ペンギンの女難

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男に連れられてやってきたのは一家のアジト。

『(もうローたちはここにるのかな…)』

見た目がお城のような建物の中は装飾に金がふんだんに使われており、扉を開けられた瞬間に目がくらんだ気がした。

「ボス、店の新入りを連れてきました」

「入れ」

2階建ての建物の玄関から一番遠い位置にある扉を男がノックし声をかけると、中から若い男の声が聞こえ姿勢を正して男が扉を開けた。

『(この人が…ここのボス…)』

豪華な椅子にでっぷりとした身体を沈めていた男は、恋歌の姿を見て目を見開いて前のめりになった。

「お、おい…その女…ほんとに新入りか…?」

「え?あ…そうです」

なぜこんなに驚いているのかと男が恋歌を見るが、綺麗な少女という事以外特に特徴はない様に見える。

「女!お前名前を言え!!」

『(この人もしかして…)』

「こ、この子は声が出せないの!」

「はぁ?そんなわけねぇだろ!!

おい!あれ持って来い!!」

「え、は、はい!」

椅子から立ち上がって興奮し始めた自分のボスに怒鳴られ、男は急いで部屋から飛び出していった。

「な、なんなの…?」

太った体で急に動いて大声を上げたからなのか、脂汗が噴き出している。

息を少し整えた後、机の上に置いてあるベルを乱暴に鳴らすと、ばたばたと足音が聞こえ、数人の武装した男が部屋に入ってきた。

「ルーフ様、お呼びでしょうか」

「ああ…」

ルーフ、と呼ばれたのはこの一家のボス。

入ってきた男たちはルーフの前に跪いて頭を下げる。

「その女をこの部屋から出すな

あとミーシャはお前らで好きにしていい」

「は!?」

ルーフの言葉に驚いたミーシャだったが、出口をふさがれ、恋歌を置いて逃げる事もできない。

「あんたたち如きがわたしに相手をしてもらおうなんて百年早いわよ!」

じりじりと近寄ってくる男たちにミーシャも後ろに下がっていくが、逃げ場はなくなり背中が壁についた。

恋歌…」

とん、と背中が壁についた瞬間、男とミーシャの間に恋歌が入り、じっとミーシャに迫る男の目を見つめる。

「お前はルーフ様の相手を務めろ

その娼婦はおれたちに回せ」

ちらっとルーフの方を見ると、まだ脂汗をかいており、バスタオルと呼んでも相違ないほどの大きさのタオルで、汗をふいている。

『嫌』

「「「!!」」」

ぼそっと呟いたほどの声量だったが、心に直接響いてくるような声にぴたっと部屋の中にいる男たちの動きが止まった。

『シリウス』

掌に魔方陣を発動させ、刀を取り出し男たちに向かって構える。

ミーシャに会いに行く時に、また撫でまわされたら嫌だと、ずっと魔法の空間の中にいた為、ここまでついてくることができた。

『ミーシャ、わたしの後ろにいて』

「う、うん…」

武器を構えた事に意識を取り戻した男たちも、自分たちのボスを守るために武器を構える後ろで、ルーフがにたぁと気持ちの悪い笑みを浮かべていた事には気づかなかった。
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