アルバイトと忍術学園の段
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刀が消えた、と認識した直後、次は耳にくぐもった声が聞こえ、そちらに視線を向けると当主が腹を抑えてうずくまっていた。
「お、お前たち…!!いつの間に!!」
「おい、足癖が悪いぞ」
「それはすまん」
「恋歌さん、こちらへ」
『は、はい』
どうやら恋歌の手元にあった刀は小平太が蹴り飛ばして当主の腹に命中させたらしく、足癖が悪いと文次郎に咎められている。
恋歌は伊作に手を引かれいつの間にか天井裏から降りてきている6年生5人の背中が見える位置に移動させられた。
「忍術学園の者たちか…!」
「その女はわたしの娘だ
返せ!!」
「はっ、馬鹿馬鹿しい
親の役目も果たせん奴は親を名乗る資格などない」
「大体恋歌さんは“もの”ではない
返せという言葉はおかしい
恋歌さんは自分の行きたいところに、自分で行く権利がある」
「屋敷の警備の者は何をしている!!
こんなガキどもに易々と忍び込まれるとは!!
全員であえ!!こやつらを殺して忍術学園へ送りつけてやれ!!」
まだ腹が痛むのか腹部を押さえたまま叫ぶがそれに対しての返答は何もない。
「もう誰もいませんよ」
少しバカにしたような声音に、恐る恐る振り向くと先ほどまで後ろに控えていた武士たちは全員床に横たわっていた。
「ち、父上…」
意識があるのは天陽とその母親のみ。
しかしその2人も喉にくないを突きつけられており、両手をあげて降参の意をしめしている。
音もなくそれをやってのけたのは5年生。
「今この屋敷でわたしたち以外に意識のある者はお前たち3人のみ
この意味がわからんわけでもないだろう?」
「ふ、ざけるな…!!
これは我が神埜家の問題だ!
部外者が立ち入る事など許さん!!」
「だからその家との縁を切りにきたんだっての」
「わからんやつだな」
「くっ…!!」
「あ…」
完全に包囲されもう逃げ場も味方もいないと悟った直後、またしてもにやりと気味の悪い笑みを浮かべくるりと踵を返して隣の襖を開けて走り出した。
『!!
みんなここから離れて!』
「え?」
『早く!』
「わっ!」
近くにいた伊作の手を引いて当主とは逆方向、部屋の外へと向かって走り出した恋歌に続いて首を傾げながら全員後をついてくる。
「火薬の臭いだ!」
「まさかあいつ…!」
『この屋敷ごと吹き飛ばすつもりです!
遠くへ…!』
「恋歌さん!」
ひとまず遠くへと屋敷から離れようと先頭を走っていた恋歌が、急に目を押さえて蹲ってしまう。
『いっ…た、』
「恋歌さん…血が…」
「どうなってる!」
蹲って目を押さえている恋歌の手の間からどろりと血が流れ始め、何が起こっているのかわからないが痛みを堪えているような声が漏れている。
「恋歌さん、しばらく我慢できますか?」
屋敷ごと吹き飛ばす、という事であればまだ屋敷の敷地内にいる間は危険とみなし、土井が蹲る恋歌の背に手を当てて問えば小さい頷きが返ってきた。
「お前たちは全力で屋敷の外へ走れ!
抱えます」
「「「はい!」」」
まずは生徒たちを外に向かって走らせ、恋歌を土井が抱えて屋敷の外への最短ルートを駆け抜ける。
「そういえば雑渡さんと尊奈門くんはどこに…」
「今はあの2人の心配より子どもらの安全を優先だ
恋歌さんも早く止血せんと…」
「ええ…そうですね」
いつの間にか途中からいなくなったタソガレドキの2人のことは気になったが、雑渡がついているのであれば尊奈門も大丈夫だろうと脱出を優先する。
だが抱えた恋歌の指の間からは絶え間なく血が流れており、早く止血をしなければ命すら危ういのではと思うほどの量。
「始まったぞ…!」
走り出した直後に爆発が始まり、それに連鎖するように次々と爆発が始まる。
だが、神埜家は敷地自体は広くないためすでに敷地の外には出ることはできていた。
どこまで被害がくるのかわからずある一定の距離まで全員で走り切り、安全な木のそばに恋歌を下ろした。
「恋歌さん、傷を見せてください」
『へい、きだから…』
「だめです
小平太!恋歌さんの手をどけさせて」
「まかせろ!」
ぽたぽたと流れ落ちる血が恋歌の小袖を赤く染め、この出血量では危ないと誰もがわかるが恋歌が頑なに手をどけないため伊作の指示で小平太が恋歌の手を掴んだ。
「冷たい…」
「出血のせいで体温が落ちてるんだ」
恋歌の出血は目からで涙を流すように目から血が流れ続けている。
そのせいで恋歌の体温が下がっており、手首を掴んだ小平太がその体温の低さに驚いた。
「ちょーじ!わたしの上衣を脱がせて恋歌さんに着せてくれ」
「もそ、それならわたしのも」
「おれのもいいぞ」
「わたしのも使ってくれ」
『ちょ、ちょっと待って…』
伊作が包帯を準備している間に6年生の上衣でぐるぐる巻きにされ、小平太が恋歌の手を抑えてなくともよくなった。
「6年生、容赦ないな…」
「怪我に関しては伊作先輩が1番怖いからな…」
遠巻きに恋歌がぐるぐる巻きにされている様子を見ながら、あたりを警戒して我関せずを貫こうとそれ以上恋歌の方に視線を向けるのはやめた。
「外傷はないですね
はい、目を開けてください」
『い、いたたた…!』
「はい、もういいですよ」
(((いや、こわ…)))
痛みもあり頑なに目を閉じたままの恋歌の目を指でこじ開け、目自体にも傷はないと判断した伊作は溢れ出る血を抑えるために手拭いを恋歌の目に当て、天陽に殴られたときについた傷と額に薬をつけた。
「原因はわかりますか?」
『予想はついてる…
この屋敷を爆破させる絡繰を作動させるには…この目を授けてくれた神様を祀ってる御神体を破壊する必要があるんだけど…
それを壊したからかな…って…』
「御神体と繋がっていたと…?
そんなことが…」
「常識的には考えられんが…
恋歌さんの目の存在自体、不可思議なものだ
これは信じるしかあるまい」
「でも目の色は変わってませんでしたね
その目の力もなくなるんでしょうか?」
『たぶんだけど…力は無くならない気がする
授けたものを取り返すようなことはしないだろうし…それに神様からしたらわたしたち人の一生なんてすぐ終わってしまうものだから…』
「そうですか…」
これで神埜家は本当に終わってしまったのだとしばらくの沈黙が流れる。
「勝手に終わらせるな!!」
「あ、忘れてた」
「咄嗟に連れてきちゃったんだよね」
実は5年生たちは天陽とその母親を非難するときに担いできていた。
いきなり恋歌が走り出した理由もわからず、置いていくのもまずいかと連れてきたはいいがその存在を忘れてしまっていた。
「でももう無理でしょ
ほら、家もあんなになっちゃったし」
勘右衛門に指をさされた方を見れば炎に包まれた神埜家の屋敷。
「この様子だとあの当主も無事ではすまんだろうな」
「だね…」
三郎と雷蔵がぽつりと呟いた言葉にがっくりと肩を落とした天陽は母親の方にちらりと視線を向けるが、恐怖で震えてまともに口が聞けそうにはない。
「わたしたちを…殺すのか…?」
「それを決めるのはわたしたちではないよ
君たちが許しを乞うべきなのは我々ではない」
土井にそう言われ、ゆっくりと恋歌に視線を向ける。
『…わたしにも決める権利はないよ
好きに生きればいいんじゃない…?
なんか…疲れちゃった…』
「そうですね
帰りましょう、学園に」
『…うん』
血を流しすぎて睡魔が襲ってきているのか、伊作のその言葉に返答した後、恋歌は意識を手放した。
「お、お前たち…!!いつの間に!!」
「おい、足癖が悪いぞ」
「それはすまん」
「恋歌さん、こちらへ」
『は、はい』
どうやら恋歌の手元にあった刀は小平太が蹴り飛ばして当主の腹に命中させたらしく、足癖が悪いと文次郎に咎められている。
恋歌は伊作に手を引かれいつの間にか天井裏から降りてきている6年生5人の背中が見える位置に移動させられた。
「忍術学園の者たちか…!」
「その女はわたしの娘だ
返せ!!」
「はっ、馬鹿馬鹿しい
親の役目も果たせん奴は親を名乗る資格などない」
「大体恋歌さんは“もの”ではない
返せという言葉はおかしい
恋歌さんは自分の行きたいところに、自分で行く権利がある」
「屋敷の警備の者は何をしている!!
こんなガキどもに易々と忍び込まれるとは!!
全員であえ!!こやつらを殺して忍術学園へ送りつけてやれ!!」
まだ腹が痛むのか腹部を押さえたまま叫ぶがそれに対しての返答は何もない。
「もう誰もいませんよ」
少しバカにしたような声音に、恐る恐る振り向くと先ほどまで後ろに控えていた武士たちは全員床に横たわっていた。
「ち、父上…」
意識があるのは天陽とその母親のみ。
しかしその2人も喉にくないを突きつけられており、両手をあげて降参の意をしめしている。
音もなくそれをやってのけたのは5年生。
「今この屋敷でわたしたち以外に意識のある者はお前たち3人のみ
この意味がわからんわけでもないだろう?」
「ふ、ざけるな…!!
これは我が神埜家の問題だ!
部外者が立ち入る事など許さん!!」
「だからその家との縁を切りにきたんだっての」
「わからんやつだな」
「くっ…!!」
「あ…」
完全に包囲されもう逃げ場も味方もいないと悟った直後、またしてもにやりと気味の悪い笑みを浮かべくるりと踵を返して隣の襖を開けて走り出した。
『!!
みんなここから離れて!』
「え?」
『早く!』
「わっ!」
近くにいた伊作の手を引いて当主とは逆方向、部屋の外へと向かって走り出した恋歌に続いて首を傾げながら全員後をついてくる。
「火薬の臭いだ!」
「まさかあいつ…!」
『この屋敷ごと吹き飛ばすつもりです!
遠くへ…!』
「恋歌さん!」
ひとまず遠くへと屋敷から離れようと先頭を走っていた恋歌が、急に目を押さえて蹲ってしまう。
『いっ…た、』
「恋歌さん…血が…」
「どうなってる!」
蹲って目を押さえている恋歌の手の間からどろりと血が流れ始め、何が起こっているのかわからないが痛みを堪えているような声が漏れている。
「恋歌さん、しばらく我慢できますか?」
屋敷ごと吹き飛ばす、という事であればまだ屋敷の敷地内にいる間は危険とみなし、土井が蹲る恋歌の背に手を当てて問えば小さい頷きが返ってきた。
「お前たちは全力で屋敷の外へ走れ!
抱えます」
「「「はい!」」」
まずは生徒たちを外に向かって走らせ、恋歌を土井が抱えて屋敷の外への最短ルートを駆け抜ける。
「そういえば雑渡さんと尊奈門くんはどこに…」
「今はあの2人の心配より子どもらの安全を優先だ
恋歌さんも早く止血せんと…」
「ええ…そうですね」
いつの間にか途中からいなくなったタソガレドキの2人のことは気になったが、雑渡がついているのであれば尊奈門も大丈夫だろうと脱出を優先する。
だが抱えた恋歌の指の間からは絶え間なく血が流れており、早く止血をしなければ命すら危ういのではと思うほどの量。
「始まったぞ…!」
走り出した直後に爆発が始まり、それに連鎖するように次々と爆発が始まる。
だが、神埜家は敷地自体は広くないためすでに敷地の外には出ることはできていた。
どこまで被害がくるのかわからずある一定の距離まで全員で走り切り、安全な木のそばに恋歌を下ろした。
「恋歌さん、傷を見せてください」
『へい、きだから…』
「だめです
小平太!恋歌さんの手をどけさせて」
「まかせろ!」
ぽたぽたと流れ落ちる血が恋歌の小袖を赤く染め、この出血量では危ないと誰もがわかるが恋歌が頑なに手をどけないため伊作の指示で小平太が恋歌の手を掴んだ。
「冷たい…」
「出血のせいで体温が落ちてるんだ」
恋歌の出血は目からで涙を流すように目から血が流れ続けている。
そのせいで恋歌の体温が下がっており、手首を掴んだ小平太がその体温の低さに驚いた。
「ちょーじ!わたしの上衣を脱がせて恋歌さんに着せてくれ」
「もそ、それならわたしのも」
「おれのもいいぞ」
「わたしのも使ってくれ」
『ちょ、ちょっと待って…』
伊作が包帯を準備している間に6年生の上衣でぐるぐる巻きにされ、小平太が恋歌の手を抑えてなくともよくなった。
「6年生、容赦ないな…」
「怪我に関しては伊作先輩が1番怖いからな…」
遠巻きに恋歌がぐるぐる巻きにされている様子を見ながら、あたりを警戒して我関せずを貫こうとそれ以上恋歌の方に視線を向けるのはやめた。
「外傷はないですね
はい、目を開けてください」
『い、いたたた…!』
「はい、もういいですよ」
(((いや、こわ…)))
痛みもあり頑なに目を閉じたままの恋歌の目を指でこじ開け、目自体にも傷はないと判断した伊作は溢れ出る血を抑えるために手拭いを恋歌の目に当て、天陽に殴られたときについた傷と額に薬をつけた。
「原因はわかりますか?」
『予想はついてる…
この屋敷を爆破させる絡繰を作動させるには…この目を授けてくれた神様を祀ってる御神体を破壊する必要があるんだけど…
それを壊したからかな…って…』
「御神体と繋がっていたと…?
そんなことが…」
「常識的には考えられんが…
恋歌さんの目の存在自体、不可思議なものだ
これは信じるしかあるまい」
「でも目の色は変わってませんでしたね
その目の力もなくなるんでしょうか?」
『たぶんだけど…力は無くならない気がする
授けたものを取り返すようなことはしないだろうし…それに神様からしたらわたしたち人の一生なんてすぐ終わってしまうものだから…』
「そうですか…」
これで神埜家は本当に終わってしまったのだとしばらくの沈黙が流れる。
「勝手に終わらせるな!!」
「あ、忘れてた」
「咄嗟に連れてきちゃったんだよね」
実は5年生たちは天陽とその母親を非難するときに担いできていた。
いきなり恋歌が走り出した理由もわからず、置いていくのもまずいかと連れてきたはいいがその存在を忘れてしまっていた。
「でももう無理でしょ
ほら、家もあんなになっちゃったし」
勘右衛門に指をさされた方を見れば炎に包まれた神埜家の屋敷。
「この様子だとあの当主も無事ではすまんだろうな」
「だね…」
三郎と雷蔵がぽつりと呟いた言葉にがっくりと肩を落とした天陽は母親の方にちらりと視線を向けるが、恐怖で震えてまともに口が聞けそうにはない。
「わたしたちを…殺すのか…?」
「それを決めるのはわたしたちではないよ
君たちが許しを乞うべきなのは我々ではない」
土井にそう言われ、ゆっくりと恋歌に視線を向ける。
『…わたしにも決める権利はないよ
好きに生きればいいんじゃない…?
なんか…疲れちゃった…』
「そうですね
帰りましょう、学園に」
『…うん』
血を流しすぎて睡魔が襲ってきているのか、伊作のその言葉に返答した後、恋歌は意識を手放した。