店の秘密とお礼の段
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「ところで君の用事って何?」
『あ、そうですね』
雑渡からの話は終わったようで、恋歌からの用事は何かと促すと立ち上がって店から箱をふたつ持ってきた。
『これをおふたりにお渡ししようと思っておりました』
「何だこれは」
受け取った尊奈門がぱか、と箱を開けると中には先ほど食べたくっきーが入っており、もうひとつには煎餅が入っていた。
『あの日着いてきてくださったお礼です』
「別にわたしたちは気になったから着いていっただけで何もしてないと思うけど…」
『それでも…わたしに新しい生き方を…そのきっかけをくださったことに違いはありません』
「……そういうことなら有り難くいただこう
尊奈門もお礼言いなさい」
「え、あ、はい
礼などされる覚えはないが有り難く頂戴する」
ぺこり、と頭を下げた尊奈門は嬉しそうに箱を風呂敷に包んだ。
「そういえば1年は組に編入したって聞いたけど忍術の勉強も始めたの?」
『座学は1年は組のみんなと一緒に土井先生の授業を受けてます
実技は別の授業を土井先生につけていただいているところです』
「へぇ…それは忍術ではないんだ」
「それ以上曲者にお話しする必要はありません」
雑渡の質問に答えようと恋歌が口を開いたところで文次郎が口を挟んできた。
「此奴は忍術学園の関係者ではありません
内部情報となる事についてはご内密に」
『あ、そうだよね
ごめんね』
自分のことだからと話してしまっていた恋歌だったが、文次郎の言葉で雑渡は敵にもなり得る存在だったと思い出し口を噤んだ。
「まぁいいよ
ただの興味本位で聞いただけだったし
それじゃあそろそろ帰ろうか」
「はい」
よいしょ、と立ち上がった雑渡に続いて尊奈門もその背中を追う。
見送りをしようと恋歌も2人の背中を追い、その後ろに渋々3人もついてくる。
「じゃあね
甘味ありがとう、城に帰ってみんなでいただくよ」
『こちらこそありがとうございました
次はお団子を用意しておきます』
「うん、また食べたいから用意しておいて
お茶もごちそうさま」
ひらひらと恋歌に手を振り、後ろで睨んでいる3人には意味深な笑みを向けて帰っていった。
「恋歌さん、あの曲者は度々学園に来ますが気をつけてくださいね」
『そうだね
喋っちゃいけないこと喋らないように気をつける』
「そういうことではないのですが…」
わざわざ恋歌を訪ねて神の目のことを聞きに来たということは、恋歌の能力について調べているということ。
それがただの興味本位であればまだ良い方だが、それを戦にでも使おうと考えているようであれば、雑渡から守り切れる自信はない。
「鍛錬あるのみ、だ」
「ああ、そうだな」
「そうだな…」
『?
あとは箱に詰めるだけだし少し待っててくれる?』
特異な能力であるということは本人も自覚はしているはずだが、それをどのように利用されるかまではまだ考えられていないらしい。
甘味を詰めて帰ろうと4人で店の中に入ったところで小平太が急に大声を出した。
「あ!そうだ!!
わたしこれだけは聞かねばと思っていたことがあります!」
「うるせぇな
何だよ」
くるり、と振り向いて恋歌に向かい合った小平太はじー、っと恋歌の目を見つめる。
「恋歌さんは…死も模倣できるのですか?」
「は?」
『…どうしてそう思うの?』
小平太の言葉にぽかん、と口を開けた文次郎と、その話を聞いていたのか長次は視線だけをよこしてくる。
「わたしたちが神埜家のことを調べていた時、恋歌さんに直接狙われていることを言わなかったのは恋歌さんが自死をする可能性があるからでした
念入りに武器を持っていないか、毒を持っていないかを調べておりましたが最後まで見つからなかった
とすれば可能性があるのは恋歌さんの目の能力かと」
『うん、正解』
いつものように柔らかく笑いながら発せられた言葉に3人の身体がびしりと固まる。
「わたしは先ほどの生きることを諦めている、という曲者の言葉に同意したのも嫌でした
まだ…何かあれば自分の命を犠牲にされるつもりがあるということでしょうか…?」
『…雑渡さんほどの手練れであれば、という意味だったんだけど
ごめんね、発言には気をつける』
「発言だけではだめです!
生きたいと…願ってください
生き延びていただけるならわたしのことを何でも模倣していただいて構いません!
生きてさえいてくだされば…どこに囚われていようと…必ず助けに行きます」
『…土井先生にもそう言われたの
どんな形でもいいから生き延びる術を身につけて…泥臭くてもいいから…生きてほしいって』
「土井先生のおっしゃる通りです!
生きることを…諦めないでください…」
ぎゅう、っと小平太に手を握られ、絞り出したかのような言葉に酷いことをしてしまったのだと、今になって気づいた。
『うん、わかった
諦めないよ、約束する』
「…本当ですか?」
『土井先生に護身術も教えてもらってるところなの
あまりこの目を使うことは好きじゃないけど…
七松くんがそんなに悲しい顔をするなら約束する』
むすっ、としていた小平太の表情が緩み、にこにこといつものような笑みを浮かべてくれた。
「でも生きていてほしいと願っているのは文次郎も長次も同じです
もちろん学園長先生も土井先生も、1年は組もです!
諦めそうになったらわたしたちの悲しい顔を思い出してください!」
「それがいい、もそ」
『うん、わかった』
冗談とも本気とも捉えられるような言葉を笑顔で言ってくれたおかげで暗い雰囲気はなくなり、店の方へと足を向けた。
(死すらも見ただけで模倣できるのか…
便利な力だけどこちら側に引き込むことはできないしなぁ…)
『あ、そうですね』
雑渡からの話は終わったようで、恋歌からの用事は何かと促すと立ち上がって店から箱をふたつ持ってきた。
『これをおふたりにお渡ししようと思っておりました』
「何だこれは」
受け取った尊奈門がぱか、と箱を開けると中には先ほど食べたくっきーが入っており、もうひとつには煎餅が入っていた。
『あの日着いてきてくださったお礼です』
「別にわたしたちは気になったから着いていっただけで何もしてないと思うけど…」
『それでも…わたしに新しい生き方を…そのきっかけをくださったことに違いはありません』
「……そういうことなら有り難くいただこう
尊奈門もお礼言いなさい」
「え、あ、はい
礼などされる覚えはないが有り難く頂戴する」
ぺこり、と頭を下げた尊奈門は嬉しそうに箱を風呂敷に包んだ。
「そういえば1年は組に編入したって聞いたけど忍術の勉強も始めたの?」
『座学は1年は組のみんなと一緒に土井先生の授業を受けてます
実技は別の授業を土井先生につけていただいているところです』
「へぇ…それは忍術ではないんだ」
「それ以上曲者にお話しする必要はありません」
雑渡の質問に答えようと恋歌が口を開いたところで文次郎が口を挟んできた。
「此奴は忍術学園の関係者ではありません
内部情報となる事についてはご内密に」
『あ、そうだよね
ごめんね』
自分のことだからと話してしまっていた恋歌だったが、文次郎の言葉で雑渡は敵にもなり得る存在だったと思い出し口を噤んだ。
「まぁいいよ
ただの興味本位で聞いただけだったし
それじゃあそろそろ帰ろうか」
「はい」
よいしょ、と立ち上がった雑渡に続いて尊奈門もその背中を追う。
見送りをしようと恋歌も2人の背中を追い、その後ろに渋々3人もついてくる。
「じゃあね
甘味ありがとう、城に帰ってみんなでいただくよ」
『こちらこそありがとうございました
次はお団子を用意しておきます』
「うん、また食べたいから用意しておいて
お茶もごちそうさま」
ひらひらと恋歌に手を振り、後ろで睨んでいる3人には意味深な笑みを向けて帰っていった。
「恋歌さん、あの曲者は度々学園に来ますが気をつけてくださいね」
『そうだね
喋っちゃいけないこと喋らないように気をつける』
「そういうことではないのですが…」
わざわざ恋歌を訪ねて神の目のことを聞きに来たということは、恋歌の能力について調べているということ。
それがただの興味本位であればまだ良い方だが、それを戦にでも使おうと考えているようであれば、雑渡から守り切れる自信はない。
「鍛錬あるのみ、だ」
「ああ、そうだな」
「そうだな…」
『?
あとは箱に詰めるだけだし少し待っててくれる?』
特異な能力であるということは本人も自覚はしているはずだが、それをどのように利用されるかまではまだ考えられていないらしい。
甘味を詰めて帰ろうと4人で店の中に入ったところで小平太が急に大声を出した。
「あ!そうだ!!
わたしこれだけは聞かねばと思っていたことがあります!」
「うるせぇな
何だよ」
くるり、と振り向いて恋歌に向かい合った小平太はじー、っと恋歌の目を見つめる。
「恋歌さんは…死も模倣できるのですか?」
「は?」
『…どうしてそう思うの?』
小平太の言葉にぽかん、と口を開けた文次郎と、その話を聞いていたのか長次は視線だけをよこしてくる。
「わたしたちが神埜家のことを調べていた時、恋歌さんに直接狙われていることを言わなかったのは恋歌さんが自死をする可能性があるからでした
念入りに武器を持っていないか、毒を持っていないかを調べておりましたが最後まで見つからなかった
とすれば可能性があるのは恋歌さんの目の能力かと」
『うん、正解』
いつものように柔らかく笑いながら発せられた言葉に3人の身体がびしりと固まる。
「わたしは先ほどの生きることを諦めている、という曲者の言葉に同意したのも嫌でした
まだ…何かあれば自分の命を犠牲にされるつもりがあるということでしょうか…?」
『…雑渡さんほどの手練れであれば、という意味だったんだけど
ごめんね、発言には気をつける』
「発言だけではだめです!
生きたいと…願ってください
生き延びていただけるならわたしのことを何でも模倣していただいて構いません!
生きてさえいてくだされば…どこに囚われていようと…必ず助けに行きます」
『…土井先生にもそう言われたの
どんな形でもいいから生き延びる術を身につけて…泥臭くてもいいから…生きてほしいって』
「土井先生のおっしゃる通りです!
生きることを…諦めないでください…」
ぎゅう、っと小平太に手を握られ、絞り出したかのような言葉に酷いことをしてしまったのだと、今になって気づいた。
『うん、わかった
諦めないよ、約束する』
「…本当ですか?」
『土井先生に護身術も教えてもらってるところなの
あまりこの目を使うことは好きじゃないけど…
七松くんがそんなに悲しい顔をするなら約束する』
むすっ、としていた小平太の表情が緩み、にこにこといつものような笑みを浮かべてくれた。
「でも生きていてほしいと願っているのは文次郎も長次も同じです
もちろん学園長先生も土井先生も、1年は組もです!
諦めそうになったらわたしたちの悲しい顔を思い出してください!」
「それがいい、もそ」
『うん、わかった』
冗談とも本気とも捉えられるような言葉を笑顔で言ってくれたおかげで暗い雰囲気はなくなり、店の方へと足を向けた。
(死すらも見ただけで模倣できるのか…
便利な力だけどこちら側に引き込むことはできないしなぁ…)