船に戻ると、３人が出迎えてくれたが、不機嫌そうな顔をしているローに、何かあったのかと恋歌に視線を向けたが、恋歌は理由がわからないので軽く首を横に振った。

「…ペンギン」

「お、おう」

名前を呼ばれた時にぎろっと睨まれた気がして、自然と背筋が伸びたペンギンは、嫌な予感がして冷や汗が流れてくる。

「お前、恋歌と…付き合ってることになってるらしいな」

「うぇっ！？」

な、なんでそのことを、と慌てだしたペンギンに先ほど女が言った事が事実だと思い知らされた。

「(うわ、これは…最悪のパターン…)」

自分からローに事情を説明していたら、ここまで不機嫌にはならなかっただろうが、第三者から伝えられたという事がまずい。

「さっきお前が助けた女と会った

今夜昨日の宿で恋歌とお前を待ってるそうだ」

「え…お、おれと、恋歌？」

「ああ、恋歌と、その彼氏、って言ってたからな」

「え、っと…あの、キャプテン…彼氏ってのは…その場を切り抜ける口実というか…知ってると思うけど、おれと恋歌は…そういう関係じゃ…」

強調するように”彼氏”という単語を使ってくるローに、どう説明していいかわからないペンギンがぐっと唇を噛み締めた。

「わかった…

夜までにキリのいいところまで進める」

「…ああ」

『(２人ともどうしたんだろ…)』





「じゃあ行こうか」

『う、うん』

女に誘われた宿に行くために、約束の時間前に他の３人は風呂に行き、ペンギンと恋歌はこれから宿に向かう。

ただ、いつもと違うのはローの纏う雰囲気がぴりついて、ペンギンが恋歌にいつもより近い距離にいること。

島の買い物で手を繋ぐ事はあるが、今日はなぜか肩を抱かれている。

嫌ではないのでそのままにしているが、ペンギンの顔がやけくそ気味にひきつっているのは気になる。

「(…死にそうな顔してんな)」

「気を付けてね」

シャチがペンギンに憐みの視線を向け、ベポが手を振って見送り、ローはふん、と鼻を鳴らして船内に戻っていった。

「ったく、めんどくさいことになったな…」

「ペンギン、元気なさそうだったね」

「元気ないってか、やけくそになってるだけだな」

「やけくそ？」

ペンギンと一番付き合いの長いシャチは、なんとなくペンギンがやけくそになっている理由がわかり、苦労性だなと苦笑いをして二人の背中が見えなくなるまで見送った。