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出会いから出航まで

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ヴォルフは全員が働きたいと言った場所にすべて付添い、そこで働く者たちがまっとうな者たちである事、仕事をするうえで信用できる子どもだってことを丁寧に説明してくれた。

そのおかげで、全員があっさりと雇われることが決まった。

恋歌の就職先である本屋の店主には、喋れない事、占いが得意な事、紅茶を淹れるのが得意な事など全部を話した。

その上で恋歌を雇ってくれることになった。

しかも、本屋の店主には“ちょうど占いもやりたいと思ってた!”ということで、かなり喜ばれた。

占いの館があるのにいいのかとヴォルフが聞いていたが、そことは別の系統の占いにするから大丈夫とのこと。

そして全員の就職先が決まり、みんなで浮かれていると、ヴォルフがまた険しい顔をした。

「最後に寄らねばならん場所がある

行くぞ、ガキども」

町でそろえるものはすべて買ったのに、町の入り口とは違う方向へ歩いていくヴォルフの後を、不思議そうな顔をしながら全員でついていく。

「なあ、こっちの方向って…」

「うん…」

ペンギンとシャチはヴォルフが向かっている方向に身に覚えがあるらしく、先ほどまでの元気がなくなっている。

それを気にしながらもヴォルフが連れてきたのは豪邸の前。

『(大きなお家…)』

「どうして、ここに…」

「なんでだよ、もう二度と、見たくないって思ってたのに…」

ペンギンとシャチは顔を真っ青にして声を震わせている。

その様子を見てこの家がどういうものなのか察した。

『(ここが…ペンギンとシャチが住んでいた家…)』

「どういうことだよ、ヴォルフ!

なんで俺たちをこんなとこに連れてくんだよ!」

「シャチ、ペンギン

無理やりやらされていた事とはいえ、お前たちが悪事の片棒を担いでしまった事は事実じゃ

ほおっておいたら町の人間の中にもそれに気づく者は出てくるだろう

そうしたら、お前たちに対する信用だって崩れてしまう

だからこそ、けじめをつけておく必要があるんじゃよ」

「で、でも!おれ、あの人たち…叔父さんと叔母さんと、ちゃんと話す自信なんか、ねぇよ…

さっきからずっと足も震えて…」

シャチは涙を堪えるようにしてヴォルフに訴えるが、ヴォルフは大丈夫だとシャチとペンギンを抱き締めた。

「お前たちは見ているだけでいい

ここからはわしの仕事じゃ

“大人”の仕事じゃ」

信じろと言って豪邸の門を開けて、玄関の扉を叩いた。

すぐに中から、メイド服を着た女性が不思議そうな顔をして現れる。

「ど、どちらさまでしょう?」

「わしの名は天才発明家ヴォルフじゃ

いきなりで申し訳ないが、ここの主人と話をしたい」

「はぁ…ですが、事前のお約束が無い事には…」

「シャチとペンギンを連れてきた!それだけを伝えてくれ!」

「わ、わかりました…!」

メイドの女性が中に入ってしばらくして、金色のスーツに身を包み、全身にじゃらじゃらと高そうな宝石をつけた男が現れた。

『(うわ…この人の魔力…嫌な感じ…)』

「おおーう、本当にペンギンとシャチがいるじゃねぇか!

なんだじいさん、あんたがわざわざこいつらを連れ戻してくれたのかい?」

ぞわっと鳥肌が立ちそうなほど気持ちの悪い魔力に、この“大人”は“悪い大人”だということがわかった。

「確認するが、あんたがシャチの叔父、ということで間違いはないか」

「あー、そうとも

シャチとペンギンの保護者だよ

いやいや、急にガキどもがいなくなるから、こっちとしても困ってたんだ

わざわざ連れてきてもらってすまねぇな」

そう言ってシャチの叔父と名乗る男はシャチとペンギンに近づこうとした。

それを遮るようにしてヴォルフが間に入るが、シャチとペンギンの身体の震えは止まらない。

「「!!」」

震えている二人に少しでも大丈夫だと伝える為に、恋歌がシャチとペンギンの手を握ると、驚いたような顔をされた。

だが、それが少し嬉しかったのか、二人とも手をしっかりと握りなおしてくれる。

ヴォルフと男の話は続き、男は何を思ったのかシャチとペンギンを手元に戻すために、ヴォルフに金を払うと言ってきた。

“道具”である二人を運んできた礼、だと。

『(どう、ぐ…)』

こんなことを言う大人がいるのかと、恋歌にとっては衝撃だった。

酷い大人もいれば、いい大人もいると心ではわかっている。

だが、このタイプの“酷い大人”は始めて見た。

今までにない感情がざわざわと込み上げてくる感じがする。
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