アルバイトと忍術学園の段
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二手に分かれた後、土井を先頭に恋歌、小平太、長次、文次郎、尊奈門の順で地下への道を歩いていく。
「恋歌さん、ここには罠なんてのはないですよね…?」
『基本的にはなかったはずですが…
何せ10年以上前の記憶なので…』
「そうですか…」
単純な罠であれば見逃すはずはないが、ここは表に名の出ない者が住んでいる場所。
どのような仕掛けがされているかはわからない。
恋歌の記憶の中にある地下道より少しだけ老朽が進んでおり、隙間から草が生えていたり、土壁が崩れかかったりしている。
「まぁでもこの家の人たちも使っているのなら今は大丈夫だろう
ちなみにここはどこに向かってるんでしょう」
『ここは“神託の間”に繋がっています』
「神託…ということは…」
『はい、以前わたしがいた場所です
この道は追い出された時に通った道なので覚えているだけなんです…』
「なるほど…」
『わたしと同じくこの目を持って生まれた歴代の人たちも、太陽の光が苦手で地下で神託をしていました
色素、というのが問題であるというのは善法寺くんの話で初めて知りましたが…』
「恋歌さんと同じ目を持っている人は他にもいるんですか?」
『今代はわたしだけです
というよりこれは一代につき1人だけに授かるものなので、わたしが生きている限り他の人がこの目をもつことはありません』
「それでお前は命を狙われてるわけか」
『本当はここを追い出した後に野垂れ死んで欲しかったんでしょうけど…
幸運が重なって…わたしは今も生きています』
「……追い出されたのはいつ頃ですか?」
『15年ほど前ですね』
もうほとんど何も隠す気は無いのか聞いたことに全て答えてくれてはいるが、あっけらかんと話すような過去でもない。
本人が全く気にしておらず罠はないかと当たりを見渡しながら話しているが、聞いている5人の心は苛立ちが募り始めている。
『わたしの幸運はここを出た後…おばあさまに出会えたことです』
「おばあさま、ですか?」
『はい、実の祖母というわけではなく本当にたまたま…行く宛がなく泣いていたわたしを見つけてくれた恩人です
その人は歳のこともあり盲目でしたが1人で暮らしていて、なんでも1人でできる人で…
わたしはおばあさまに甘味の作り方も料理も…そして、目の見えない人の動き方を学びました』
「もしかして恋歌さんが作る甘味は…」
『はい、おばあさまに教わったものです』
「それで一番好きな食べ物は自身の作る甘味だと…」
今まで恋歌に聞いた話が全てパズルが完成するかのように当てはまっていく。
「目の見えない人の動き方を学んだ、というのはその目の力ですか?」
『おばあさまは出会った時にはもうすでに目が見えておられなかったので、わたしの目がみんなと色が違うことには気づいていませんでした
だからわたしはそれを利用して…自分が生きるために、動きを…模倣しました
最低だったと…思います…
おばあさまに会って…目が見えないと気づいて…わたしはこの動きを真似れば気づかれずに生きていけると…思ってしまったんですから』
「恋歌さんが生きたいと…思って行動したことが最低だったなんて…そんなことあるわけがありません」
自嘲気味に笑う恋歌に文次郎がぎりっ、と歯を食いしばりながら言葉を絞り出した。
「たった5つの子が…!
生きるために必死になって何が悪いと言うのですか…」
「今の恋歌さんならわかるでしょう?
5つの子どもが生きたいと願って…恋歌さんに助けを求めてきたとして、そして自分の生き方を真似られたとして…最低だなと思いますか?」
『そう…ですね…
たしかに…そうです…
ふふ、ほんとだ…』
「わたしたちはそのおばあさまに感謝せねばなりませんね!
な?長次」
「恋歌さんの生きる道を作ってくれてありがとう、だな」
『今度…お墓参りに行った時に言わないといけないね…
ありがとう、って』
今まであった罪悪感が全て消えていくような感覚にこの人たちに出会えてよかったと心の底から思えた。
『みんなに出会えたのも…きっとおばあさまの縁ですね』
「あ…もしかして…おばあさまって…」
『土井先生のお察しの通り元くノ一です』
「やっぱり…」
学園長が恋歌のことを細かく知っていたことと結びつければ恋歌の恩人がくノ一であるという予想は簡単にできた。
「あれ?でも恋歌さん…忍者の知り合いはいないと…」
『おばあさまはもう鬼籍に入られましたから…
“生きている”忍者の知り合いはいません』
言い回しの問題ではあるがたしかに嘘は言っていないなと納得するしかなかった。
『ですが出会った時にはすでに盲目でしたのでおばあさまがくノ一らしいところは一度も見ていないのです
あまり昔のこともお話にはなりませんでした
わたしも聞かなかったんですが…
でもそんな中で亡くなる直前に…何か困ったことがあれば忍術学園へ行くようにと…
それがおばあさまと話した最期の言葉でした』
「おばあさまが鬼籍に入られたのはいつ頃ですか?」
『3年ほど前です』
「なぜ…3年もの間忍術学園にいらっしゃらなかったのですか?
それに今回もきり丸と出会ったのは偶然でしょう」
『……くだらない意地を張っていたんです
忍術学園に頼らずとも1人で生きていけると…』
「でも結果的に恋歌さんは忍術学園へと来た、というわけですね」
『はい、おばあさまはきっと笑っていらっしゃるはずです
ほら、わたしの言った通りになったと』
「あの学園長の知り合いの方であれば侮れませんね」
『ふふ、わたしもそう思います』
1人になってからの3年間、茶店をして生きてきたがきり丸と出会い忍術学園と関わりを持ってしまった。
そこからここまで深い関わりを持ってしまったのは必然だったのか、はたまた学園長の思惑だったのか。
『…そろそろ神託の間です』
話を区切り気配を消して少し歩みを進めれば奥から男の声が聞こえてきた。
「恋歌さん、ここには罠なんてのはないですよね…?」
『基本的にはなかったはずですが…
何せ10年以上前の記憶なので…』
「そうですか…」
単純な罠であれば見逃すはずはないが、ここは表に名の出ない者が住んでいる場所。
どのような仕掛けがされているかはわからない。
恋歌の記憶の中にある地下道より少しだけ老朽が進んでおり、隙間から草が生えていたり、土壁が崩れかかったりしている。
「まぁでもこの家の人たちも使っているのなら今は大丈夫だろう
ちなみにここはどこに向かってるんでしょう」
『ここは“神託の間”に繋がっています』
「神託…ということは…」
『はい、以前わたしがいた場所です
この道は追い出された時に通った道なので覚えているだけなんです…』
「なるほど…」
『わたしと同じくこの目を持って生まれた歴代の人たちも、太陽の光が苦手で地下で神託をしていました
色素、というのが問題であるというのは善法寺くんの話で初めて知りましたが…』
「恋歌さんと同じ目を持っている人は他にもいるんですか?」
『今代はわたしだけです
というよりこれは一代につき1人だけに授かるものなので、わたしが生きている限り他の人がこの目をもつことはありません』
「それでお前は命を狙われてるわけか」
『本当はここを追い出した後に野垂れ死んで欲しかったんでしょうけど…
幸運が重なって…わたしは今も生きています』
「……追い出されたのはいつ頃ですか?」
『15年ほど前ですね』
もうほとんど何も隠す気は無いのか聞いたことに全て答えてくれてはいるが、あっけらかんと話すような過去でもない。
本人が全く気にしておらず罠はないかと当たりを見渡しながら話しているが、聞いている5人の心は苛立ちが募り始めている。
『わたしの幸運はここを出た後…おばあさまに出会えたことです』
「おばあさま、ですか?」
『はい、実の祖母というわけではなく本当にたまたま…行く宛がなく泣いていたわたしを見つけてくれた恩人です
その人は歳のこともあり盲目でしたが1人で暮らしていて、なんでも1人でできる人で…
わたしはおばあさまに甘味の作り方も料理も…そして、目の見えない人の動き方を学びました』
「もしかして恋歌さんが作る甘味は…」
『はい、おばあさまに教わったものです』
「それで一番好きな食べ物は自身の作る甘味だと…」
今まで恋歌に聞いた話が全てパズルが完成するかのように当てはまっていく。
「目の見えない人の動き方を学んだ、というのはその目の力ですか?」
『おばあさまは出会った時にはもうすでに目が見えておられなかったので、わたしの目がみんなと色が違うことには気づいていませんでした
だからわたしはそれを利用して…自分が生きるために、動きを…模倣しました
最低だったと…思います…
おばあさまに会って…目が見えないと気づいて…わたしはこの動きを真似れば気づかれずに生きていけると…思ってしまったんですから』
「恋歌さんが生きたいと…思って行動したことが最低だったなんて…そんなことあるわけがありません」
自嘲気味に笑う恋歌に文次郎がぎりっ、と歯を食いしばりながら言葉を絞り出した。
「たった5つの子が…!
生きるために必死になって何が悪いと言うのですか…」
「今の恋歌さんならわかるでしょう?
5つの子どもが生きたいと願って…恋歌さんに助けを求めてきたとして、そして自分の生き方を真似られたとして…最低だなと思いますか?」
『そう…ですね…
たしかに…そうです…
ふふ、ほんとだ…』
「わたしたちはそのおばあさまに感謝せねばなりませんね!
な?長次」
「恋歌さんの生きる道を作ってくれてありがとう、だな」
『今度…お墓参りに行った時に言わないといけないね…
ありがとう、って』
今まであった罪悪感が全て消えていくような感覚にこの人たちに出会えてよかったと心の底から思えた。
『みんなに出会えたのも…きっとおばあさまの縁ですね』
「あ…もしかして…おばあさまって…」
『土井先生のお察しの通り元くノ一です』
「やっぱり…」
学園長が恋歌のことを細かく知っていたことと結びつければ恋歌の恩人がくノ一であるという予想は簡単にできた。
「あれ?でも恋歌さん…忍者の知り合いはいないと…」
『おばあさまはもう鬼籍に入られましたから…
“生きている”忍者の知り合いはいません』
言い回しの問題ではあるがたしかに嘘は言っていないなと納得するしかなかった。
『ですが出会った時にはすでに盲目でしたのでおばあさまがくノ一らしいところは一度も見ていないのです
あまり昔のこともお話にはなりませんでした
わたしも聞かなかったんですが…
でもそんな中で亡くなる直前に…何か困ったことがあれば忍術学園へ行くようにと…
それがおばあさまと話した最期の言葉でした』
「おばあさまが鬼籍に入られたのはいつ頃ですか?」
『3年ほど前です』
「なぜ…3年もの間忍術学園にいらっしゃらなかったのですか?
それに今回もきり丸と出会ったのは偶然でしょう」
『……くだらない意地を張っていたんです
忍術学園に頼らずとも1人で生きていけると…』
「でも結果的に恋歌さんは忍術学園へと来た、というわけですね」
『はい、おばあさまはきっと笑っていらっしゃるはずです
ほら、わたしの言った通りになったと』
「あの学園長の知り合いの方であれば侮れませんね」
『ふふ、わたしもそう思います』
1人になってからの3年間、茶店をして生きてきたがきり丸と出会い忍術学園と関わりを持ってしまった。
そこからここまで深い関わりを持ってしまったのは必然だったのか、はたまた学園長の思惑だったのか。
『…そろそろ神託の間です』
話を区切り気配を消して少し歩みを進めれば奥から男の声が聞こえてきた。