恋歌以外の女たちはすぐに戦闘態勢に入り各々武器を構える。

ニ「…しまった！」

恋歌が固まったことを不思議に思い顔を覗き込むとまさに顔面蒼白という言葉が合う顔色だった。

そこでニーナは以前サボから恋歌は蛇が苦手だと聞いていたことを思い出した。

ハンコックも恋歌に会いに来る時蛇を連れていなかったはず。

「ふはははは！

まさか白ひげの隊長格が二人もいたことには驚いたがうまく女湯に落としてくれたようだ」

「ああ」

大蛇の頭の上に男が一人乗っており会話をしている。

ニ「わたしたちが倒します

恋歌は防御に集中を」

この程度の相手なら恋歌が出るまでもないと思ったニーナが恋歌を背中に庇う。

『ニーナ…』

ニ「大丈夫です

貴女には指一本触れさせない」

幸いここは温泉。

操れる水はたくさんある。

ニ「あなたたちの目的はなに？」

「あ？

お前たしか…海の麗人だな」

ニ「……だったら？」

蛇の上の男がじろじろとニーナを見て、懸賞首だとわかるとにやっと笑った。

「こんな大物がいるとはな！！

セルパラ！この中じゃあの女が一番懸賞金が高い！

あの女一人で5億だ！！！」

セルパラと呼ばれた蛇はぎろりとニーナを睨みつける。

セ「アンフィ、その女の後ろにいる女はどうだ

あいつも足に白ひげのマークがある」

ア「あの女は見たことねぇな

一緒に連れて行けばいくらかにはなるかもしれねぇがな」


ニ「恋歌、あいつらの狙いは懸賞金の高い海賊みたいです

あなたのことがバレることはないでしょうがここから離れた方がいい」

ここにいる女たちの中で一番懸賞金が高いのは恋歌。

だが、顔がバレていない為敵は恋歌が桜姫であることを気づいていない。

『けど…ニーナ…』

それでも恋歌は狙われているニーナを放って避難することはできない。

ニ「大丈夫です

それよりこれだけの騒ぎで男たちが誰もここへ来ないのが不思議です

他にもなにかあるのかもしれません」

『わ、わかった』

たしかにこれだけの騒ぎの中、隣にいるはずの白ひげもマルコもなにもしてこない。

いくら女湯とはいえ、天井が突き破られるほどの衝撃が聞こえれば心配されるはず。

ニ「あ、でも恋歌！

服を着てください！

その格好ではだめです！」

『あ、そうだった

えーと、服は…』

目の前に苦手な蛇がいることで混乱しているのか、恋歌の動きがいつもより悪い。

聞いた話では通常サイズの蛇にも固まったと言っていた。

それが何の心の準備もなく急に目の前に現れたのだから、思考が追いつかなくとも無理はない。

ア「セルパラ！！あいつも逃すな！」

服を探すためにニーナの背中から離れた恋歌に向かって、セルパラが頭から突っ込んでいく。

『わっ…』

脱衣籠が並んでいる場所はセルパラの一撃で粉々に破壊された。

ニ「恋歌！！」

衝撃でよろめいた恋歌をニーナが支え、裸足であるため少し遠くへ連れて行く。

ア「はっ、服なんか着せたら逃げちまうだろうが

懸賞金がかかってなくても若い女ってのは奴隷として売りやすい

海の麗人！！お前なら…わかるだろ？」

ニ「そんなことのために…

こんなくだらないことを！」

ア「手っ取り早く金を稼ぐならお前みたいな高額の賞金首を捕まえて海軍に差し出すか、奴隷として売っぱらうのが簡単だろうが」

ニ「くだらない…心底くだらない！！

わたしの大切な人を奴隷になんかさせるもんですか！！」

高額の賞金首ということは白ひげのクルーたちも白ひげももちろん例外ではない。

ニ「（恋歌だけでも守らないと

外に出てこいつらが見えないところまで行けば大丈夫なはず）」