが、すぐにその表情は消え手を差し出したのは恋歌だったが、ローが手を引いて食堂に向かった。





朝食後、ローは自室に戻り、恋歌は風呂に入った後、自室でベッドに寝転んで白クマのぬいぐるみを抱き締める。

『(今日は起きたら島に行くんだよね)』

海賊になって最初の島でローと一緒に買った白クマのぬいぐるみに顔を埋め、島に着いた時に寝不足でないように目を閉じた。