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出会いから出航まで

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手から震えが伝わってくるが、恋歌にはこれ以上二人を安心させる方法がわからない。

それでも、いつも優しい二人の為に、なにかをしたいと思った。

「お前たちは、ペンギンとシャチに悪事を働かせていたな

武器の密輸から宝石店への強盗まで、それは事実か?」

「…っ!クソガキふぉも!おめえらが話したのか!?

ふざけた真似しやがって…教育が足りてなかったようだなあ!」

男は怒りでペンギンとシャチに拳を振り上げた。

いつもの二人なら避けられたかもしれないが、今の二人は身体が固まっており、突っ立っているだけ。

「「!!」」

結果的に男の拳はヴォルフがあっさりと受け止めた。

だが、それよりも男が驚いているのはペンギンとシャチの間にいる少女の足元に魔方陣が浮かび上がったこと。

ペンギンとシャチもまさか恋歌が魔法を使うとは思わなかったようで、ぽかんとした顔をしている。

「この女…!魔女…!

あんたもいい道具を持ってるじゃねぇか!!」

男が魔女の事について何を知っているのかはわからないが、何か新しいおもちゃを見つけたように、にたあっと嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「道具…じゃと…?

あんたは…そんな目でしかこの子達を見れんのか…!

こうやって、何度もこの子達を殴って…!」

「…ああ!そうさ!それの何が悪い!

両親の死んだみじめなガキどもにスン場所を与えてやったのはこのおれだ!

世の中のごみみたいなやつらを、うまく使ってやったのはこのおれだ!

失敗したら殴りもするさ!そうやってもっと使える道具に仕上げていくんだよ!

単なるゴミを立派な道具にしてやる!いいことじゃねぇか!

そこの魔女も使いようによってはいい道具になる!その女にならいくらでも払う!」

「ふざけんな!!」

ペンギンとシャチだけじゃなく恋歌までも道具と言い出した男に最初にキレたのがローだった。

「そいつらはおれの大事な子分と妹だ!

てめえみたいなゲスが!勝手にそいつらを道具なんて呼ぶんじゃねぇ!」

『(ロー…)』

「ローさん…」

自分たちの為に怒ってくれているローに、シャチとペンギンは目に涙が浮かんでいる。

「てめえは…こいつらの気持ちがわかんねぇのか…?

両親が死んで…頼れる大人もいなくて…悪い事を無理やりやらされて…それがどんなに辛いことか、わからねぇのか!

こいつの魔法も…お前なんかの為に使うもんじゃねぇ!」

「知ったような口をきくガキだ…いいか!俺がこいつらを引き取ってやったんだ!

家も寝床も食事を与えてやった!ああ、食事って言ってもネズミのエサみてえなもんだが…クズにはそれで充分なんだよ!」

「このっ…!」

男のその言葉にローが殴りかかろうとしたが、それより先にヴォルフの拳が男の腹に入った。

「もういい、喋るな」

男はそのまま倒れて気を失った。

「シャチ!ペンギン!

お前らは道具なんぞではない!クズなんかではない!いらない存在なんかではないんじゃ!

わしにとって!お前らは大切な同居人じゃ!!

こんな男の台詞で、お前たちが傷つく必要は、微塵もない!!」

ヴォルフの大声には驚いたが、男が倒れ込んだのを見て、恋歌の魔方陣も何も発動することなく消えた。

その直後、シャチとペンギンは地面に膝をついて泣き崩れていた。

それでも恋歌の手を離さなかったので、恋歌も手を離す事はしない。

その後すぐにラッドが現れ、ヴォルフが集めた証拠を基に、シャチの叔父の家宅捜索をすることが決まった。

シャチの叔父と叔母は犯罪の証拠が見つかったため、連行されていった。






「「ヴォルフ!!」」

二人が連行されていったあと、ペンギンとシャチはヴォルフに駆け寄った。

「おう、小僧ども

嫌なものを見せて、すまなかったのう

だが、こうしてあいつらのやっていたことが表沙汰になった以上、お前たちが責められるようなことはない

安心して働く事が出来る」

髪をぐしゃぐしゃにするように二人の頭を撫でたヴォルフは、いつものように優しく笑った。

「もう、お前たちを怖がらせる人間はどこにもおらんよ」

わんわんと自分に抱き着いて泣く二人を抱き締めて、嬉しそうな顔をしている。

恋歌、お前さんにも嫌な思いをさせた

じゃが、この二人を守るために魔法を使ったな

えらかったぞ」

珍しくヴォルフに褒められて照れくさそうに笑う恋歌は、先ほど男に言われたことなど、何も気にしていないようでよかったと胸をなでおろす。

「ローさん、ヴォルフはさ最初からずっと、俺たちの為に動いてくれてたって事なのかな」

「…さあな」
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