次の日の朝、恋歌が目を開ければ、目の前にあるローの目と視線が合った。

『おはよう』

「ああ、おはよう

眠れたか？」

『うん』

眠りについたのが深夜の遅い時間だった為数時間程度ではあるが、恋歌が目を覚ました時に自分が寝ていることがないようにとローはずっと起きて安心させる様に頭を撫でてやっていた。

「ふぁ…あ、2人ともおはよう…」

『おはよう』

「ああ」

同じタイミングでベポも目を覚まし、身体を起こして眠そうに目を擦っている。

恋歌も身体を起こそうとしていることに気づいて、手を離して2人も起き上がった。

「ペンギンとシャチは？」

「あいつらは別の部屋だ

準備できたらおれたちはここを出るぞ」

「アイアイ」

恋歌が頷き、ベポが返事をしたのを確認して、3人ともに顔を洗ったり、寝癖を直したりして準備を整え、恋歌はベポの手に掴まりながら歩き、部屋から出るとすでにペンギンとシャチが廊下に立っていた。

「お、おはよ」

『おはよう』

「よく眠れたか？」

『うん』

ベポに支えられながら歩いている恋歌の顔を見て、よかったと笑うと頭を撫でてくれる。

「あいつはどうした」

「さっき意識取り戻した

記憶の混濁はなし

怪我も大したことない」

「腹が減ったって言うから軽いもんは作っておいてきた」

「上出来だ

行くぞ」

とんとんと3人の間で進む話に、恋歌とベポはついていけていないが、ローが恋歌が歩き出すのを待っている為、ベポが恋歌を抱えて小走りで後ろを追った。





たどり着いた部屋の中からは鳴き声が聞こえるが、それを気にすることなくローが扉を開けた。

中にはミーシャとアンナ、老夫婦に男が1人。

「よう、調子はどうだ？」

「んー、まぁまぁだ

肉とか食ったらすぐに治るんだけどな」

「んなもん急に食ったらだめだって何回も説明したろ」

「そうはいってもこれじゃ食べた気しねぇって」

ペンギンとシャチが仲良さそうに話しているのは、数時間前に助け出した男。

つまり、本物のルーフ。

目の前に丼が何杯も重ねられており、その中は空。

横に人1人が余裕で入れそうな大きな鍋があり、そこにはお粥が入っている。

「…これだけ食えてりゃもう大丈夫だろ」

「おう！」

長く幽閉されていた為標準体型よりかなり痩せ細っているにも関わらず、人一倍という表現では足りないほどのお粥を平らげているのを見て、ローはもう心配ないと太鼓判を押した。

「恋歌！」

『ミーシャ』

「「「！！」」」

ベポに抱かれている恋歌に気づいたミーシャが、心配そうに駆け寄ってくれたが、恋歌の声に反応した者が数名おり、ロー、ペンギン、シャチの3人は反応した者たちの方へぎろっ、と視線を向ける。

「怪我は？大丈夫なの？」

『うん

ローに治療して、もらったからね』

「そう…」

『ミーシャは？』

「わたしは平気よ、ありがとう」

お互いの無事を喜び合う姿を見て、ルーフは食べる手を止めて持っていた丼と箸を置いた。

「あの子が…あんたらの大事な仲間か」

「ああ」

「たしかに、いい女だな」

どこを見てそんなことを言っているのかはわからなかったが、ルーフが恋歌に向ける視線は優しい視線だった。

「そんなことはお前よりよく知ってる」

「そりゃそうだ」