しばらくばちゃばちゃとベポと恋歌が海で遊んでいると、見守っていた３人が船に帰るぞと声をかけにきた。?

「そろそろ船に戻るぞ」

「はーい」

足の水気を簡単に飛ばし、靴と靴下を手に持ち、裸足で砂浜を歩く。

砂浜を裸足で歩くとさくさくと音が鳴り、足の指が少し砂浜に埋まる。

ふと空を見れば冬島とまではいかないものの、かなりの数の星が見える。

「どうした」

顔を上に向けて立ち止まった恋歌に気づいたローが足を止め、続けて少し前を歩いていた３人も足を止める。

つられるように４人も空を見上げるが、スワロー島で見ていた星よりも数が少なく、特に変なところはない様に思うが、恋歌の足が動かない。

「恋歌、どうした」

ぐっと腕を引いて意識を自分に向けさせると、いつものように笑ってなんでもないと首を横に振った。

「嘘をつくんじゃねぇ」

なにかあるという事は恋歌の表情を見ればわかる。

言うまで腕を離すつもりはないらしく、視線も逸らしてくれない。

『…今すぐ、とか…明日に、ってわけじゃ、ないん、だけど』

観念したようにゆっくりと話しはじめると、４人とも静かに話を聞いてくれる。

『わたしたちの、近くに、なにか…危ないものが、来る』

「危ないもの？

なんだそれ」

それがなんなのかはわからないようで、申し訳なさそうに首を振るだけ。

『もっと、ちゃんと、見てみる』

星占いは明日の運勢が良いか悪いか程度の結果しか見れない。

今日見たのは、自分達に…正確にはロー個人に、なにか悪い星が近づいているという事だけ。

どんなことが起こるのか、いつ起こるのか、災害なのか、海賊なのか、人間なのか、何もわからない。

「…そうか

なにかわかればすぐに言え」

『うん』

今これ以上何もわからないということであれば仕方ないと、諦めて掴んでいた手を離してぽん、と頭を撫でた。

『(ちゃんと…調べないと)』






次の日、朝からローの診察を受けて、頬の腫れが引いた事で、湿布は外してもらえた。

「あんま顔に傷つくるんじゃねぇよ」

『うん…

ごめんなさい』

綺麗に腫れのひいた頬を擦りながら返事をすると、はぁとため息をつかれ、頭を掴まれてぐりぐりと撫でまわされる。

「謝ってほしいわけじゃねぇ

気をつけろってことだ

いいな？」

頬をおさえている手の上から、手を重ねて念を押してくるローに、笑って”はい”と返事する。

「口の中は放っておいてもそのうち治る

またなにか身体に違和感があれば言え」

その言葉に頷いて返せば、朝食を食べに食堂に行くぞと手を引かれて立ち上がる。

「あ、２人ともおはよう」

「おはよう」

「ああ」

『おはよう』

食堂に行けばペンギンとシャチが笑顔で挨拶をしてくれ、それに返事をしてから席につく。

『ベポは…？』

「さっき起こしてきたからもうすぐ来るだろ」

いつもはちゃんと起きているのになと思っていると、食堂の扉が開いて眠そうな顔をしたベポがのそっと入ってきた。

「おはよー…」

「おう！おはよ！

さっさと食って村に行くぞ」

次々に食卓にご飯を並べてくれ、全員そろって朝食を食べ始める。

『(ベポ…不安なんだね…)』

いつもは人と違う手を器用に使いながらご飯を食べているのに、今日はぽろぽろとこぼしている。

人間とは違う容貌をしている自分を受け入れてもらえるのだろうかと、気になって夜眠れなかったのだろう。

その不安に全員が気づいているが、いつもの様に接して、こぼした料理を笑いながら拾っている。

「ベポ」

「な、なに？」

「お前はハートの海賊団の…おれの船のクルーだ

何か言われたらおれに言え」

ローの言葉に笑顔で頷いてくれる仲間を見て、照れくさそうに笑ったベポは、朝食を口の中にたくさん詰め込み、”準備してくる！”と食堂を出て行った。