『（ふぅ、さっぱりした）』

風呂から上がり、もうそろそろ勝負はついたかなと4人のいる家に向かうために家を出た。

『（ん？）』

だが、家を出た直後に笑い声と言い争う声が聞こえ、それが幼い子の声だったので、念のため声のする方へ。

「こいつらを売ればまた小紫に会うための金が手に入る…」

「アハハハハ！やめてー！」

『なにを…しているんですか…？』

声のする方に近寄れば、3人の男が嫌がる子どもを数人捕まえていた。

「…驚いた

こんな町にこんな高値のつきそうな女がいるとは」

恋歌を見てにやりと笑った男が、捕まえていた子どもを離し、にやにやしながら近寄ってくる。

子どもは離された瞬間に走って逃げた。

「見ろよこの金の髪に珍しい色の瞳だ

どんな郭でも良い値がつくぜ」

じっと見てくる男の言葉で、この3人の男たちが子どもたちになにをしようとしているのか理解した。

子どもたちを押さえている男2人も、恋歌を上から下まで舐めるように視線を滑らせ、にやりと笑う。

「確かにいい女だな

俺たちで楽しんでから郭に売ってもいいんじゃねぇか？」

「生娘の方が高く売れるが、お前はどっちだ？」

『子どもたちを離してください』

「あ？」

聞く価値もない会話をこれ以上聞いていたくない恋歌は、自分の要求を手短に伝える。

「誰に言ってんだ？

下人が都で暮らせる手引きをしてもらえるだけでも有り難いと思えよ！」

「お前も明日売りに出してやる！

こっちに来い」

目の前の男に腕を掴まれ、引っ張られたが恋歌はびくともしない。

「あ、あれ？なんだこいつ…」

『わたし1人がいればいいんでしょう？

その子たちは離してください』

「そんなわけにいくか

小紫に会うには大金がいる！

金はあっても困らねぇんだよ！」

『（あの子たちを最優先に助けてこの人たちを気絶させればいいか…）』

子どもたちを逃がせれば好きに暴れられると考えていたが、子どもたちを離す気はなさそう。

あまり手荒なことをしたくなかったが、仕方ないと人指し指を子どもを捕まえている男に向けた。

『【縛道の一　塞】』

「な…！？」

急に手足が動かなくなった男は地面に転がり、起き上がれなくなった。

「な、なんだ？」

「か、身体が動かねぇ！！」

「女なにをした！！」

『その子も離してください』

残った1人の男が捕まえている子がこの場から逃げられれば、もうこの3人に用事はない。

掴まれている腕も鳥肌が立ちそうなぐらい気持ち悪い。

不思議なことができる恋歌に警戒しているようだが、何かを思いついたのかまたにやりと気味の悪い笑みを浮かべる。

「返してやるよ！こんなクソガキ！」

『！！』

乱暴に投げられた子どもは恋歌の方に飛んできた。

それを片手でキャッチして子どもを守るように抱き締める。

「お姉ちゃん…」

『大丈夫？』

「うん！」

顔に泥がついてはいるが元気に笑っている姿を見てほっとした。

「これで両手が塞がったな！！」

子どもを押さえていた男が小刀を抜いて恋歌に振り下ろしてきた。

小刀如きで傷などつかない恋歌だが、子どもに傷をつけて欲しくないので盾を出す為に口を開いた。

ロー「【シャンブルズ】」

だが、恋歌が盾を出す前に背中と肩に優しい温もりがきた。

『ローさん…』

後ろから肩を抱くように助けてくれたのがローだとわかると、自分で解決できたことだが来てくれたことに心から安心した。

ロー「怪我は？」

『わたしはありません

この子がちょっと傷ができてますけど…』

ロー「後であいつらと一緒に診てやる」

ローの後ろには先に逃がした子どもたち。

恋歌が危険だと思い、旦那だと思い込まれているローを呼びに行ってくれたようだった。

帽子も刀もなく息切れをしているローはかなり急いで走ってきてくれたらしい。

ロー「おい…お前ら」

男たちを睨みながら怒りを含んだ聞いたこともない低い声を出され、男たちは恐怖で顔が真っ白になった。

ロー「今度こいつに触れてみろ

その欲望まみれの脳みそ入れ替えてやる」

おそらくあまり意味がわかっていないだろうが、恐怖で体が震え膝から崩れ落ちた男たちはもうなにもする気は起きないだろう。

ロー「行くぞ

そいつもできる範囲で手当てしてやる」

『はい

ありがとうございます』

ロー「…お前には後で話がある」

先ほど男たちに向けたほどではないが、ぎろっと睨まれこれは逃げる事はできないなと、大人しく返事をした。