マ「ふぅ…ほんと騒々しいやつだよい」

シャンクスたちが帰ったあと疲れたようにため息をつくマルコ。

シャンクスがいなくなったことで覇気にあてられていたクルーたちも目を覚ます。

エ「今日はお前ら倒れてばっかだな」

「だってエース隊長

海賊女帝とあの四皇じゃしかたないっすよ」

サボ「鍛え方が足りねぇんだよ

赤髪はともかく海賊女帝のは耐えられたはずだろ？」

「あんだけ美しい人が目の前にいたら誰でもああなりますって！

隊長たちの方が異常ですよ…」

エ「海賊女帝より恋歌の方が綺麗なんだから俺は平気だ」

「……それはエース隊長だけでしょう…」

マ「わかったからお前らも働け！

倒れてた分きっちり働いてもらうからない！」

「ええー！

マルコ隊長そりゃないっすよ！」

批判の声が多数上がったが、マルコの一睨みで全員が蜘蛛の子を散らすように仕事に取りかかった。

マ「ったく…

俺は今日中に溜まった書類片付けねぇと…」

サッチ「さて、俺も夕飯の仕込みしてくるわ」

隊長たちもそれぞれ自分の隊の部下に指示を出しにいったりして持ち場に戻っていく。

エ「じゃあ俺らも…ってどうかしたか？」

二番隊も仕事に取りかかろうとしたが、エースが恋歌の様子がおかしいことに気づいた。

サボ「先行っとく」

エ「わり」

サボもそれに気づいたがエースに任せればいいだろうと隊員とニーナを連れて仕事をしに行く。

『うーん…』

恋歌はおかしいというよりずっと俯いて考え事をしているようだ。

エ「どうした？」

『今さらだけどシャンクスさんに言われてそう言えばって思ったことがあってね…

あれ？他のみんなは？』

エ「気づいてなかったのか？

みんな持ち場に戻った」

『え、じゃあエースも行かないと！』

隊長であるエースも引き止めてしまったのかと恋歌は一度考えるのを止めてエースの腕を引っ張ろうとしたがエースは動かなかった。

エ「いいさ、サボのやつがなんとかしてくれる

それより心配事か？」

『心配事っていうか…

そういえばそうなんだって思っただけなんだけど…』

エ「？何か難しいこと言うな…

つまりどういうことだ？」

恋歌は少しだけ恥ずかしそうに照れ笑いしている。

『大したことじゃないんだけど、私も白ひげ海賊団に入れてもらったんだから白ひげさんが"父親"なんだって思ったの…』

エ「恋歌…」

『この世界には私には"父親"と呼べる人はいなかった

それについては特に後悔はしてないわ

血が繋がっていようが繋がっていまいが家族にはなれる

それはわかってる

でもね…今さら白ひげさんのことを"お父さん"とかって呼ぶの恥ずかしくて…』

恋歌はこの世界に来たときから"母親"だった。

急に母親になった恋歌を支えてくれる親はおらずともずっと自分たちを守ってくれていた。

ほんのりと顔を赤くして言う恋歌にエースはにっと笑って恋歌の腕を引っ張った。

そしてそのまま歩いていく。

『エース？』

エ「呼んでやれよ」

『え、』

エ「きっと親父も恋歌に呼んでもらえたら喜ぶ

俺たちは昔から恋歌とは家族だけど親父たちは違う

この船で親父に娘だと言われてここにいるんなら親父は恋歌にとっても父親だ

だからさ…」

エースがぴたりと止まったのは見覚えのあるドアの前。

ゆっくりとドアを開けた先にいるのはいつもと変わらない威厳と優しさを持った眼差しを持つ人物。

エ「呼んでやれよ

絶対に喜んでくれるから」

白ひげと目が合ってしまった恋歌は緊張で一瞬心臓が跳ねた。