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出会いから出航まで

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最後の希望として歩き続け、たどり着いたのは小さな家。

薄着で雪の中を歩き、数日間なにも口にしていない少女はその家に最後の望みを託し、ノックをしようと腕を上げたところで、空腹のためにノックをすることなく扉の前に倒れ込んだ。











『(…あったかい)』

目を覚ますと雪の中にいたはずなのに温かい布団に寝かされていた。

身体を起こして辺りを見渡すが部屋の中には誰もおらず、隣の部屋で物音がする程度。

『(ここ…さっきの家…?)』

意識を失う前に目的地でもあった家の前で意識を失ったところまでは覚えている。

危険な場所ではないのはわかるが、どうすればいいのかわからずぼーっとしていると、がちゃりと扉が開いた。

「起きてたか」

入ってきたのは老人で今の外の気温とは真逆の格好をしている。

「腹は減っとるか?」

そう言われて自分が数日間なにも食べていなかったことを思い出し、老人の問いに返事をするように少女のお腹が鳴った。

それに愉快そうに笑った老人は、一度部屋から出て温かいスープを持って帰ってきた。

「食え

話はそれからじゃ」

皿を受け取りスプーンでスープを口に入れると、その温かさにぽろぽろと涙が出てきた。

その様子に優しく頭を撫でてくれ、その手に安心してさらに涙が止まらなくなった。

「ゆっくり食え

おかわりもあるからの」

涙を流しながら何度も頷き、1皿食べ終えるまでにかなりの時間を要したが、老人はただ静かに食べ終わるのを待ってくれていた。








「もう良いのか?」

何度かおかわりをしてご馳走様でしたの意味を込めて頭を下げると皿を受け取って近くの机に置いた。

「お前さん…さっきから思っとったが、声が…出んのか?」

食事をしている時も今も一度も声を発さなかった。

聞いてもいいことなのかと遠慮がちに聞くと、少し間が空いた後小さく頷きが返ってきた。

「そうか

字は?」

老人はそれ以上なにも聞くことはなく、ペンと紙を渡してきた。

受け取った少女は年相応の可愛らしい字で、《書ける》と書いて老人に見せた。

「わしの名前はヴォルフ

お前さんは?」

恋歌

恋歌、か

恋歌はなぜわしの家の前で倒れとったんじゃ?」

ヴォルフの住んでいる場所は街から離れた場所にあり、小さな女の子が衰弱してたどり着くような場所ではない。

《ここにきたのは…》

恋歌はヴォルフにここに来た経緯と今まで起こったことを全て伝えた。

ヴォルフの質問にも答え、かなり過酷な状況でここを頼って来たということがわかった。

聞けば年齢は9歳。

ここに来るきっかけの出来事が起こったのもまだ日が浅い。

女の子であるが寒い中何日も歩いて来たので服も、髪も、肌もぼろぼろ。

「よく頑張った

目的を果たすまでここにいろ

ただし、人生は常にギブ&テイク

安全な暮らしをお前に与える代わりに、お前は労働力をわしに提供する

言っている意味がわかるな?」

ヴォルフの問いかけに頷き、世話になるという意味も込めて頭を下げた。
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