お金を払うのはもしもの時に守る為だというが、サンジが自分は強いから必要ないと告げると男たちが店を壊し始めた。

並んでいたお客たちも少し離れてその様子を伺っている。

「ほら、お前も諦めて帰れ！！」

がっ、と強く腕を掴まれた恋歌だったが、痛くもなんともない上に恋歌を動かすこともできない。

「あれ？こいつ動かねぇ…」

『この国には…食べたくても食べられない人がいるんです』

ウ「まずい離れろ！

サンジが一番怒るやつだ！

しかも恋歌もなんでかわからねぇが怒ってる！」

一時でも幸せな時間を過ごせているのは何も聞かずとも受け入れてくれたえびす町の人たちのおかげ。

その人たちがその日食べるものすら困っているというのに、ここでは簡単に食べ物を粗末にする。

サ「…全部食って貰いますよ、お客さん」

『食べ物を粗末にするような人が、気安く私に触らないで』

サンジが蹴りで1人を地面にめり込ませ、1人は恋歌が掴まれている腕を捻り上げ、片手で地面に頭から叩き落とした。

ウ「あ、相変わらずの怪力…」

フ「さすが恋歌だぜ」

サンジは倒した男に落とした蕎麦を無理矢理食べさせているが、並んでいたお客たちはクモの子を散らすようにいなくなっていた。

残った1人も捨て台詞を吐いて逃げていった。

ウ「絶対やべーやつ呼んでくるだろこれ！」

サ「恋歌さん、怪我は？」

『大丈夫、ありがと』

心配してくれるサンジに笑って大丈夫と返す。

残っていた一杯の蕎麦は、男たちに蕎麦を溢されたトコという女の子にあげると、美味しいと笑っていた。

『（サンジのお蕎麦が美味しくて笑顔になるのはわかるけど…この笑い方は…）』

花魁の禿であるトコは、今いる道で花魁道中がありそれに参加しないといけないようで、蕎麦を食べ終わったあと仕事に戻っていった。

そしてロビンもオロチのお座敷に呼ばれたらしく、ロビンの師匠が呼びに来た。

『ロビン、これ持って行って』

ロビ「これ…いいの？」

『もちろん

何かあれば呼んで』

敵の大将のお座敷にあがるロビンに、何かあったときのために自分を呼び出せる珠を渡しておく。

その珠を大事に懐に入れてロビンは準備のために師匠とお座敷に向かった。

サ「ところで恋歌さん

体調でも悪いのかい？」

『え？なんで？

元気だよ？』

じー、っと恋歌の身体を見てサンジは不思議そうな顔をしている。

サ「いや…いつもより歩き方が不自然だなと思って…」

『あ、歩き方？』

ウ「そうか？」

フ「いつも通りだろ」

歩き方、と言われて心当たりのある恋歌はどうやって誤魔化そうかと、視線をサンジから逸らした。

『えっと…その…』

サ「言いたくないなら無理には聞かねぇよ

ただ、無理はしないでくれ」

答えにくそうにしているのを見て、サンジは引き下がってくれた。

『（歩き方って…わたしサンジの前でそんなに歩いてないんだけど…）』

まさか歩き方がおかしいという理由で指摘されるとは思っていなかったが、サンジが無理やり問いただしたりする男ではないことにほっとした。





しばらくして花魁道中が始まり、目の前をワノ国一の遊女が歩いて行く。

『（綺麗な人…）』

煌びやかな着物に簪、ワノ国一と謳われるに相応しい美貌。

サンジもウソップもフランキーも横で目をハートにして騒いでいるが、恋歌は毎日美女に囲まれている上に、ハンコックとも知り合いなので、綺麗な人という印象しか残らなかった。

『（でも国で一番ってことは、芸もすごいんだろうし、綺麗なだけでは花魁にはなれないんだろうな…）』

途中で花魁を狙った3人の男たちが軽くあしらわれ、都落ちだと告げられていた。

『（なるほど

こういう人たちと間違われてわたしとローさんはえびす町に入れたわけだ）』

この騒動でえびす町の人たちがすんなり受け入れてくれた理由がわかった。

都落ちが日常であり、あの町の人達の中には元々都に住んでいた者たちもいたのだろう。

『（オロチにとって利益がなければ追い出されるってことか…

オロチってどんな人なんだろ…）』