そして恋歌が近くにいたクルーに声をかけて5人が集まった。

最初の1人以外はあることを条件に選んだつもりだったが…

『（これは…やり過ぎたかな…？）』

カ「…っはぁ、ごほっ」

「諦め悪いよな、お前

そこがいいとこなんだけど」

対人訓練を始めて、もう最後の5人目。

恋歌の選んだ基準は情けで力を加減しないクルー。

訓練のためなら本気で相手をしてくれる人を選んだ。

しかしその結果、カミラは容赦なく殴られ傷だらけになってしまっている。

丈夫な体を持つカミラは普通の人であれば倒れているだろう傷を負っても立っている。

『（ああ…そういうことか…）』

その様子を見ているだけの恋歌だったが、目を凝らしてカミラを見ると疑問が解消された。

カ「（どうやったら…うまく力が使える…）」

「あんまいい気分じゃないんだよな、仲間を殴るって」

カ「（けど…殴るってどうやって…？

相手は俺より強くて…実戦経験もあって…）」

『（…もうそろそろかな）』

カミラが倒れる様子も、恋歌が止める様子もなく、訓練に付き合っているクルーはどうするべきかと考える。

「はぁ…カミラさ、お前にはなんつーか、こう…

気迫が足りねーんだよ」

カ「気迫…ですか？」

「そうだ

お前が丈夫で倒れないのは充分わかった

けど、それだけじゃ相手を倒せない

俺に負けたら誰かとローラがデートされちまうんだろ？

嫌なら…全力でこいよ」

カ「！！」

そこまで強くはないが武装色の覇気を右拳に纏わせた。

覇気を使えないカミラはなにが起こっているかわかっていないが今までと違うことはわかる。

カ「（…集中しろ

一瞬でいい…）」

ぐっと握り拳を作ったカミラは右拳に力を集める。

お互いにしばらくじっと動かなくなり、ほぼ同時に地面を蹴った。











「…今日はここまでって事か」

『はい、ありがとうございました』

カ「……」

クルーは"恋歌に"止められた拳を引いて、残りの4人と一緒にカミラに頑張れと告げて去って行く。

カミラは恋歌に止められた拳を見て、悔しそうな表情を浮かべる。

カ「今の…やっぱり…」

『いくら丈夫なカミラさんでも覇気を纏った攻撃は痛いですよ

また明日頑張りましょう？』

いつも通りに笑う恋歌に、ぎゅっと拳を握り締めて無言で一度頷く。

カ「ありがとう…ございました…」

無理やり絞り出したような声で今日の訓練の礼を伝えて、顔を見せる事なく恋歌の前から走り去っていった。