サンジの蕎麦屋は長蛇の列ができていても回転率がいいようで、ほとんど足を止めることなく列は進んでいく。

サ「お！恋歌さんお待たせ！」

『ありがとう』

渡された器に蕎麦が入っており、先に買っていた女性たちもその辺りに立って食べていたので、恋歌も端に避けて蕎麦を食べる。

『（……なにこれ…美味しい）』

いつもサッチの料理を食べているので舌は肥えているはずだが、サンジの蕎麦は驚くほど美味しかった。

この行列ができるのも納得できた。

『……食べます？』

ロー「ああ」

目立たないように隅の方で食べていると、後ろに見知った気配を感じたので振り向けば、笠を被ったローが立っていた。

蕎麦を差し出せば笠をとってずるずると蕎麦をすする。

ロー「…美味いな」

『すごいですよね』

思わず呟いてしまったローの言葉に同意し、素直に料理の腕を尊敬した。

『なにか収穫はありました？』

ロー「いや、今日は特になにもないそうだ

あとは黒足屋に聞く」

『そうですか』

ひと口食べただけで帰ってきた蕎麦を食べ終え、碗を返すためにローがいる場所から離れた。

『ごちそうさま

美味しかったよ』

サ「お粗末様

そりゃよかった！」

今日はもう店終いのようで、サンジは後片付けを始めていた。

サ「恋歌さんのこと瓦版に載ってたね」

『うん、まぁルフィの事が載るならわたしのも載っちゃうよね』

サ「しっかしまぁ桜姫を知らねぇ国があるとは…

けど！桜の女神ってのも恋歌さんに合ってるからいいけどな！」

『そ、そうかな』

ぐいぐいと近づいて鼻息を荒くして語るサンジに若干引いていると、後ろから肩を掴まれサンジから少し離された。

ロー「黒足屋

侍の方はどうだ」

サ「なんだトラ男か

今日も俺の店は女（レディ）で溢れかえってたからな

侍は来てねぇ」

ロー「本来の役割と違うじゃねぇか！！」

味方を集めなければいけないのに普通に商売をしていたサンジはローに怒られているが、サンジが気にしている様子はない。

サ「それよりトラ男

いつまで恋歌さんに触ってんだ」

ロー「……あ？」

こうして話している間もローの手は恋歌の肩に置いてあったため、サンジが注意をするがローはそのまま恋歌を引き寄せてサンジに背中を向けさせた。

ロー「帰るぞ」

『あ、はい』

サ「ちょっと待てこら！！」

帰る、と言って行き先が同じなのと、恋歌の肩に手を置いたままなのが気に入らないサンジはローを引き止めようとしたが、店の片付けが残っているので追いかけることはできなかった。