討ち入り4日前の朝。

またクルーが扉を叩く音で目を覚まし、外に出るとまたしても朝食の準備は終わっており、朝食を食べ終えた後、恋歌は今日の分の食糧を持って、どこかへ行ってしまった。

ペ「恋歌がどこに行ってるかは知ってんすか？」

ロー「まぁな

すぐ戻ってくる」

何の心配もしていないローに、一体どこに行っているのかと気になったが、答えてはくれなかった。

また昼過ぎに戻ってきた恋歌は、戻ってきたことをローに伝えると、どこか難しそうな顔をして、一人で視界に入るぎりぎりの場所に座り込んでいる。

シ「なにしてんだろな」

ベ「だね

おれ、今日も稽古付けてもらおうと思ったのに」

目を閉じて何かを考え込んでいる恋歌に、声をかけづらく、誰も近寄る事ができない。

ロー「恋歌には恋歌のやり方があんだろ

ほっといてやれ」

恋歌のやることはこちらが想像もできない事なので、考えても仕方ない事であり、恋歌がルフィにとって不利になる事をするとも思えない。

『(うーん、めんどうだな…)』

目を閉じているのは、ワノ国中に送っている刀の視線を共有しているから。

今見ているのは鬼ヶ島の映像。

会話も聞こえている為、面倒な事になったなと、腕を組んでどうするのが一番いいかを考える。

『(でもま、敵情視察ってのも大事だよね)』

自分の前に人が来た為、目を開け視線を上げると、あきれたような顔をしたローが立っていた。

ロー「何時間そうしてるつもりだ」

いつの間にかかなりの時間が経っていたようで、すでに陽が落ちかけている。

『ちょうどよかったです

お話をしてもいいですか？』

ロー「ん？ああ」

ローには伝えてから行こうと、今見た事、自分が今からする事を伝えると、何を言えばいいのかわからないようで、ため息をついて手で顔を覆った。

『向こうの状況を知っておくのもいいかなと思いまして』

ロー「それは…そうだが…」

『ちょっとお話してくるだけです

すぐに…は無理かも知れませんが、戻ってきます』

長時間座っていたため、凝り固まった身体をほぐすために、立ち上がって腕を伸ばす。

『そんな顔…しないでください

無茶もしませんし、怪我もしません

約束します』

引き止める言葉が見つからないローが、悔しそうな顔をしている為、手を取って大丈夫だと笑いかける。

『お風呂は刀に指示しておくので自由にしてください

なにかあれば呼んでください、ね？』

ロー「…わかった」

笑顔を向けてくる恋歌に、渋々返事をしたローは不服そうな顔を止めない。

『では、行ってきます』

ロー「ああ」

目の前で桜姫に変わり、その一瞬後には、今までそこにあった手のぬくもりが消えた。

ロー「(なんだそれ…)」

ごん、と木に頭をぶつけ、今まで握られていた手のぬくもりを逃がさないようにぎゅっと拳を握りしめ、深呼吸をしてからクルーたちの元に戻った。





『(んー…まさかあそこまで話が通じないとは思わなかったな…)』

鬼ヶ島からの帰り、空中でうーん、と腕を組みながらどうしようかと悩んでいる。

『(まぁ今日の事はなんとでもなるからいいとして…

仕方ない…)』

疲れるなとため息をついて、刀にローへの伝言を頼み、一度ワノ国から離れる事にした。