すれ違いの生活が始まって２週間ほど経った頃、ずっと一緒に夕食を摂れていなかった恋歌が、いつもの夕飯の時間に帰ってきた。

『ただいま』

「え？あれ、おかえり

今日は早いんだな」

『うん』

夕飯の準備と３人の夜食の準備をしていたベポは、急に恋歌が早く帰ってきたため、驚いていたが嬉しそうに恋歌の分の夕食も準備し始める。

それを手伝うために恋歌も台所に立ち袖を捲る。

『急に帰ってきて、ごめんね』

「ううん、嬉しいからいいよ」

ふんふん、と鼻歌を歌いながら準備をするベポを見て、恋歌もふっ、と笑みをこぼして料理を並べる。

「…戻ってたのか」

『うん、ただいま』

「ああ、おかえり」

夕飯の時間になり食堂に入ってきたローは、恋歌がいることに驚いていたが、嬉しそうなベポを見てどこかほっとしたような顔をして椅子に座った。

３人分の食事を用意し、席について久しぶりの３人での食事。

「そういえば恋歌、今日はなんで早かったんだ？」

『わたしの用事、終わったの

明日からは、わたしも、船にいるよ』

「そうなのか！？やったー！」

「おい、それは後にしろ」

食事中だというのに、むぎゅーっと抱き着いてきたベポは、ローに怒られ渋々恋歌を離した。

「あとはあいつらだけか」

『そうだね』

もぐもぐといつもより静かな食事を進めていると、ん？とローがあることに気づいた。

「恋歌、お前…

あいつらがまだ戻ってきてないって事は、１人で戻ってきたのか？」

『……』

いつもはペンギンとシャチと一緒に戻ってきていたが、今日は１人だった。

まずい、という顔をして視線を逸らすと、がたん、と音がしてぐいっと顎を掴まれた。

「あれほど一人になるなと言ったよな」

『ご、ごめんなさい…

でも、変装ちゃんと、してたし…』

「そういう問題じゃねぇ

自分の価値を見誤るな」

『う、ん…

ごめんなさい…』

本気で怒ってるとわかった恋歌は、しゅん、とした顔でちゃんと謝った。

ぱっ、と手を離して席に戻ったローは小さくため息をつく。

「反省してるならいい

１人で出歩くならちゃんと言え

禁止ってわけじゃねぇんだから」

『うん』

以前のように１人で出歩くことが必要になる事もあるだろう。

それを禁止するつもりはないが、黙って１人で行動されると、なにかあった時に対応が遅れる。

１人でいる事を知っているのと、知っていないのとでは心構えも変わってくるが、今回に関しては反省している上に、一度注意したことはやらないだろうと、この話はここで終わらせた。

「恋歌が戻ってきたなら明日あいつらの様子を見てくる

２人で留守番頼めるか」

「おれはもちろんいいよ」

『わたしも』

ローは最低でも２人は船に置いておきたいが、３人が出かける用事があるのを理解していた為、ずっと船に残っていた。

しかし、シャチとペンギンの事が気になる為、恋歌がもう出かける必要はないので、明日は様子見がてら出かける事にした。