アルバイトと忍術学園の段
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それから職員室をいくつか周り教員に挨拶を済ませ、最後に医務室へ連れていくことになり医務室へ。
「伊作先輩、いらっしゃいますかー?」
「いるよ、入っておいで」
襖越しに中に声をかければ入室の許可がおり、保健委員の乱太郎が襖を開けると中には調合中の伊作が笑顔で待っており、すぐに立ち上がって恋歌の前で立ち止まった。
「はじめまして
いつも同輩や後輩がお世話になっています
6年は組の善法寺伊作です」
『はじめまして
こちらこそいつもみなさんにはお世話になってます
恋歌です』
よろしく、と手を握り合いどうぞと着席を促される。
「長次と小平太から包帯の換えが必要になるだろうから準備して欲しいと言われているのでこちらを」
ことん、と巻いた包帯を敷き詰められた小箱を目の前に置かれ、手触りで恋歌にも中身が包帯とわかった。
「その目に巻かれている包帯、かなり古いものですね
傷の手当をされているわけではないですが、衛生的にも定期的に替えられたほうがいいかと思います」
『ありがとう
こんな気遣いまでしてもらっていいのかな…』
「僕は保健委員なので気にしないでください
今の包帯も取り替えましょうか?」
『…それじゃあお願いしようかな』
ただ食堂の手伝いに来たはずなのに包帯のことまで気にかけてもらっていいものかと思ったが、押し付けられている感じもせずせっかくの好意を無碍にするのも躊躇われ包帯を取り替えてもらうことにした。
「では失礼します」
目にかかっている髪を耳にかけ、頭の後ろで留められている包帯を解いていき最後まで包帯を取り切ると恋歌の顔を見て伊作がふむ、と顎に手を当てた。
「少し包帯でかぶれてますね
薬を塗ってもいいですか?」
『うん、お願いします』
目の縁やこめかみあたりに優しく薬を塗られているのをじっと待っていたが、目が見えなくとも気配でわかるほど視線が注がれているのが伝わってくる。
「…恋歌さんって、美人っすよね」
『え、そうなの?』
下の方からきり丸の声が聞こえるが薬を塗ってもらっているためそちらに顔を向けることはしない。
「うんうん、ほんとに!
綺麗なお姉さんです!!」
「包帯ない方がいいんじゃないですか?」
「あ、僕もそう思う!」
「お前たち、人にはそれぞれ事情があるんだ
あまり困らせるようなことを言うんじゃない」
たしかに普段顔を隠している髪を耳にかけ包帯を取れば、伏せられた目を縁取るまつ毛は長く、包帯を巻いているせいなのか肌は白く、桜色に色づいた唇は健康的にふっくらしている。
だが、目が見えない女人が美人である事を知られてしまえばこのご時世危険でしかない。
逆に包帯を巻いているのは正解なのかもしれないと1年生たちの言葉を注意すれば、しゅんとしたように落ち込んでしまった。
「でも…」
「言いたいことはわかる
でもそれは俺たちが決めることじゃない、それもわかるな?」
「はい…」
きり丸がどこか悔しそうな声を出しているのを見て、文次郎が慰めるようにきり丸の頭に手を置いて撫でてやる。
目に包帯を巻いている姿を見て怖いと言われていたり、馴染みではない店に入った時には舐められた態度を取られていることにきり丸が心を痛めていることはアルバイトを手伝った時に知った。
本人は特に気にしていないようだが、その人となりを見て感じて、こんな理不尽な扱いをされていい人ではないということは文次郎もわかっている。
だが包帯をする、しないは恋歌が決めることであり、他人が口を出すことではない。
『きり丸くん、わたしは太陽の光も苦手で目に包帯を巻いている方がいいんだ
だからこのままでいいんだよ』
「はい…」
『心配してくれてるんだよね、ありがとう』
きり丸の声がする方に手を伸ばせば、それをきり丸がぎゅっと握ってくれる。
「はい、これで大丈夫です
包帯巻き直しますね」
『ありがとう』
伊作が作った薬を塗り終わってから包帯を巻き直してもらい、包帯の入った木箱は文次郎へ渡した。
「お怪我をされたらいつでもこちらにいらしてください」
『うん、ありがとう』
「ふふ、恋歌さんは些細なことでもお礼を言われるんですね」
『…そうかな?』
「はい」
無意識だった、と今までの会話を思い出すように首を傾げた恋歌を見て伊作はくすくすと笑う。
「文次郎も小平太も長次も恋歌さんの事をすごく優しい人だと言っていました
人に優しくすることも、些細な事で感謝をすることもなかなかできることではありません」
人に頼らなければ生きていけないような障害があるのであれば尚更、という言葉は飲み込んだが、その意図は伝わったようで恋歌は口元に笑みを浮かべた。
『逆だよ
こんなわたしに対して優しくしてくれる人にはわたしも優しくありたいし、感謝もちゃんと伝えたい』
「…なるほど」
納得したように笑った伊作はぱたん、と薬箱を閉めた。
「お、まだいた」
「「「あ!食満留三郎先輩!!」」」
そろそろ行こうか、という雰囲気になった直後ひょこと顔を出したのは6年は組の食満留三郎だった。
「何しに来た」
「お前に用事なんざねぇよ!」
「なんだと!?」
「ちょ、ちょっとここで喧嘩しないでくれよ…わ、ぁっ!?」
「伊作!?」
「「「ああー!!!」」」
喧嘩を始めてしまう直前の同級生たちを止めようと伊作が立ち上がった瞬間、足元に置いたままだった薬箱に躓き踏ん張った時についた足が恋歌の近くに置かれていた杖を踏み、ばきっと嫌な音を立てた。
「恋歌さんの…杖が…」
「真っ二つ…」
「わぁー!!恋歌さんすみませんすみませんすみません…
ど、どうしよう…」
綺麗に真っ二つになった杖を伊作が持ち上げ顔を真っ青にしながら頭を下げている。
『気にしないで
またその辺の枝でも拾えばいいんだし』
「「「その辺の枝!?」」」
そんなわけにはいかないことはわかっているが、これは恋歌が気にしないように気遣ってくれているのだとわかり自分の不運に少し目に涙が滲んだ。
目が見えない人にとって杖がどれだけ大事なものか伊作が一番わかっている。
わかるからこそ大変な事をしてしまったとどうしようかと考えを巡らせているとぽん、と肩を叩かれた。
「心配するな
全く同じとはいかないが、長さや太さが似たものなら作れる」
「留三郎…」
「俺に任せておけ
同室じゃないか」
「うぅっ…」
泣きそうになっている伊作の背中を軽く叩いてやり、留三郎はこほん、とひとつ咳払いをした。
「挨拶が遅くなりました
わたしは6年は組の食満留三郎です」
『はじめまして
恋歌です』
よろしく、と差し出された手を留三郎が握り返した。
「杖のことはすみません
ですが同等の物をお作りします
それで許していただけますか?」
『元々怒ってないよ
気にしないで』
「ありがとうございます」
「ほんとにすみません…」
「あとで即席の物をお作りして渡しに参ります!」
さっそく杖を作るのに最適な材料を探しにいくと言って留三郎と伊作は医務室を飛び出していき、残された者たちは食堂に戻るかと腰を上げた。
「伊作先輩、いらっしゃいますかー?」
「いるよ、入っておいで」
襖越しに中に声をかければ入室の許可がおり、保健委員の乱太郎が襖を開けると中には調合中の伊作が笑顔で待っており、すぐに立ち上がって恋歌の前で立ち止まった。
「はじめまして
いつも同輩や後輩がお世話になっています
6年は組の善法寺伊作です」
『はじめまして
こちらこそいつもみなさんにはお世話になってます
恋歌です』
よろしく、と手を握り合いどうぞと着席を促される。
「長次と小平太から包帯の換えが必要になるだろうから準備して欲しいと言われているのでこちらを」
ことん、と巻いた包帯を敷き詰められた小箱を目の前に置かれ、手触りで恋歌にも中身が包帯とわかった。
「その目に巻かれている包帯、かなり古いものですね
傷の手当をされているわけではないですが、衛生的にも定期的に替えられたほうがいいかと思います」
『ありがとう
こんな気遣いまでしてもらっていいのかな…』
「僕は保健委員なので気にしないでください
今の包帯も取り替えましょうか?」
『…それじゃあお願いしようかな』
ただ食堂の手伝いに来たはずなのに包帯のことまで気にかけてもらっていいものかと思ったが、押し付けられている感じもせずせっかくの好意を無碍にするのも躊躇われ包帯を取り替えてもらうことにした。
「では失礼します」
目にかかっている髪を耳にかけ、頭の後ろで留められている包帯を解いていき最後まで包帯を取り切ると恋歌の顔を見て伊作がふむ、と顎に手を当てた。
「少し包帯でかぶれてますね
薬を塗ってもいいですか?」
『うん、お願いします』
目の縁やこめかみあたりに優しく薬を塗られているのをじっと待っていたが、目が見えなくとも気配でわかるほど視線が注がれているのが伝わってくる。
「…恋歌さんって、美人っすよね」
『え、そうなの?』
下の方からきり丸の声が聞こえるが薬を塗ってもらっているためそちらに顔を向けることはしない。
「うんうん、ほんとに!
綺麗なお姉さんです!!」
「包帯ない方がいいんじゃないですか?」
「あ、僕もそう思う!」
「お前たち、人にはそれぞれ事情があるんだ
あまり困らせるようなことを言うんじゃない」
たしかに普段顔を隠している髪を耳にかけ包帯を取れば、伏せられた目を縁取るまつ毛は長く、包帯を巻いているせいなのか肌は白く、桜色に色づいた唇は健康的にふっくらしている。
だが、目が見えない女人が美人である事を知られてしまえばこのご時世危険でしかない。
逆に包帯を巻いているのは正解なのかもしれないと1年生たちの言葉を注意すれば、しゅんとしたように落ち込んでしまった。
「でも…」
「言いたいことはわかる
でもそれは俺たちが決めることじゃない、それもわかるな?」
「はい…」
きり丸がどこか悔しそうな声を出しているのを見て、文次郎が慰めるようにきり丸の頭に手を置いて撫でてやる。
目に包帯を巻いている姿を見て怖いと言われていたり、馴染みではない店に入った時には舐められた態度を取られていることにきり丸が心を痛めていることはアルバイトを手伝った時に知った。
本人は特に気にしていないようだが、その人となりを見て感じて、こんな理不尽な扱いをされていい人ではないということは文次郎もわかっている。
だが包帯をする、しないは恋歌が決めることであり、他人が口を出すことではない。
『きり丸くん、わたしは太陽の光も苦手で目に包帯を巻いている方がいいんだ
だからこのままでいいんだよ』
「はい…」
『心配してくれてるんだよね、ありがとう』
きり丸の声がする方に手を伸ばせば、それをきり丸がぎゅっと握ってくれる。
「はい、これで大丈夫です
包帯巻き直しますね」
『ありがとう』
伊作が作った薬を塗り終わってから包帯を巻き直してもらい、包帯の入った木箱は文次郎へ渡した。
「お怪我をされたらいつでもこちらにいらしてください」
『うん、ありがとう』
「ふふ、恋歌さんは些細なことでもお礼を言われるんですね」
『…そうかな?』
「はい」
無意識だった、と今までの会話を思い出すように首を傾げた恋歌を見て伊作はくすくすと笑う。
「文次郎も小平太も長次も恋歌さんの事をすごく優しい人だと言っていました
人に優しくすることも、些細な事で感謝をすることもなかなかできることではありません」
人に頼らなければ生きていけないような障害があるのであれば尚更、という言葉は飲み込んだが、その意図は伝わったようで恋歌は口元に笑みを浮かべた。
『逆だよ
こんなわたしに対して優しくしてくれる人にはわたしも優しくありたいし、感謝もちゃんと伝えたい』
「…なるほど」
納得したように笑った伊作はぱたん、と薬箱を閉めた。
「お、まだいた」
「「「あ!食満留三郎先輩!!」」」
そろそろ行こうか、という雰囲気になった直後ひょこと顔を出したのは6年は組の食満留三郎だった。
「何しに来た」
「お前に用事なんざねぇよ!」
「なんだと!?」
「ちょ、ちょっとここで喧嘩しないでくれよ…わ、ぁっ!?」
「伊作!?」
「「「ああー!!!」」」
喧嘩を始めてしまう直前の同級生たちを止めようと伊作が立ち上がった瞬間、足元に置いたままだった薬箱に躓き踏ん張った時についた足が恋歌の近くに置かれていた杖を踏み、ばきっと嫌な音を立てた。
「恋歌さんの…杖が…」
「真っ二つ…」
「わぁー!!恋歌さんすみませんすみませんすみません…
ど、どうしよう…」
綺麗に真っ二つになった杖を伊作が持ち上げ顔を真っ青にしながら頭を下げている。
『気にしないで
またその辺の枝でも拾えばいいんだし』
「「「その辺の枝!?」」」
そんなわけにはいかないことはわかっているが、これは恋歌が気にしないように気遣ってくれているのだとわかり自分の不運に少し目に涙が滲んだ。
目が見えない人にとって杖がどれだけ大事なものか伊作が一番わかっている。
わかるからこそ大変な事をしてしまったとどうしようかと考えを巡らせているとぽん、と肩を叩かれた。
「心配するな
全く同じとはいかないが、長さや太さが似たものなら作れる」
「留三郎…」
「俺に任せておけ
同室じゃないか」
「うぅっ…」
泣きそうになっている伊作の背中を軽く叩いてやり、留三郎はこほん、とひとつ咳払いをした。
「挨拶が遅くなりました
わたしは6年は組の食満留三郎です」
『はじめまして
恋歌です』
よろしく、と差し出された手を留三郎が握り返した。
「杖のことはすみません
ですが同等の物をお作りします
それで許していただけますか?」
『元々怒ってないよ
気にしないで』
「ありがとうございます」
「ほんとにすみません…」
「あとで即席の物をお作りして渡しに参ります!」
さっそく杖を作るのに最適な材料を探しにいくと言って留三郎と伊作は医務室を飛び出していき、残された者たちは食堂に戻るかと腰を上げた。