アルバイトと忍術学園の段
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(…ここ、忍術学園かな)
意識が戻り目を開けようとしたが馴染んだ感触に目に包帯が巻かれていると気づき目を開くことはやめた。
少しの薬草の匂い、身体は布団に横たえられており、自分の息遣いしか聞こえないほどの静けさ。
むくり、と身体を起こし目の包帯を取り、閉じられた襖越しに外を見ればわずかに月明かりが入ってきていることで、時間帯は夜だということがわかった。
(あれからどれぐらい時間が経ったんだろ…)
身体の軋み具合からして帰ってきたばかり、というわけではなさそうだと布団から出て襖を開ける。
『月…久しぶりに見たな…』
「ほっほっほっ
今日は満月じゃ
良いタイミングで目が覚めたの」
ぽつりと呟いた言葉に返答があるとは思っていなかったが、少し視線を下げれば学園長が笑顔で立っていた。
『満月を見たのは…初めてです…』
「これからは満月の度に見られるじゃろ
お月見をしながら食べる団子は格別じゃよ」
『それは…楽しそうですね…』
「病み上がりなんじゃから座って眺めなさい」
先に廊下に座った学園長に促され、恋歌もその横へ腰を下ろす。
『おばあさまと、お知り合いだったのですね』
「……優秀なくノ一じゃったよ
ある忍務が原因で視力を失ってからは山奥で1人で暮らしておったがな」
『……おばあさまは、わたしが神埜家の人間で…この力を持っていることをご存知だったのですよね?』
「そうじゃな
でもお前さんと一緒にいると決めたのは彼女じゃ」
『なぜ学園長先生はわたしを…受け入れてくださったのですか?』
「…彼女が神埜家の神の目を持つ娘を匿っている、というのを知ったのはもう10年以上前のことじゃ
あまりにも神埜家がしつこいのでわしに助けを求めてきてな
そこからはずっと、ずっとお前さんのことを知っておる
遺言でここに来い、と伝えたにも関わらず頑固で1人で茶店を始めたと聞いた時は肝を冷やしたもんじゃ
優しすぎるお主には生きにくい世の中であろう
その特異な目を持って生まれてしまったことで普通の生活は送れん
だが、そんな老体の不安をよそに…随分と立派になった」
『そ、んなこと…』
「最初にきり丸がお主と会ったのは本当に偶然じゃった
しかしな、そこから忍術学園との縁ができ、忍術学園で忍びとはなんなのかを叩き込まれた潮江文次郎、七松小平太、中在家長次の心を、掴んだのはお主の優しさじゃ」
『それは…!あの子達がみんな…みんな…優しくて…良い子で…』
「たしかに忍術学園の子はみな良い子じゃが…6年生ともなれば優しさだけではここまで動かん
忍術学園を動かして、助けたいと、何か力になりたいと思ったのは…恋歌くん、お主が神の目を持つからでも、神埜家の人間だからでもない
“恋歌”という1人の人間の優しさがそうさせたのじゃ」
ぎゅう、っと着せられていた寝巻きを握り、その手の上に涙がぽろぽろと落ちていく。
「ここでなら好きに過ごせば良い
目を隠す必要も、やりたいことを我慢することもない
茶店をやりたいのならここから通えば良い」
『はい…はいっ…』
「今やりたいことはあるかの?」
背中を丸めて泣いている恋歌の背を優しく撫でてやり、ぐすぐすと鼻を啜る音が静かな夜に響いた。
『みんなと…顔を見て…お話ししたい、です…』
「ほっほっほっ、欲のない事じゃ」
「学園長先生も人が悪いですよ」
「そうかのぉ?」
まだ起きるには早い時間だからと学園長に促され恋歌はもう一度布団に入ると、すぐに寝息を立てて眠りについてしまった。
それを見てからそっと襖を閉めると、山田と土井が立っていた。
「恋歌さんのこと、わかっていたなら教えてくださってもいいじゃありませんか」
「……約束でな
あの子は人の助けを借りねば生きていけん
だからこそ、周りが手を差し伸べたいと思えるような人間にならねばならんと
現に先生方も生徒たちももてる力を使って最善を尽くした」
「それはそうですが…」
「生きる、という普通のことがあの子にとっては1番難しい
これが育ての親なりの愛情でもある
多めに見てやってくれんか?」
「はぁ…そんなこと言われてしまうと何にも言えませんよ」
恋歌が大切に思っている人の心遣いだと言われてしまえば何かを言い返すことなどできるはずもない。
「良い訓練にもなったじゃろ
神埜家は秘匿された家のため武力は全くと言っていいほど保有しておらん
フリーの忍者ばかりを雇っておったのもそのせいじゃ」
庵に戻ろうとする学園長の後ろをついていき、続く話を黙って聞く。
「今回恋歌くんをここに呼び寄せたのも一種の賭けでもあった」
「賭け…?ですか?」
「うむ
ここに滞在する予定だった1週間
その1週間のうちに神埜家のことを暴き、恋歌くんの目の秘密を暴くこと
それが達成されなければ1人で生きると決めた恋歌くんをそのまま店に帰すつもりじゃった
賭けは見事にわしの勝ちじゃ!」
笑顔でピースをしている学園長はどこまでが本気でどこからが冗談なのかわからない。
「タソガレドキの雑渡殿にも今度礼をせねばな」
「そういえば…途中から雑渡さんと尊奈門くんがいなくなったのですが…
それも学園長先生が?」
「いや…恋歌くんに危害が加わらなければ好きにして良い、とは伝えてあったからのぉ…」
「忍術学園に害のあることはされないとは思いますが…」
「そうじゃな」
意識が戻り目を開けようとしたが馴染んだ感触に目に包帯が巻かれていると気づき目を開くことはやめた。
少しの薬草の匂い、身体は布団に横たえられており、自分の息遣いしか聞こえないほどの静けさ。
むくり、と身体を起こし目の包帯を取り、閉じられた襖越しに外を見ればわずかに月明かりが入ってきていることで、時間帯は夜だということがわかった。
(あれからどれぐらい時間が経ったんだろ…)
身体の軋み具合からして帰ってきたばかり、というわけではなさそうだと布団から出て襖を開ける。
『月…久しぶりに見たな…』
「ほっほっほっ
今日は満月じゃ
良いタイミングで目が覚めたの」
ぽつりと呟いた言葉に返答があるとは思っていなかったが、少し視線を下げれば学園長が笑顔で立っていた。
『満月を見たのは…初めてです…』
「これからは満月の度に見られるじゃろ
お月見をしながら食べる団子は格別じゃよ」
『それは…楽しそうですね…』
「病み上がりなんじゃから座って眺めなさい」
先に廊下に座った学園長に促され、恋歌もその横へ腰を下ろす。
『おばあさまと、お知り合いだったのですね』
「……優秀なくノ一じゃったよ
ある忍務が原因で視力を失ってからは山奥で1人で暮らしておったがな」
『……おばあさまは、わたしが神埜家の人間で…この力を持っていることをご存知だったのですよね?』
「そうじゃな
でもお前さんと一緒にいると決めたのは彼女じゃ」
『なぜ学園長先生はわたしを…受け入れてくださったのですか?』
「…彼女が神埜家の神の目を持つ娘を匿っている、というのを知ったのはもう10年以上前のことじゃ
あまりにも神埜家がしつこいのでわしに助けを求めてきてな
そこからはずっと、ずっとお前さんのことを知っておる
遺言でここに来い、と伝えたにも関わらず頑固で1人で茶店を始めたと聞いた時は肝を冷やしたもんじゃ
優しすぎるお主には生きにくい世の中であろう
その特異な目を持って生まれてしまったことで普通の生活は送れん
だが、そんな老体の不安をよそに…随分と立派になった」
『そ、んなこと…』
「最初にきり丸がお主と会ったのは本当に偶然じゃった
しかしな、そこから忍術学園との縁ができ、忍術学園で忍びとはなんなのかを叩き込まれた潮江文次郎、七松小平太、中在家長次の心を、掴んだのはお主の優しさじゃ」
『それは…!あの子達がみんな…みんな…優しくて…良い子で…』
「たしかに忍術学園の子はみな良い子じゃが…6年生ともなれば優しさだけではここまで動かん
忍術学園を動かして、助けたいと、何か力になりたいと思ったのは…恋歌くん、お主が神の目を持つからでも、神埜家の人間だからでもない
“恋歌”という1人の人間の優しさがそうさせたのじゃ」
ぎゅう、っと着せられていた寝巻きを握り、その手の上に涙がぽろぽろと落ちていく。
「ここでなら好きに過ごせば良い
目を隠す必要も、やりたいことを我慢することもない
茶店をやりたいのならここから通えば良い」
『はい…はいっ…』
「今やりたいことはあるかの?」
背中を丸めて泣いている恋歌の背を優しく撫でてやり、ぐすぐすと鼻を啜る音が静かな夜に響いた。
『みんなと…顔を見て…お話ししたい、です…』
「ほっほっほっ、欲のない事じゃ」
「学園長先生も人が悪いですよ」
「そうかのぉ?」
まだ起きるには早い時間だからと学園長に促され恋歌はもう一度布団に入ると、すぐに寝息を立てて眠りについてしまった。
それを見てからそっと襖を閉めると、山田と土井が立っていた。
「恋歌さんのこと、わかっていたなら教えてくださってもいいじゃありませんか」
「……約束でな
あの子は人の助けを借りねば生きていけん
だからこそ、周りが手を差し伸べたいと思えるような人間にならねばならんと
現に先生方も生徒たちももてる力を使って最善を尽くした」
「それはそうですが…」
「生きる、という普通のことがあの子にとっては1番難しい
これが育ての親なりの愛情でもある
多めに見てやってくれんか?」
「はぁ…そんなこと言われてしまうと何にも言えませんよ」
恋歌が大切に思っている人の心遣いだと言われてしまえば何かを言い返すことなどできるはずもない。
「良い訓練にもなったじゃろ
神埜家は秘匿された家のため武力は全くと言っていいほど保有しておらん
フリーの忍者ばかりを雇っておったのもそのせいじゃ」
庵に戻ろうとする学園長の後ろをついていき、続く話を黙って聞く。
「今回恋歌くんをここに呼び寄せたのも一種の賭けでもあった」
「賭け…?ですか?」
「うむ
ここに滞在する予定だった1週間
その1週間のうちに神埜家のことを暴き、恋歌くんの目の秘密を暴くこと
それが達成されなければ1人で生きると決めた恋歌くんをそのまま店に帰すつもりじゃった
賭けは見事にわしの勝ちじゃ!」
笑顔でピースをしている学園長はどこまでが本気でどこからが冗談なのかわからない。
「タソガレドキの雑渡殿にも今度礼をせねばな」
「そういえば…途中から雑渡さんと尊奈門くんがいなくなったのですが…
それも学園長先生が?」
「いや…恋歌くんに危害が加わらなければ好きにして良い、とは伝えてあったからのぉ…」
「忍術学園に害のあることはされないとは思いますが…」
「そうじゃな」