出会いから出航まで
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それから平和な毎日が続き、ヴォルフはここ1カ月ほど町によく行っている。
帰ってくるのも遅い時間が多くなってきているが、何をしているのかは教えてくれない。
ペンギンとシャチは全快してから、強くなりたいと言ってローに戦い方を教えてもらっている。
二人とも筋がいいのか、ローに教わった事を吸収してめきめきと強くなっていっている。
ベポもほぼ毎日航海術の勉強をしており、最近では海図も描けるようになってきた。
『(わたしもなんとかしないとな…)』
どんどんと遠くなっていく4人に置いて行かれないように、最近恋歌もこっそり一人で魔法の練習をしていた。
それも身になっているのかはわからないが、すこしずつ出来る事は増えてきている。
一度自分も稽古をつけて欲しいとローに頼んだが、ものすごく嫌そうな顔をされ、やめておけと言われた。
ヴォルフに習った護身術しか使えない恋歌は、戦闘時にはほぼ使い物にならないだろう。
だからこそ魔法を習得して、何かあった時に役に立てるようにしたいと思っている。
そんな事を思いながら日々を過ごしていると、ある日の夕食後、ヴォルフが子ども達に真剣な顔で話を始めた。
「明日、全員でプレジャータウンに行くぞ」
その言葉にヴォルフ以外の全員の夕飯を食べる手が止まった。
「前に約束したのを覚えているな
わしの手伝いだけでなく、町でも仕事に就いてもらうという話だったはずじゃ
お前たちがここへ来てから二カ月以上が経った
そろそろ約束を守ってもらおう
あくまでわしらの関係はギブ&テイク、この先もここで暮らすのなら、ちゃんと家賃と食費は払ってもらうぞ」
誰も何もいう事が出来ず、全員が黙っていると、ヴォルフが先に夕飯を食べ終わり、“明日の朝、食事をとったらすぐに出る”という言葉を残して、部屋に戻った。
『(町か…)』
恋歌は特に町が怖いわけではない。
怖いのは…ある人物だけ。
けれど他の4人が町を…大人を怖がっているのは、全員の過去を聞いて知っている為、気持ちはわかる。
「なぁ、ローさん
町、行かなきゃだめかな…?」
ベポが下を向きながら弱弱しい声でローに声をかける。
「…じいさんの言ってることは筋が通ってる
おれたちは最初に町で仕事に就くって約束したんだ
だったら、それを無視するわけにはいかないだろ」
「でもおれ、おっかないよ…
喋るクマを見た町の人の反応を考えると、どうしても身体が震えちまうんだ」
「じゃあいつまでもこの家で、じいさんの世話になってぬくぬく暮らしてるだけでいいのか?
それはやっぱり違うだろ
外に行かなきゃ、何も始まらねぇ」
自分に言い聞かせるような言葉を使うローに、恋歌は心が痛くなった。
みんなの為に無理をしてくれているとわかったから。
「恋歌…?」
一足先に夕飯を食べ終わった恋歌は、椅子から降りて自分の部屋に戻ろうとしている。
それに気づいて声をかけられるが、“おやすみ”と手話をされて、部屋に戻って行った。
「恋歌も不安なのかな…?」
「まぁ…過去の事は知らねぇけど…声を出せないっていうのを受け止めてくれるかとか…」
「ああ…魔女だしな…
それも周りに知られたら、とかあるのかもな」
「……」
恋歌の過去を、この家にいる理由を誰も知らない。
けれど、理由もなくヴォルフと家族でもない恋歌が一緒に暮らしているという事は、何か事情があるという事だろう。
それに“大人”が関係しているのかはわからない。
どんな時も笑ってくれる恋歌を守れるように、ローは自分を奮い立たせ、3人に自分の過去を話した。
守るべき子分である3人の不安を取り除く為に。
強がって、見栄を張って、そのおかげで3人の不安は取り除かれたようだった。
「(水でも飲むか…)」
全員が寝静まった後、一度は眠りについたが夜が明ける前に目を覚ましてしまった。
酷く喉が渇いているように感じて、誰も起こさないようにそっと部屋を抜け出した。
リビングに出ると、キッチンから物音と何かいい匂いがする。
誰かいるのかとキッチンを覗けば、紅茶を飲んでいる恋歌がいた。
「なにしてんだ」
≪目が覚めちゃったからちょっとね
ローも飲む?≫
「ああ」
同じ理由で起きていたらしく、水でもいいと思っていたが、恋歌が紅茶を淹れてくれるというので、任せる事にした。
出された紅茶を飲み込むと、温かいものが喉を通っていき、体の芯から暖かくなっていく感じがする。
≪眠れないの?≫
「…ちょっとな」
≪明日のこと?≫
「…恋歌は、大人が怖くねぇのか?」
確信をついてくる恋歌に、なぜか言葉がするすると出てきてしまう。
「おれは…大人が怖い…
けど…あいつらの前じゃ強がらねぇと…」
なにかを耐えるように頭を抱えたローは、もう恋歌の方を見ていないため恋歌の言葉は伝わらない。
がたん、と恋歌が立ち上がった音がしたあと、ふわっと抱きしめられた。
「恋歌…?」
ぎゅーっと強く抱き着いてくる恋歌が何をしたいのかわからないが、なぜか心が落ち着く気がして、自然と恋歌の背中に手を回していた。
とんとん、と規則正しく背中を叩いていると、ぎゅっと痛いぐらいの力で抱きしめてきた。
『(大丈夫…みんなも、ローも…きっと大丈夫だよ)』
しばらくしてローが気まずそうに離れて、明日の為にもう寝ようと、冷めた紅茶を一気に飲み干してお互いに部屋に戻った。
帰ってくるのも遅い時間が多くなってきているが、何をしているのかは教えてくれない。
ペンギンとシャチは全快してから、強くなりたいと言ってローに戦い方を教えてもらっている。
二人とも筋がいいのか、ローに教わった事を吸収してめきめきと強くなっていっている。
ベポもほぼ毎日航海術の勉強をしており、最近では海図も描けるようになってきた。
『(わたしもなんとかしないとな…)』
どんどんと遠くなっていく4人に置いて行かれないように、最近恋歌もこっそり一人で魔法の練習をしていた。
それも身になっているのかはわからないが、すこしずつ出来る事は増えてきている。
一度自分も稽古をつけて欲しいとローに頼んだが、ものすごく嫌そうな顔をされ、やめておけと言われた。
ヴォルフに習った護身術しか使えない恋歌は、戦闘時にはほぼ使い物にならないだろう。
だからこそ魔法を習得して、何かあった時に役に立てるようにしたいと思っている。
そんな事を思いながら日々を過ごしていると、ある日の夕食後、ヴォルフが子ども達に真剣な顔で話を始めた。
「明日、全員でプレジャータウンに行くぞ」
その言葉にヴォルフ以外の全員の夕飯を食べる手が止まった。
「前に約束したのを覚えているな
わしの手伝いだけでなく、町でも仕事に就いてもらうという話だったはずじゃ
お前たちがここへ来てから二カ月以上が経った
そろそろ約束を守ってもらおう
あくまでわしらの関係はギブ&テイク、この先もここで暮らすのなら、ちゃんと家賃と食費は払ってもらうぞ」
誰も何もいう事が出来ず、全員が黙っていると、ヴォルフが先に夕飯を食べ終わり、“明日の朝、食事をとったらすぐに出る”という言葉を残して、部屋に戻った。
『(町か…)』
恋歌は特に町が怖いわけではない。
怖いのは…ある人物だけ。
けれど他の4人が町を…大人を怖がっているのは、全員の過去を聞いて知っている為、気持ちはわかる。
「なぁ、ローさん
町、行かなきゃだめかな…?」
ベポが下を向きながら弱弱しい声でローに声をかける。
「…じいさんの言ってることは筋が通ってる
おれたちは最初に町で仕事に就くって約束したんだ
だったら、それを無視するわけにはいかないだろ」
「でもおれ、おっかないよ…
喋るクマを見た町の人の反応を考えると、どうしても身体が震えちまうんだ」
「じゃあいつまでもこの家で、じいさんの世話になってぬくぬく暮らしてるだけでいいのか?
それはやっぱり違うだろ
外に行かなきゃ、何も始まらねぇ」
自分に言い聞かせるような言葉を使うローに、恋歌は心が痛くなった。
みんなの為に無理をしてくれているとわかったから。
「恋歌…?」
一足先に夕飯を食べ終わった恋歌は、椅子から降りて自分の部屋に戻ろうとしている。
それに気づいて声をかけられるが、“おやすみ”と手話をされて、部屋に戻って行った。
「恋歌も不安なのかな…?」
「まぁ…過去の事は知らねぇけど…声を出せないっていうのを受け止めてくれるかとか…」
「ああ…魔女だしな…
それも周りに知られたら、とかあるのかもな」
「……」
恋歌の過去を、この家にいる理由を誰も知らない。
けれど、理由もなくヴォルフと家族でもない恋歌が一緒に暮らしているという事は、何か事情があるという事だろう。
それに“大人”が関係しているのかはわからない。
どんな時も笑ってくれる恋歌を守れるように、ローは自分を奮い立たせ、3人に自分の過去を話した。
守るべき子分である3人の不安を取り除く為に。
強がって、見栄を張って、そのおかげで3人の不安は取り除かれたようだった。
「(水でも飲むか…)」
全員が寝静まった後、一度は眠りについたが夜が明ける前に目を覚ましてしまった。
酷く喉が渇いているように感じて、誰も起こさないようにそっと部屋を抜け出した。
リビングに出ると、キッチンから物音と何かいい匂いがする。
誰かいるのかとキッチンを覗けば、紅茶を飲んでいる恋歌がいた。
「なにしてんだ」
≪目が覚めちゃったからちょっとね
ローも飲む?≫
「ああ」
同じ理由で起きていたらしく、水でもいいと思っていたが、恋歌が紅茶を淹れてくれるというので、任せる事にした。
出された紅茶を飲み込むと、温かいものが喉を通っていき、体の芯から暖かくなっていく感じがする。
≪眠れないの?≫
「…ちょっとな」
≪明日のこと?≫
「…恋歌は、大人が怖くねぇのか?」
確信をついてくる恋歌に、なぜか言葉がするすると出てきてしまう。
「おれは…大人が怖い…
けど…あいつらの前じゃ強がらねぇと…」
なにかを耐えるように頭を抱えたローは、もう恋歌の方を見ていないため恋歌の言葉は伝わらない。
がたん、と恋歌が立ち上がった音がしたあと、ふわっと抱きしめられた。
「恋歌…?」
ぎゅーっと強く抱き着いてくる恋歌が何をしたいのかわからないが、なぜか心が落ち着く気がして、自然と恋歌の背中に手を回していた。
とんとん、と規則正しく背中を叩いていると、ぎゅっと痛いぐらいの力で抱きしめてきた。
『(大丈夫…みんなも、ローも…きっと大丈夫だよ)』
しばらくしてローが気まずそうに離れて、明日の為にもう寝ようと、冷めた紅茶を一気に飲み干してお互いに部屋に戻った。