『いつも一緒にいる蛇は連れてこなかったの？』

海王類の上に乗っていたのは本当にハンコック一人で、いつも一緒にいる蛇も見当たらない。

ハ「ルフィから恋歌様は蛇が苦手と聞きまして…

連れて来ぬ方がいいかと思いまして」

『ごめんね…

ハンコックの蛇なら大丈夫よ、たぶん…』

恋歌のことを考えて本当に単独で来てくれたのだ。

本来なら女ヶ島の皇帝であるハンコックがたとえ蛇でも供も連れずにウロウロするなど危険極まりないのだ。

ハ「お気になさらないでくださいまし

わらわが勝手にそうしたまでのこと

恋歌様！」

『はい』

やんわりと微笑んでくれたハンコックがいきなり恋歌の両手をガシッっと掴んだ。

ハ「まことに残念なのですがわらわも女ヶ島の皇帝

長居することはできませぬ

帰るまでの距離を考えるとそろそろ帰らなければなりません」

うるうると眼に涙を溜めながら言うハンコックに先程まで耐えていた隊長たちも何人か倒れた。

エ「……おいおい」

ニ「仕方ないわ

世界一と言われる美女にあんな顔されたらね」

サボ「…おっさんたちはほっとけ」

無事な三人の呆れたようなため息が聞こえてきた。

『そっか

わざわざ遠いのに来てくれてありがとうね

ここから女ヶ島までどのぐらいかかるの？』

ハ「あの海王類の速さで５日というところでしょうか

しかし何故？」

にこっ、と笑った恋歌はエースに振り向く。

『ちょっとハンコックを女ヶ島まで送ってくるね』

ハ「へ？」

エ「わかった

気ぃつけてな」

『さ、行こうか』

あっさり進む話にハンコックがついていけていない。

ハンコックが握っていたはずの手を恋歌が引いて手摺に立つ。

呆然とするハンコックはまだ甲板に足をつけたままだ。

『どうしたの？』

ハ「わらわを送ってくださるのですか？」

『うん』

ハ「恋歌様直々に？」

『うん、嫌かな？』

恋歌が少し屈んでハンコックに訪ねるとようやく頭が回転したハンコックは一気に破顔した。

ハ「いえ！わらわ幸せです！

恋歌様直々に送ってくださるとは！」

『大袈裟だね

こっち上ってきて』