皇「…」

シ「な、なによ…」

兵が走り去るのを見届けたあと、牢の中で暴れていたシェリーとセレナに視線を向ける。

皇「貴様ら女はそんな軟弱そうな身体でよく男に立ち向かおうと思うものだな」

「「は？」」

真剣な顔をして言われた言葉が理解できず二人で顔を見合わせて首を傾げた。

皇「貴様らの迎えが来ている

さっさと行け」

「「迎え？」」

こんなところに誰が来ているのかと思ったが、周りに兵がいない事を確認したウィリアムの合図で誰かがこちらに来るのがわかった。

「「恋歌！！」」

『お二人ともご無事でよかった』

現れたのが自分たちの仲間であることに気づき二人は嬉しそうな笑みを浮かべる。

シ「いやー、来てくれて助かったよ」

セ「ほんとほんと

はやくここから出して」

『あ、はい

えっと、鍵は…』

牢には鍵がかかっている為鍵を探すが見つからない。

皇「もしかしたらあの兵がそのまま持って行ったかもしれんな」

『え？皇帝陛下がここに来たのにですか？』

ウィリアムがここに来たという事は、牢を開け開ければいけないのにそのまま立ち去ってしまったようだ。

セ「えー、じゃあまだ出られないの？」

戦闘員である二人でもこの牢は壊す事が出来なかったようで、鍵がないということに落ち込んでいる。

『ウィリアムさん、この牢壊してもいいですか？』

皇「(ウィリアムさん？)

あ、ああ問題ない」

ウィリアムの許可も出たので、恋歌が牢の柵を1本ずつ握りしめ人が一人通れるぐらいの大きさまで広げた。

シ「さっすが恋歌！」

セ「ありがと」

皇「…この牢は特別製だと聞いていたがな」

自分より確実に細身で小柄な恋歌があっさりと牢を壊した事を驚いているが、今は説明をしている時間はない。

『さぁ船に帰りましょう』

「「ええ！」」

２人は頷いて、恋歌とウィリアムが来た道を走っていく。

『なにしてるんですか？

ウィリアムさんも行くんですよ』

皇「え？私もか？」

てっきりこのまま船に帰って終わりだと思っていたのに、恋歌に着いてこいと言われて混乱している。

『約束したじゃないですか、この国を一度滅ぼすって』

皇「いや、それはただの私の望みを話しただけで…」

歴史ある国の伝統が簡単に覆ることはないとわかっていた。

わかっていたが、願いを聞かれて口に出さずにはいられなかった。

『私は一度した約束は破りません

この国を変えたいんでしょう？』

そう言われて、ウィリアムは半ばやけくそ気味に恋歌の後ろをついていく事にした。