『まだお話は終わっていません』

皇「は？」

部屋を出る前に恋歌に止められ、これ以上何を話す事があるのかと歩みを止める。

『まだ先ほどのお返事を聞いてません』

皇「返事？」

『私がこの国を滅ぼしてもいいのかどうか』

皇「…貴様ではなく白ひげが、だろ？」

恋歌の言葉に違和感を覚えたウィリアム。

だが、返事以外の言葉はいらないと言われているように恋歌は無言でウィリアムの目を見つめる。

皇「…島の民が死ぬことはしたくない

だが伝統は滅べばいいと思う…」

『そうですか

それがあなたの願いでいいんですね？』

皇「ああ、他の島と同じように男女平等に過ごせればいいと思う

だが、無事に貴様の家族を返さなければ白ひげに攻められるのだろ？」

『それはそうですね

私の家族は無事に返してもらうのでその心配は無用です

私が聞きたいのはあなたがどうしたいかです

先ほどの言葉に偽りがないのであれば、この国を一度滅ぼします』

皇「貴様の言っている意味がまるで理解できんが…

それでこの島のみんなが目を覚ましてくれるのであればそれが望ましい」

『その依頼承りました

では、まず二人の元へ案内して頂けますか？』

皇帝「わかった」














巡回している兵に見つからないように進まなくてはいけないため、皇帝しか知らない抜け道を通って地下牢があるという場所に向かっている。

皇「この先に今日捕らえられた者たちがいるはずだ」

蝋燭の灯だけを頼りに進んでいくと、うっすらと牢が並んでいるのが見えてきた。

そしてがんがん、と牢を叩く音と男女の声が聞こえる。

シ「出せつってんのよ！！

いきなり攫っといて牢に入れるなんてわたしたちが何したっていうの！！」

セ「てかほんとに私ら出さないとやばいと思うよ？

私たちが誰かわかってこんなことしてんの？」

「はっ、貴様らのことなどしるか

知りたくもないわ」

「お前らは皇帝陛下からいらないと言われた女だ

明日になれば島の住民の相手をしてもらう事になる」

シ「っざけんな！」

下品な笑い方で牢の中にいるシェリーとセレナは力任せに牢を叩いているが、壊れそうにない。

皇「貴様らそこで何をしている」

「こ、これは皇帝陛下！！」

恋歌に見えない場所で待機するように伝え、ウィリアムは口論をしている牢の前へと姿を現した。

それに驚いた兵は慌てて頭をたれる。

皇「気が変わったのでな

貴様らは消えろ

今から事が済むまで何人たりともこの牢に近づくことは許さん」

「か、かしこまりました！！」

すごんだ表情を向けられ、兵たちは逃げるように地上へと走っていった。