アルバイトと忍術学園の段
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(人の気配はない、か)
一度扉を閉めてぐるりと厨房を見渡し、わざと足音も立ててみるが人が来る気配もない。
一通り厨房をぐるりと見渡してから扉を開けて先頭の土井に合図を送る。
こくりと頷いた土井が後ろに指示を出し、順番に厨房へと足を踏み入れた。
「誰もいません
不気味なほど静かです」
「そうだね
恋歌さん、山田先生たちにはどこの道を教えたんですか?」
『本堂の正面へと繋がる道です
そちらへ向かいますか?』
「いえ…さっきの男の行き先に心当たりはありますか?」
『…おそらくお母上の元か…当主の元かと』
「ではわたしたちはそちらに向かいましょう
合流して撤退するのは簡単ですがそれではここまで侵入してきた意味がない」
『そう、ですね…
わかりました、ではこちらへ』
ケジメをつけると言ったからには狙うことをやめてもらわないとここまで来た意味がない。
さらにここからもついてきてもらっていいものかと一瞬悩んだが、ここで見捨てるような人たちではないとわかってしまった。
幼い頃に過ごした記憶を呼び起こしながら天陽が向かったであろう場所へと気配を殺しながら進んでいく。
「…恋歌さん、あなたはくのいちではないと聞いていましたが…」
『え?はい』
「足音が…忍者のそれですね…」
『あ…
みなさん静かに動いていただいてるのにわたしの足音や気配で見つかってしまうのはいかがなものかと思いまして…』
「いえ、そういうわけではなく…」
周りに気配がないことを確認してから恋歌の歩き方がプロの忍者といっても差し支えないほど洗練された歩き方に気配の殺し方をしていることに疑問を口に出さずにはいられなかった利吉が恋歌に直接問えば、欲しかった回答は得られなかった。
「利吉くん
恋歌さんはね、見たもの全てを模倣できるんだって」
「模倣…?これが…?」
『土井先生を模倣させてもらってますが…不快であればやめます』
「いやいや、わたしは気にしませんよ」
「わたしも不快というわけではなく、純粋な疑問でしたので…」
詳しいことは帰ってから、と土井に言われた利吉は、“模倣”という言葉ひとつでは納得できそうにはなかったが、見たことがない色の瞳や、侵入している屋敷の異様な雰囲気にこれ以上質問することはやめざるをえなかった。
『土井先生、その角で一度止まってください』
恋歌の声にぴたりと歩みを止めた土井は壁に背をつけ先の道を確認する。
「…武装した相手が数人、それ以外も何人か…
上には…」
「父上たちですね」
「うん」
先に正面から入った山田たちは天井裏に潜んでいるらしく矢羽音でお互いの現状を報告し合う。
「先ほどの男はこの先にいる当主の元へと向かったそうです
そこに男の母親らしき人物と護衛の武士が何人かいると」
『……そうですか
ここから先は1人で向かいます』
「…危険ですよ」
『はい…
ですが話をして…縁を切ってきます
簡単なことではないでしょうけれど…何をお考えなのか…聞いて、話を…』
ぎゅっと強く握りしめた拳と少し震えた声で言葉を絞り出している恋歌の背にぽん、と手が添えられた。
「恋歌さん
わたしたちがちゃんとそばにいます」
「助けて欲しいと思ったらすぐに声をかけてください」
「怪我はしないでほしいです」
『…うん
そうだね…今はみんながそばにいてくれる…
わたしは…1人じゃないもんね…ありがとう』
自分に言い聞かせるように小平太、文次郎、長次の3人の言葉を受け取り、いってくると笑顔で1人で足を進めた。
その背中を見送り、6人ともに屋根裏へと忍び込み、ここに来るまで見張りや使用人が誰もいなかったのは先にこの場所に来ていた山田たちが気絶させたり眠らせたりしていたからだと聞いた。
そして残るは恋歌が向かった先の当主がいる部屋のみ。
定員オーバー気味の屋根裏でぎゅうぎゅうになりながら恋歌が部屋に入ってくるのを待つ。
『…お久しぶりです、父上』
「…まだそのように呼ぶとはな
まぁいい、座れ」
からりと開けた襖の先の高座に座っている現神埜家当主、その左右に天陽と天陽の母が座り、その後ろには武装した武士が数人。
襖のすぐそばに腰を下ろし、居住まいを正すとしばらくの間沈黙が流れ、それに最初に耐えられなくなったのは天陽だった。
「お前…さっきの忍者どもはどうした!」
『わたし1人で行きたい、というわがままに応えてくれただけだよ』
「お前、天陽に刃向かったらしいのぅ
怪我まで負わせて…わかっておろうな?」
天陽の母が口元を扇子で隠しながら恋歌を睨みつける。
怪我、というのも恋歌が頭突きをしたもののみで少し赤くなっている程度。
見た目だけの酷さでいえば天陽が恋歌を殴った時の怪我の方が重く見えるがそれには一切触れることはない。
『奥様…わたしは…「口答えはよい
ようやっと戻って来たかと思えば…いらぬ知恵をつけたようじゃ」』
恋歌の言葉を遮り忌々しげに目を細める天陽の母の言葉に恋歌が疑問を覚えた。
『“ようやっと”というのは…どういうことでしょうか
わたしは…天陽に追い出されて…』
「またそんな嘘をつきよって
天陽からはお前が急にいなくなり、探せぞ探せぞ見つからぬと聞いておった」
『へ…?』
どういうことだと恋歌が天陽の方に視線を向けるが、自分の母親に嘘をついている事がバレたくないのか恋歌と視線を合わせることはしない。
「それについてはわしから説明しよう」
『父上…』
恋歌の疑問を解消するために、というわけではないが当主自らが口を開いて話を始めた。
「まずこやつが天陽に追い出されたのは本当だ」
「あら、そうでしたの?
まぁでもこの娘が何か天陽の気に触ることをしたのでしょう」
「お前あの婆さんに拾われたのだろう?」
『おばあさまを…ご存知、なのですか…?』
「ご存知もなにも…わしらがお前を12年間連れ戻せなかった原因はあの婆さんなんだから知っていて当然だ」
『ど、どういう…ことでしょう…』
ただ縁を切りにきただけのはずだったが、思いがけず恩人のことを知っていたと言われ恋歌はそちらに意識が引っ張られてしまった。
一度扉を閉めてぐるりと厨房を見渡し、わざと足音も立ててみるが人が来る気配もない。
一通り厨房をぐるりと見渡してから扉を開けて先頭の土井に合図を送る。
こくりと頷いた土井が後ろに指示を出し、順番に厨房へと足を踏み入れた。
「誰もいません
不気味なほど静かです」
「そうだね
恋歌さん、山田先生たちにはどこの道を教えたんですか?」
『本堂の正面へと繋がる道です
そちらへ向かいますか?』
「いえ…さっきの男の行き先に心当たりはありますか?」
『…おそらくお母上の元か…当主の元かと』
「ではわたしたちはそちらに向かいましょう
合流して撤退するのは簡単ですがそれではここまで侵入してきた意味がない」
『そう、ですね…
わかりました、ではこちらへ』
ケジメをつけると言ったからには狙うことをやめてもらわないとここまで来た意味がない。
さらにここからもついてきてもらっていいものかと一瞬悩んだが、ここで見捨てるような人たちではないとわかってしまった。
幼い頃に過ごした記憶を呼び起こしながら天陽が向かったであろう場所へと気配を殺しながら進んでいく。
「…恋歌さん、あなたはくのいちではないと聞いていましたが…」
『え?はい』
「足音が…忍者のそれですね…」
『あ…
みなさん静かに動いていただいてるのにわたしの足音や気配で見つかってしまうのはいかがなものかと思いまして…』
「いえ、そういうわけではなく…」
周りに気配がないことを確認してから恋歌の歩き方がプロの忍者といっても差し支えないほど洗練された歩き方に気配の殺し方をしていることに疑問を口に出さずにはいられなかった利吉が恋歌に直接問えば、欲しかった回答は得られなかった。
「利吉くん
恋歌さんはね、見たもの全てを模倣できるんだって」
「模倣…?これが…?」
『土井先生を模倣させてもらってますが…不快であればやめます』
「いやいや、わたしは気にしませんよ」
「わたしも不快というわけではなく、純粋な疑問でしたので…」
詳しいことは帰ってから、と土井に言われた利吉は、“模倣”という言葉ひとつでは納得できそうにはなかったが、見たことがない色の瞳や、侵入している屋敷の異様な雰囲気にこれ以上質問することはやめざるをえなかった。
『土井先生、その角で一度止まってください』
恋歌の声にぴたりと歩みを止めた土井は壁に背をつけ先の道を確認する。
「…武装した相手が数人、それ以外も何人か…
上には…」
「父上たちですね」
「うん」
先に正面から入った山田たちは天井裏に潜んでいるらしく矢羽音でお互いの現状を報告し合う。
「先ほどの男はこの先にいる当主の元へと向かったそうです
そこに男の母親らしき人物と護衛の武士が何人かいると」
『……そうですか
ここから先は1人で向かいます』
「…危険ですよ」
『はい…
ですが話をして…縁を切ってきます
簡単なことではないでしょうけれど…何をお考えなのか…聞いて、話を…』
ぎゅっと強く握りしめた拳と少し震えた声で言葉を絞り出している恋歌の背にぽん、と手が添えられた。
「恋歌さん
わたしたちがちゃんとそばにいます」
「助けて欲しいと思ったらすぐに声をかけてください」
「怪我はしないでほしいです」
『…うん
そうだね…今はみんながそばにいてくれる…
わたしは…1人じゃないもんね…ありがとう』
自分に言い聞かせるように小平太、文次郎、長次の3人の言葉を受け取り、いってくると笑顔で1人で足を進めた。
その背中を見送り、6人ともに屋根裏へと忍び込み、ここに来るまで見張りや使用人が誰もいなかったのは先にこの場所に来ていた山田たちが気絶させたり眠らせたりしていたからだと聞いた。
そして残るは恋歌が向かった先の当主がいる部屋のみ。
定員オーバー気味の屋根裏でぎゅうぎゅうになりながら恋歌が部屋に入ってくるのを待つ。
『…お久しぶりです、父上』
「…まだそのように呼ぶとはな
まぁいい、座れ」
からりと開けた襖の先の高座に座っている現神埜家当主、その左右に天陽と天陽の母が座り、その後ろには武装した武士が数人。
襖のすぐそばに腰を下ろし、居住まいを正すとしばらくの間沈黙が流れ、それに最初に耐えられなくなったのは天陽だった。
「お前…さっきの忍者どもはどうした!」
『わたし1人で行きたい、というわがままに応えてくれただけだよ』
「お前、天陽に刃向かったらしいのぅ
怪我まで負わせて…わかっておろうな?」
天陽の母が口元を扇子で隠しながら恋歌を睨みつける。
怪我、というのも恋歌が頭突きをしたもののみで少し赤くなっている程度。
見た目だけの酷さでいえば天陽が恋歌を殴った時の怪我の方が重く見えるがそれには一切触れることはない。
『奥様…わたしは…「口答えはよい
ようやっと戻って来たかと思えば…いらぬ知恵をつけたようじゃ」』
恋歌の言葉を遮り忌々しげに目を細める天陽の母の言葉に恋歌が疑問を覚えた。
『“ようやっと”というのは…どういうことでしょうか
わたしは…天陽に追い出されて…』
「またそんな嘘をつきよって
天陽からはお前が急にいなくなり、探せぞ探せぞ見つからぬと聞いておった」
『へ…?』
どういうことだと恋歌が天陽の方に視線を向けるが、自分の母親に嘘をついている事がバレたくないのか恋歌と視線を合わせることはしない。
「それについてはわしから説明しよう」
『父上…』
恋歌の疑問を解消するために、というわけではないが当主自らが口を開いて話を始めた。
「まずこやつが天陽に追い出されたのは本当だ」
「あら、そうでしたの?
まぁでもこの娘が何か天陽の気に触ることをしたのでしょう」
「お前あの婆さんに拾われたのだろう?」
『おばあさまを…ご存知、なのですか…?』
「ご存知もなにも…わしらがお前を12年間連れ戻せなかった原因はあの婆さんなんだから知っていて当然だ」
『ど、どういう…ことでしょう…』
ただ縁を切りにきただけのはずだったが、思いがけず恩人のことを知っていたと言われ恋歌はそちらに意識が引っ張られてしまった。