一瞬嫌そうな顔をされたが、身体が痛いと言われると医者として診ないわけにはいかない。

ロー「どこが痛い」

『えっと、とりあえず全身ですね…』

身体を少し動かすだけで全身が少し痛い。

腕を出せとローに言われたため素直に左腕をローに出す。

ロー「……痛かったら言えよ」

恋歌の腕を持ったローは一瞬何か言いたげだったが、そのことについては何も言わず軽く力を入れた。

『ちょっと痛いです』

ロー「そうか」

ル「なんだ？母ちゃんどっか怪我したのか？」

ローに診察されている恋歌が心配で後ろから覗き込んでいるが、ローから心配いらないと告げられる。

ロー「ただの筋肉痛だ」

「「「き、筋肉痛！？」」」

恋歌が！？と、そばにいる者たちから視線を向けられる。

『筋肉痛なんか何年ぶりだろ』

この世界に来て約20年。

筋肉痛などならなかったためどんな感覚か忘れていた。

ロー「アイシングからするのが基本だが、全身するわけにはいかねぇ

この程度ならマッサージでもしてりゃそのうち治る」

『わかりました』











ル「しっかし母ちゃんが筋肉痛…」

『まぁいつもの10倍力使ったら普通そうなるよね』

ウ「いやいや、恋歌を普通の枠にはめていいわけねぇだろ！

しかも筋肉痛になんの早すぎ！！」

いつも通りウソップから鋭いツッコミが入るが、それこそ恋歌を普通の枠にはめて考えない方がいいとローに言われる。

ロー「こいつが桜姫なのは十分理解したが、戦闘力も筋力量も俺たちとは次元が違う

こんなひょろひょろの腕であのパワーが出せる意味がわからん」

『え、そうですか？』

ゾ「それに関しては今更だ

恋歌は規格外

けど、俺たちの敵じゃねぇ

それだけわかってりゃ十分だ」

ルフィの仲間でいる間は恋歌が敵になることはない。

それがわかっているからこそこの規格外の強さも笑って受け入れられる。

もし敵であったなら反則だと思うほどの力。

チ「おいみんな！！

ナミとロビンが目を覚ましたぞ！！」

チョッパーの声に反応した全員が急いでナミとロビンがいる部屋に向かう。




一番に扉の前に着いたルフィが勢いよく扉を開けると、ベッドの上に上体を起こしている2人がいた。

ル「よかった

目ぇ覚めたんだな！」

ナ「ったく、来るのがおっそいのよ！」

ロビン「心配かけたわね」

元気そうな2人の姿を見て全員が安堵したように息をはいた。

ナ「あれ？恋歌どうしてここに？」

ここにいるはずのない恋歌が一緒にいることに気づく。

『2人が拐われた事件が結構騒ぎになっててね

新聞に載ってたからなにかわたしでもできることあるかなって来たの』

ロビン「そうだったの、ありがとう」

ル「母ちゃんが一人で敵を倒してよー

相変わらずめちゃくちゃ強かったんだ！」

ナ「さすが恋歌

わざわざごめんね、こいつらが役立たずで」

『ううん、2人が心配だったから早く解決できてよかったよ

また何かあれば助けに来るからね』

ナ「うん、ありがと」

3人の友情に涙する者が数名。

一応起きたばかりなのともう少し休んだ方がいいと言うチョッパーに背中を押され、全員が部屋をあとにした。






『じゃあ2人の無事も確認できたし、今日は帰るね』

ル「ええー…もう帰っちゃうのかよ…」

恋歌にゆっくりいてほしいルフィは口を尖らせて拗ねたような声を出す。

『また来るよ

いつでも呼んで』

ル「ああ！！」

ぽんぽんと頭を撫でてやれば笑顔で見送ってくれる。

ロー「おい、桜姫」

『はい』

白ひげの船に帰るためにイノセンスを発動しようとすると、ローに呼び止められた。

ロー「お前からもらったこれを割れば俺の言うことを優先するのか？」

以前出会った時に渡した珠を見せながら、確認するように問われる。

『内容と場合によります

たとえばその珠を割ってわたしへの依頼が?ルフィを殺せ?だった場合、わたしはなにもしません

基本的にルフィが倒すべき相手はわたしが倒すことはありませんし、航海の手助けも基本的にはしません』

海賊王になるための手伝いはするが、あくまで手伝い。

恋歌が本気を出せばラフテルなどすぐに到達できるだろう。

しかしそれをルフィが望まない。

ロー「わかった

使い所は考える」

『はい、それではみなさん

今日は帰りますね

またきます』

若干筋肉痛により身体が痛いが、待ってくれている人たちの元に帰るためサニー号の甲板から姿を消した。