店の秘密とお礼の段
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何回かにわけて煎餅を焼き終えると、陽が昇る前に店に着いたが、すでに時刻はもうすぐお昼になる時間帯となった。
『そろそろお昼ご飯の準備もしないといけないね』
「そうですね
おむすびでも握りましょうか?」
米はかまどに火を入れた時に一緒に炊いていたので米はある。
『実は…これも買っちゃったんだ
一緒に食べない?』
「こ、これは…!!」
「見るからにいい肉…!!」
届いた荷物の中でまだ開けられていなかった包みを開けると、中には見ただけで高級品だとわかる肉の薄切りが入っており、またしてもごくりと喉が無意識に鳴った。
「というか買っちゃった…とは…」
『おすすめされたから潮江くんと食べようと思ってたんだけど、多めに買っておいてよかった』
「いえ…そういうわけではなく…」
「わたしたちが食べても良いのですか?」
『?
手伝ってくれてるんだからお礼だよ』
「恋歌さん…お礼と言えば何でも許されると思ってませんか?」
『そんなことないよ』
「固いことを言うな!文次郎!
せっかく用意してくださったのだ」
「小平太の言う通りだ」
高級品を血縁でもない子どもに食べさせるのはいかがなものかとは思ったが、普段はみんなと同じ物を食べ、こういった特別な時にあくまでもお礼として振る舞ってくれるのであれば甘んじて受けるのも仕方なしと結論づけた。
『よーし、じゃあちょっと待っててね』
『お待たせー』
準備は1人でできるからと奥の板間で待っていた3人は、地下から持ってきた本を読んで待っていたが、どんと目の前に置かれた食事に目を丸くした。
ほかほかの白米にいくつかの皿に分けられた味付けの違う肉料理、漬物に味噌汁と立派すぎる昼食。
『楽しくてついたくさん作っちゃった
無理しなくてもいいから好きなだけ食べてね』
作りすぎた、という自覚はあるのか食べられる分だけでいいとは言っているが、店をしているぐらいなので人に自分の作った物を食べてもらうことが好きなのだろうということは理解している。
その好意を無碍にする理由もなければ無理をしなければいけない量でもない。
「いえ!せっかく作っていただいたのです
いただきます」
「「いただきます」」
手を合わせてから準備された目の前の昼食を口に入れると、一瞬固まってから顔を輝かせて3人で目を合わせた。
『どう?美味しい?』
「はい!
おかわりはしても大丈夫ですか?」
「お、おれも…」
『もちろん』
白米はたくさんあるからとおかわりをしに行く3人の後ろ姿を見て嬉しくなった恋歌も、いただきますと手を合わせて昼食へと手を伸ばした。
「「「ごちそうさまでした」」」
『お粗末さまでした
全部食べてくれてありがとう』
昼食にと用意した食材を全て食べてくれた3人に恋歌からも感謝をし、休憩にと食後のお茶を淹れた。
「ところで恋歌さん、少し聞きたいことが…」
『ん?』
「この本なのですが…」
すっ、と目の前に長次が差し出したのは先ほど地下から持ってきた本。
表紙には薬草図鑑、と書かれている。
『図鑑、って書いてる割には絵がほとんどない薬草について書かれている本だね』
「内容はご存知でしたか」
『地下にあるものは一通り“見て”はいるからね
読んだことはないけど』
「なるほど…
この本だけではなく他の本もなのですが、おそらく暗号で書かれています」
『暗号…?』
ただ住んでいた家にあったから持ってきた本で、一通り目を通してはいるが内容をきちんと読んではいなかった。
『これが…?』
だが、渡された本の内容を改めて読んでみてもどこが暗号になっているのかわからない。
「例えばこの薬草の説明ですが、ここの記述で文章がおかしなところがあります」
『う、うん
そうだね』
「他の本を読んでみましたが、このように書いているのはこの箇所だけ
癖、というわけではなさそうです」
『へぇ…これが暗号…』
日本語がおかしいだけで字は間違っておらず、ただの書き間違いかと思う程度だが、長次以外の2人も同じ意見らしく、これは何かの暗号であると結論づけていた。
「恋歌さんのおばあさまは元くノ一です
故意にこのようなことをされたのではないでしょうか」
『そういうの好きな方ではあったけどね
それでこれはどうやって文章になるの?』
ここの地下にある本は全て亡くなった恩人が自筆したもの。
だからこそ思い出として持ってきて、しかも一度目を通したのだ。
それが暗号になっているとは思いもしなかった。
「解読方法はまだわかりません
他の本でもおかしい箇所を見つけてからの解読ですね
これは恋歌さんのおばあさまが独自に作成された暗号のようですし…」
「地下にあったあの本全てを見なければいけないということか…」
「でも楽しそうじゃないか!」
地下にある本は数えたことこそないが100冊はゆうに超えている。
その中から記述のおかしい箇所を見つけ、そこから解読方法を見つけるとなると骨が折れそうだと思ったが、見たことのない暗号の解読に少しわくわくしているのも事実。
『それなら全部の本におかしいところあるよ
その本にもあと5か所あるし、そっちの本には7か所、もうひとつには10か所もあるね』
「え?」
『この本なら…ここと、ここと…ここと…連続してこの2行だね』
ぺらぺらと手に持っていた本を捲り、日本語の記述がおかしいところを示せば、3人がぽかんと口を開けた。
「恋歌さん…読まれたことはないと…」
『読んだことはないけど“見た”から全部覚えてるよ
“読む”というのはその内容を理解することだと思ってるから、わたしのは“見た”だけ』
「でもどうやって間違っている記述を見つけたのですか…?」
『暇だった時に日本語がおかしくなってるところを見つける遊びを頭の中でしてたんだよね
だから全部の本でどこが間違えてるのかわかるよ』
「な、なるほど…」
一度見た内容を忘れない、というのは神の目の力ではなく恋歌の純粋な能力。
あまり今まで意識したことはなかったが、改めて聞くとすごいことなんだと実感した。
「でもなんとなく…これはわたしたちが解読したいのですが…いいでしょうか…?」
『もちろん
わたしじゃ暗号かどうかも気づかなかったし、解読方法もきっとわからないだろうから』
恋歌に間違いのある箇所を教えて貰えば解読のスピードは格段に上がるだろうが、なんとなく自分たちで解読をしてみたいと申し出れば快く承諾してくれた。
『全部学園に持っていってくれていいよ』
「しかしこれは恋歌さんの大事な物では…」
『うん、おばあさまの書かれた物だからね
でもみんななら大事に扱ってくれるでしょ?』
恋歌の言葉にもちろん、と頷いた3人はあとで地下から本を持ってこようと張り切っていた。
『そろそろお昼ご飯の準備もしないといけないね』
「そうですね
おむすびでも握りましょうか?」
米はかまどに火を入れた時に一緒に炊いていたので米はある。
『実は…これも買っちゃったんだ
一緒に食べない?』
「こ、これは…!!」
「見るからにいい肉…!!」
届いた荷物の中でまだ開けられていなかった包みを開けると、中には見ただけで高級品だとわかる肉の薄切りが入っており、またしてもごくりと喉が無意識に鳴った。
「というか買っちゃった…とは…」
『おすすめされたから潮江くんと食べようと思ってたんだけど、多めに買っておいてよかった』
「いえ…そういうわけではなく…」
「わたしたちが食べても良いのですか?」
『?
手伝ってくれてるんだからお礼だよ』
「恋歌さん…お礼と言えば何でも許されると思ってませんか?」
『そんなことないよ』
「固いことを言うな!文次郎!
せっかく用意してくださったのだ」
「小平太の言う通りだ」
高級品を血縁でもない子どもに食べさせるのはいかがなものかとは思ったが、普段はみんなと同じ物を食べ、こういった特別な時にあくまでもお礼として振る舞ってくれるのであれば甘んじて受けるのも仕方なしと結論づけた。
『よーし、じゃあちょっと待っててね』
『お待たせー』
準備は1人でできるからと奥の板間で待っていた3人は、地下から持ってきた本を読んで待っていたが、どんと目の前に置かれた食事に目を丸くした。
ほかほかの白米にいくつかの皿に分けられた味付けの違う肉料理、漬物に味噌汁と立派すぎる昼食。
『楽しくてついたくさん作っちゃった
無理しなくてもいいから好きなだけ食べてね』
作りすぎた、という自覚はあるのか食べられる分だけでいいとは言っているが、店をしているぐらいなので人に自分の作った物を食べてもらうことが好きなのだろうということは理解している。
その好意を無碍にする理由もなければ無理をしなければいけない量でもない。
「いえ!せっかく作っていただいたのです
いただきます」
「「いただきます」」
手を合わせてから準備された目の前の昼食を口に入れると、一瞬固まってから顔を輝かせて3人で目を合わせた。
『どう?美味しい?』
「はい!
おかわりはしても大丈夫ですか?」
「お、おれも…」
『もちろん』
白米はたくさんあるからとおかわりをしに行く3人の後ろ姿を見て嬉しくなった恋歌も、いただきますと手を合わせて昼食へと手を伸ばした。
「「「ごちそうさまでした」」」
『お粗末さまでした
全部食べてくれてありがとう』
昼食にと用意した食材を全て食べてくれた3人に恋歌からも感謝をし、休憩にと食後のお茶を淹れた。
「ところで恋歌さん、少し聞きたいことが…」
『ん?』
「この本なのですが…」
すっ、と目の前に長次が差し出したのは先ほど地下から持ってきた本。
表紙には薬草図鑑、と書かれている。
『図鑑、って書いてる割には絵がほとんどない薬草について書かれている本だね』
「内容はご存知でしたか」
『地下にあるものは一通り“見て”はいるからね
読んだことはないけど』
「なるほど…
この本だけではなく他の本もなのですが、おそらく暗号で書かれています」
『暗号…?』
ただ住んでいた家にあったから持ってきた本で、一通り目を通してはいるが内容をきちんと読んではいなかった。
『これが…?』
だが、渡された本の内容を改めて読んでみてもどこが暗号になっているのかわからない。
「例えばこの薬草の説明ですが、ここの記述で文章がおかしなところがあります」
『う、うん
そうだね』
「他の本を読んでみましたが、このように書いているのはこの箇所だけ
癖、というわけではなさそうです」
『へぇ…これが暗号…』
日本語がおかしいだけで字は間違っておらず、ただの書き間違いかと思う程度だが、長次以外の2人も同じ意見らしく、これは何かの暗号であると結論づけていた。
「恋歌さんのおばあさまは元くノ一です
故意にこのようなことをされたのではないでしょうか」
『そういうの好きな方ではあったけどね
それでこれはどうやって文章になるの?』
ここの地下にある本は全て亡くなった恩人が自筆したもの。
だからこそ思い出として持ってきて、しかも一度目を通したのだ。
それが暗号になっているとは思いもしなかった。
「解読方法はまだわかりません
他の本でもおかしい箇所を見つけてからの解読ですね
これは恋歌さんのおばあさまが独自に作成された暗号のようですし…」
「地下にあったあの本全てを見なければいけないということか…」
「でも楽しそうじゃないか!」
地下にある本は数えたことこそないが100冊はゆうに超えている。
その中から記述のおかしい箇所を見つけ、そこから解読方法を見つけるとなると骨が折れそうだと思ったが、見たことのない暗号の解読に少しわくわくしているのも事実。
『それなら全部の本におかしいところあるよ
その本にもあと5か所あるし、そっちの本には7か所、もうひとつには10か所もあるね』
「え?」
『この本なら…ここと、ここと…ここと…連続してこの2行だね』
ぺらぺらと手に持っていた本を捲り、日本語の記述がおかしいところを示せば、3人がぽかんと口を開けた。
「恋歌さん…読まれたことはないと…」
『読んだことはないけど“見た”から全部覚えてるよ
“読む”というのはその内容を理解することだと思ってるから、わたしのは“見た”だけ』
「でもどうやって間違っている記述を見つけたのですか…?」
『暇だった時に日本語がおかしくなってるところを見つける遊びを頭の中でしてたんだよね
だから全部の本でどこが間違えてるのかわかるよ』
「な、なるほど…」
一度見た内容を忘れない、というのは神の目の力ではなく恋歌の純粋な能力。
あまり今まで意識したことはなかったが、改めて聞くとすごいことなんだと実感した。
「でもなんとなく…これはわたしたちが解読したいのですが…いいでしょうか…?」
『もちろん
わたしじゃ暗号かどうかも気づかなかったし、解読方法もきっとわからないだろうから』
恋歌に間違いのある箇所を教えて貰えば解読のスピードは格段に上がるだろうが、なんとなく自分たちで解読をしてみたいと申し出れば快く承諾してくれた。
『全部学園に持っていってくれていいよ』
「しかしこれは恋歌さんの大事な物では…」
『うん、おばあさまの書かれた物だからね
でもみんななら大事に扱ってくれるでしょ?』
恋歌の言葉にもちろん、と頷いた3人はあとで地下から本を持ってこようと張り切っていた。